表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八百万  作者: マー・TY
第五章
60/115

60.小箱の話

 ショウはさとるくんについて話し終えた後、帰っていった。

 アオは再び1人になった。

 集中して怪談の本を読んでいく。

 そしてそれは、丁度4話分を読み終えた時だった。


「やぁアオちゃん」


「……クロ君」


 今度はクロがアオに絡んできた。


「アオちゃんってさ、怪談好きなの?さっきから熱心に読んでるよね」


「えっ?…あ、うん。そんなところ」


「そっか。いいよね。怪談」


 クロの目が妖しく光る。

 その目に何でも見透かされそうで、アオは体を強張らせた。


「ちなみにさ、僕もそういう類いは知ってるんだけど、聞きたいかな?」


「う、うん」


「そうか。それではお聞きください。“コトリバコ”」


 それを始めに、クロは語り出した。




 去年の夏休み、僕はとある地域を訪れた。

 廃墟とか遺跡とか、そういうのに興味があってね。

 度々そういうところに行っては、珍しいものを持ち帰ってたりしたよ。

 話を戻そう。

 僕はその地域の山奥まで、タクシーに乗ってきた。

 運転手さんは気味悪がっていたなぁ。


「兄ちゃん、いったいこんな山奥で何をするってんだい?」


「ちょっと、古い集落の探索に」


「この辺にある集落といったら……。兄ちゃん、気ぃつけろよ」


「はい。ありがとうございます」


 お金を払って、僕はタクシーから出た。

 スマホで地図を見ながら、山道を進んでいく。


「………………ここかな?」


 僕が見つけたのは、古い集落への入り口。

 そこには、ボロボロの黄色いテープが張られていた。

 『立ち入り禁止』とある。

 しかし、僕は好奇心に勝てない人間だ。

 ここへ入って死んでも本望ってくらいにね。

 本当は天使のように美しく、心優しい女の子に看取られたいけど、あの頃はまだ出逢えてなかったなぁ。

 あ、どうでもいいよね。

 僕はテープを避けて、迷わず前進した。




 道は雑草だらけで進みづらかった。

 そんな酷い道を歩き、僕は集落に辿り着いた。

 建物は、崩れているもの、崩れかけているもの、形を保っているものと、様々だった。

 当然人の気配はしなかった。

 この日は曇天。

 集落の雰囲気と上手くマッチしていた。

 僕自信、この集落についてはよく解っていなかった。

 ネットでは噂ばかりだったからね。

 嘘の情報を信じてしまうより、こうして自分で調べるのが好きなんだよ、僕は。

 集落内をしばらく探索していたら、一つの家に目が止まった。

 表札には『長宅』と、その下に苗字が書かれていた。

 この家は、この集落の長のものらしい。

 長の家ならば、この集落の情報が得られるかもしれない。

 だから僕は、早速お邪魔することにした。

 立て付けは悪かったけれど、扉は開いた。

 歩く度に、“ギシリ”と音が響く。

 老朽化が進んでいるようだった。


「………ここかな?」


 長の部屋らしき場所を見つけて、ドアを開けた。

 そこには机が一つと、本棚が幾つか立っていた。

 試しに一冊抜き取って、パラパラとページを開いてみた。

 文字が霞んでて、よく読めなかった。

 机の方もよく見てみた。

 机上に、手帳と資料を見つけた。

 資料を見てみると、正方形の小箱のような物が描かれてた。

 『子獲り箱』という題名らしい。


「子獲り箱……ねぇ………」


 描かれている小箱がおそらくそれだろう。


「興味あるな」


 僕はこれを読んでみることにした。

 要約してみると、次のようになる。


『子獲り箱

 水子の死体の一部等を、細工箱のような小箱に入れ、封をする。置物等、もっともらしい嘘をつき、殺したい人物の身近に置く。水子を何人入れるかにより、その呪いの強さと呼び方は変わる。

 「イッポウ」「ニホウ」「サンポウ」「シホウ」「ゴホウ」「ロッポウ」「チッポウ」「ハッカイ」。

 8人分入れた「ハッカイ」が最も危険。呪いの力は強力で、制作者本人も殺しかねない。時間が経過しても呪いは衰えることを知らず、性質上解体ができない。』


 水子っていうのは、流産、堕胎した胎児のこと。

 子獲り箱に入っているのは、生きて産まれることができなかった赤ん坊達の怨念なんだろうね。

 その呪いは、どれくらい強力なのか。

 僕は資料を置くと、今度は手帳を開いた。

 内容を見るに、長の日記だったよ。

 読んでるうちに、この集落が迫害を受けていることが解った。

 全ページに渡って、そういった内容が示されてた。

 相当苦しかったんだろうね。

 最後の一文は、こう締めくくられていた。


『XX村を呪い滅ぼす』


 長は子獲り箱を使って、その村を滅ぼす計画を立てていたらしい。

 僕はそこで、スマホでこの集落周辺を調べた。

 その中にあったいくつかの町が、もともと災害で滅んだ複数の村の跡地から造られていることが解った。


「策略は成功かな。……いや、そうでもないか」


 村一つを滅ぼすくらいの呪いなら、おそらく「ハッカイ」。

 資料に『子獲り箱の呪いは強力で、制作者本人も殺しかねない』とあった。

 長一人なら納得できるが、この集落の有様だ。

 僕の予想が正しければ、長は「ハッカイ」以上のものを作ってしまったのだろう。

 子獲り箱が今どこにあるのかは、僕には解らない。

 でも、それはきっと簡単に片付くものではない。

 今もどこかに眠っていることだろう。




「お終い」


 ここで、クロの話は終わった。


「どう思ったかな?アオちゃん」


「……呪いかぁ。呪いは、跳ね返るものなんだね」


「怖い話っていうのは、元々は戒めを込めて作られたからね。今回のはそういう感じだよ」


 人を呪わば穴二つ。

 その諺は本当なのだと、アオは実感した。


「……おっ、やっぱ残ってたか」


 アオとクロが話しているところに、シロがやってきた。


「シロ君……」


「暗くなるぞ。そろそろ帰ろうぜ」


 そう言われてアオは、窓の方を見た。

 すっかり夕日が出ている。


「うん、帰ろう。クロ君も──」


「あぁ、僕はもう少し用があるから、先に帰っていていいよ」


「……そっか。それじゃあ、またね。クロ君」


「またな」


「うん。2人ともまた明日」


 入り口に歩いて行くアオとシロの背中を、クロは見送った。

今回登場した怪異


コトリバコ

とある集落で過酷な迫害に抵抗するために、外部から持ち込まれた呪物を基にして制作された呪いの小箱とされている。女子供を苦しませたうえで殺し、子孫を奪うというところから、「子獲り箱」という名が付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ