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八百万  作者: マー・TY
第六章
65/115

65.鈍音の話

 『S区へようこそ』と書かれた紙が貼られている掲示板をカイとコユは通り過ぎ、音の在処を探していた。


“ドッ!!!”


 再び鈍い音が鳴り響く。

 その音は先程カイとコユが聞いたものより大きかった。

 2人は音の在処に近づいたことになる。


「近いな。あっちからだ!」


「これで2回目ね。いったい何が落ちてるのかしら……」


 少し不安を覚えたコユだが、それでもカイの後を追った。

 曲がり角を一つ曲がったところで、カイは止まっていた。


「カイ、どうしたの?」


「いや、さっきの音、この変からだと思ったんだけどなぁ。何もねぇな」


 カイは辺りをキョロキョロと見回す。

 現在カイとコユがいるのは、マンションが目立つ道。

 コユはマンションの方を見た。

 マンション1階のエントランスがガラスの扉越しに見える。

 そこにはエレベーターがあり、丁度一人の男性が乗るのところを確認できた。


「マンションか。高ぇなぁ」


 カイはマンションをてっぺんまで見上げる。


「入ってみようぜ」


「やめときなさいよ。不審者に間違われたらどうするのよ?」


 最近のマンションは防犯対策がバッチリだ。

 基本的にエントランスに防犯カメラが設置されており、そもそもカードキーが無ければ入れないところもある。

 

「ちぇ~…。つまんねぇの」


「そもそも音の在処探しに来たんでしょ?多分ここじゃないのよ。もう帰りましょ。何か、関わったら面倒く───」


“ドッ!!!!”


 コユが「面倒くさそう」と言いかけた時、すぐ後ろで鈍く大きな音が鳴った。

 こうして近くで聞いてみると、重量感がはっきり解るものだ。


「おい、コユ………」


「い、いやいや。どうせ大したものじゃ…………」


 コユはそう言いながら振り返った。

 どうせ布団や米の袋のような、重いものだろう。

 そう思いたかった。


「……………」


 コユの目の前にあった、いや、いたのは、うつ伏せに倒れた男性だった。

 血塗れで、左腕と右脚がおかしな方向に曲がっている。

 頭が割れて、ドロリとしたものが飛び出していた。

 血液がアスファルトの地面の上を伝い、コユの靴の元に流れつく。

 

「きゃああああああああああ!!!」


 コユは悲鳴を上げて尻もちを付いた。


「と、と、飛び降り!?……し、死んでる!?」


「コユ、しっかりしろ!」


 カイはコユを起こした。

 コユは青ざめた顔をして震えている。


「コユ、あんまり見るな!」


「カ…カイ……」


 コユはカイに抱きつき、胸に顔を付けた。

 カイはコユの頭を撫でながら、ポケットに入れていたスマホを取り出した。


「まずは警察に電話するのが先だよな!」


 カイは番号を打ちながら、ふと男性の方を見た。


「……は?」


 出血が酷く、手足が折れ、頭が割れて中身が飛び出している。

 男性は、そんな生きているとは思えない状態だった。

 しかし今、死んだと思われていた男性は、無傷の状態で立っており、カイを睨みつけていた。


「……おっさん、死んだんじゃ……」


 落下してきて、血だらけでボロボロだった男性が、無傷の状態で立っている。

 そんなあり得ない事態に、カイは困惑していた。

 すると、それを見逃さないとでも言うように、男性が襲い掛かってきた。


「なっ!?」


 現在カイに、コユが抱きついている状態だ。

 このままではコユが危ないと判断したカイは、体を一回転させ、男性の攻撃を背中で受けることにした。


「うっ!」


 カイは背中に、何かがぶつかるような感触を覚えた。

 これから何度も殴られることを予想した。

 しかし、それ以降何もされることはなかった。


「……は?」


 カイはコユを庇いながら振り返った。

 男性はいなくなっていた。


「………コユ、もう大丈夫だぞ」


「えっ?………あっ!」


 コユはカイから飛び退いた。

 顔を赤らめている。


「コユ、どうした?」


「あたし、無意識とはいえカイに抱きついて………って、あれ!?死体が消えてる!何で!?」


 コユは男性が倒れていたところに向かった。

 アスファルトには血が染み込んでいたはずだが、今は一滴も付着していない。


「コユ、あのおっさん死んでなかったぞ」


「はぁ!?嘘でしょ!?あの状態で生きてるなんて……」


「いや、それが元通りに起き上がって、俺に襲い掛かってきて消えたんだよ」


「えっ!?……ちょ、ちょっと待って………」


 コユもまた、頭の整理がつかなくなっていた。


「えっと……さっきの落ちてきた人が完全復活して消えたってこと?」


「そうなるよな」


「ありえない……けど、カイが言うならまぁ、本当なんでしょうね」


 コユにはカイと接しているうちに、解ったことがある。

 カイは嘘が下手なのだ。

 カイは嘘を吐くとき、必ず泳いだ目を反らす。

 しかし、今のカイの目は真っすぐだ。


「とりあえず、気味悪いし帰りましょう」


「そうだな。……あっ!帰り道どっちだっけ!?」


「道ならちゃんとあたしが覚えてるわ。付いてきて」


 コユはカイを連れて歩き出した。

 曲がり角を一つ曲がり、『S区へようこそ』の掲示板を通り過ぎればいつもの道。

 そう思っていた。


「えっ……!?」


 コユは唖然とした。

 目の前には塀が聳え立っていて、道が塞がれていたのだ。

 コユから見て左側には、ちゃんと掲示板がある。


「何で!?こんな塀無かったじゃない!」


「道間違えたんじゃねぇか?」


「そんなはず……。そうだ、マップ!」


 コユはスマホのマップ機能で、現在地を確認した。


「嘘………」


「どうした?」


 コユのスマホに表示された、ここら一帯の地図と現在地を示すアイコン。

 そのアイコンの先は、真っ黒で見えなくなっていた。

さぁさぁ、はじまりましたよ。

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