64.話が合う話
「はぁ~。美味し~。生き返る~♪」
コユは二段積みになったアイスを舐めて笑った。
ここは多くの人が利用するデパート。
コユが買ったアイスクリームは、その駐車場近くに留めてある車型のショップで売られている。
人気アイスクリーム店の出張販売という訳だ。
「そっかぁ。もうアイスが美味しい季節なのね」
コユは空を見上げた。
空一面に青色が広がっており、その中で太陽がギラギラと熱を発しながら輝いている。
あまり日焼けをしたくないコユは、日陰に移動した。
「日焼けするのはいいけど、焼きすぎたら痛いのよね~。溶ける前に食べよ」
コユは上段のチョコミントアイスに齧りついた。
ちなみに下段のフレーバーはチョコレートだ。
(やっぱり美味しい!)
コユはチョコミントアイスを少しずつ味わいながら食べていった。
そして完食し、次のストロベリーアイスを食べようとした。
すると、
「お、コユ!」
「へ?」
コユはアイスから目線を上げた。
目の前にカイが立っていた。
カイはコユよりひとつ多い、3段積みのアイスを持っていた。
「奇遇だなぁ。コユもアイス食ってるのか?」
「うん。カイ、アンタも?」
「最近暑くなってきたからなぁ。食いたくなって買った!」
「ふぅん……」
コユはカイのアイスをまじまじと見た。
コーンの上に乗る、丸い3つのアイス。
フレーバーは、オレンジ、チョコチップ、そしてチョコミントだった。
「アンタもチョコミント頼んだんだ」
「あぁ。食ったことなかったからな。色も珍しいし。あ、お前も頼んだのか?」
「うん。チョコミント美味しいわよ」
コユはニッと笑ってそう言った。
アイスを食べ終えたカイとコユは、一緒に帰路を辿っていた。
「へぇ、メタルマンの最新作観たのか!」
「うん。敵との戦闘シーンとか最高だったわ~」
コユは楽しそうに話しながらも、意外に思っていた。
好きな映画。
好きなスポーツ選手。
好みの音楽。
驚くほどカイと趣味が似ていたのだ。
「あたし達って、けっこう話合うのね」
「そうだな!おもしれぇなぁ!」
「何それw……はぁ、なんかアオが羨ましいわ」
そう言いながらコユは、カイの顔をチラリと見た。
カイは顔が整っている方で、よく笑っている。
いつ頃かコユは、カイの笑顔が好きになっていた。
その笑顔には子供っぽさがあり、そこに何となく可愛さを感じるのだ。
「そうだ、アオは今どうしてるわけ?」
「多分家で勉強か読書だぞ。あいつ休日はほとんど家でのんびりしてんだよ」
「アオらしいわね」
コユの脳内に、ジュースを飲みながら読書に励むアオの姿が容易に浮かんだ。
コユにとってアオは友達であり、恩人のような存在だ。
今まで二度も危機的状況を助けてもらっており、そのうち一回は友達になる前の出来事だ。
コユは友達になったその日から、アオのことを大切にすると心に誓った。
アオのような人物には、もう一生逢えない。
そう感じたのだ。
「………そういえば」
アオについて、コユには気になることがあった。
「どうした?」
「アオって……いや、男のアンタに話していいか解んないことなんだけど……」
「えぇ~?話してみろよ。気になるじゃんか」
「………大丈夫?アンタ、アオを襲ったりしない?」
「いや俺を何だと思ってんだよ」
珍しくカイからツッコミが入る。
「まぁ、大丈夫かな。兄妹だもんね……」
コユは少し深呼吸をして話し始めた。
「体育の始めと終わりで見るんだけどさぁ、アオって、ブラの上に肌着着てるのよね」
「………そうなのか」
「いや、ブラだけの時も一回あったんだけどね。その時は、誰もいない方を見て着替えてたわ。それで、後ろから軽く肩叩いたんだけど、物凄く驚いてて………まぁ、それだけよ」
コユは再びカイの顔を見た。
カイは少し暗い顔をして、コユから目を反らしていた。
「あいつ、シャイだからな。恥ずかしいだけだろ」
「そっか。……そうよね」
そう言いつつもコユは、本当にそうなのかと疑問に思っていた。
更衣室で、後ろからアオの肩を叩いたあの日、アオは怯えた表情でコユを見ていた。
(………あんまり詮索しない方が、いいのかな)
コユは青色の空を見上げてそう考えた。
“ドッ!!”
その音に、コユは反応した。
何かが落ちるような音だった。
音的にも、重いものが落ちたように思える。
「何だ?今の音」
「……あっちから聞こえたわ」
「とりあえず、行ってみようぜ!」
「あっ、カイ!」
カイが音のした方に走り出した。
コユはそれを追う。
そしてこれが、新たな怪異事件の幕開けとなった。
お待たせしました。なかなか脚本練るのが大変で……。




