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八百万  作者: マー・TY
第六章
70/115

70.生贄の話

「うっ……ぐっ…………」


 コユは眠りから目覚める。

 日射病にでもなったのか、頭の中はクラクラしていた。


「……はっ?何……これ……?」


 コユは手足を縄で縛られた状態で、畳の上に寝かされていた。

 自力で解こうにも、ビクともしない。


「気付いたか、嬢ちゃん」


 コユの目の前に、一人の男性が現れた。

 着物姿で体つきが大きく、坊主頭で無精髭が印象的だ。

 厳つい顔で、コユを見下ろしている。

 彼はコユが公園で意識を失う前に見た男性と同一人物だ。

 自分を縛ったのは、この男で間違いない。

 そう感じたコユは、男性を睨み付けた。


「アンタ誰?」


「儂は熊田。この町の長だ」


「“S区”の?その町長さんが、あたしに何の用なの?」


「……言いにくいことだが」


 熊田は言葉を詰まらせる。

 しかし、覚悟でも決めたような目をしてコユに言い放った。


「お前には、“ダラ”の生贄になってもらう」


「はぁ!?」


 コユの目が見開く。

 公園で休んでいたところを連れ去られ、畳の上で縛られているところからの生贄宣告。

 理解が追いつかなかった。


「生贄!?どういうことよ!?」


「………この町には、“ダラ”……“かんかんだら”という怪物が封印されていた。しかし昨日、それの封印が解かれた。“ダラ”が封印されていた山は今、霧に包まれている。この町もいずれそうなるだろう」


「何言ってるの?」


「“ダラ”はかつて、人を喰らっていた怪物だ。当時は多くの者が犠牲になったものだ。しかも封印から覚めたばかりだ。かなり怒っていることだろう。一刻も早く、封印せねばならん」


「だったら、何であたしを………」


「封印には、あの社に行かねばならん。生贄を用意すれば、封印までの時間は稼げる」


「だから、何であたしなの!?何であたしが生贄なんかにならなきゃいけないのよ!?」


 コユは鬼のような形相で、熊田を怒鳴りつけた。

 熊田は顔色ひとつ変えない。

 ただ、少し申し訳なさそうに続ける。


「この町の者を犠牲にする訳にはいかなくてな。困り果てているところに、報告があった。“S区”外からの者が入ってきたとな。それがお前だった」


「町の外から来た奴なら生贄にしても良いってわけ!?ふざけんじゃないわよ!!アンタらの町のことでしょ!!?」


「済まないが、もう決まったことだ」


 熊田はそれだけ言い残すと、部屋の入り口に歩いていく。


「ちょっと待ちなさいよ!!これ解いて!!」


 コユが身を捩りながら怒鳴る。

 熊田は気に留めることなく、コユを残して部屋から出ていった。


「くっそ!何なのよ!!」


 コユは自力で逃げ出そうと試みた。

 後ろ手に縛られた両手を動かす。

 しかし、硬く縛られているようで、思うようにならない。

 しばらくすると手に痛みを感じ、コユは動きを止めた。


「はぁ………はぁ…………。………カイ、何してんのかしら……?」


 コユは体を転がし、天井を見上げた。

 現在“S区”の住人全員が敵だと言っても過言ではない。

 そんな中、信じられるのはカイだけだった。




「行かねぇと!!」


 カイはそう言って布団から起ち上がった。

 先程まで悪夢で魘されていたのが嘘のようだった。


「待って、どこ行くの?」


 倉田がカイを呼び止める。


「決まってんだろ!コユを助けに行くんだよ!!」


「助けにって……!」


「あいつは友達なんだ!!生贄なんかにさせるか!!」


「それは、“S区”全体を敵に回すことになるかもしれないんだぞ!?」


「それが何だよ!!全員ぶっ飛ばしてでも俺は行くぞ!!」


「カイ君………」


「手遅れになる前に助けねぇといけねぇんだよ!!もうあいつみてぇになるのを見るのは嫌なんだ!!俺がやらねぇとダメなんだ!!今コユには俺しかいねぇんだよ!!!」


 真っ直ぐな目で怒鳴ってくるカイに、倉田は気圧された。

 体に痺れを感じる。

 ついさっき話し合い始めたばかりだというのに、カイの言葉と声から覚悟が伝わってきた。


「…………俺が圧倒されてるだけかな」


「な、何だよ!?俺を助けてくれたのは感謝するけど、邪魔すんなら容赦しねぇぞ!!」


 カイは倉田を相手に身構える。

 倉田は苦笑した後、カイに応えるように真剣な目を返した。


「カイ君、君はコユっていう子が、どこにいるか知ってるの?」


「あっ…!!」


「付いてきてくれ。案内する」


「えっ!?」


 倉田は出掛ける準備を短く済ませた。

 そしてそそくさと玄関に向かう。


「案内って、良いのかよ!?」 


「どうしたの?助けたいんだろ?手遅れになる前に早くしないと!」


「!!……あぁ!!」


 倉田に心強さを感じたカイは笑った。

 2人は靴を履き替えると、玄関を出て走り出した。




 コユが捕まり、カイが倉田と動き出したその頃、アオは不安そうに雑木林を見ていた。

 アオは、自身がいる“S区”と、2人がいる“S区”は違う世界にあると考えた。

 それが真実である以上、アオにはできることがなかった。

 そのためアオは、助けを呼んでいた。

 

「………!」

 

 アオの近くを車が通り過ぎ、近くに留まった。

 車のドアが思いっ切り開く。


「待たせたなアオ!」


 車から降りてきたのは、大きめの荷物を持ったガレンだった。

何気にアオとガレンさんの絡みって多い気がする。

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