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八百万  作者: マー・TY
第五章
58/115

58.かくれんぼの話

「アオ、ありがとう!」


「うん、私で良ければ、いつでも力になるよ」


 多くの生徒が部活動に励む放課後。

 この日アオは、ニコの絵のモデルを頼まれて美術室に来ていた。

 椅子に座って、ニコと向かい合う。


「ニコね、アオのこと描いてみたかったの!」


「そうなの?」


「うん!」


 ニコはいつものように無邪気な笑みを浮かべ、デッサン用の鉛筆を走らせる。


「……………」


 絵のモデルというものは、退屈なものだ。

 何もせず、ただじっとしていなければならない。

 なのでアオは、ニコから怖い話を聞きながら待つことにした。


「ニコちゃん、何か怖い話、ない?」


「怖い話~?」


「うん。体験談でも、知り合いからの話でも、何でも」


「う~ん………あ、あった!」


「そう?聞かせてくれないかな?」


「うん、いいよ!」


 怖い話をするというのに、ニコは変わらず明るい。

 ニコはアオを描きながら、話し始めた。




 ニコのお友達の、ユウちゃんのお話だよ。

 ユウちゃんはね、ひとりかくれんぼに挑戦したの。

 ひとりかくれんぼはね、こっくりさんみたいな降霊術なんだ。


「君の名前はグーね」


 ユウちゃんはまず、茶色いクマのぬいぐるみに名前を付けたの。


「ちょっとごめんね~」


 それでね、ユウちゃんはグーの背中をハサミで切ったんだ。

 中に入ってた綿を全部出して、代わりに自分の爪とお米を入れたの。

 そしてね、切ったところを縫い合わせたの。


「これで完成~」


 その後、ユウちゃんはグーをお風呂に連れて行ったの。

 お風呂にはお水が貯まってるんだ。

 お風呂にグーを沈めるんだけど、その前にこう言うの。


「最初の鬼はユウだから、最初の鬼はユウだから、最初の鬼はユウだから」


 この呪文を唱えないといけないんだって。

 グーちゃんをお風呂に入れた後、ユウちゃんは家の明かりを全部消したの。

 夜だから真っ暗になっちゃった。

 だけど、テレビだけは点けるんだ。

 リモコンで、画面を砂嵐にするの。

 それでね、10秒数えるの。

 数え終わったら、包丁を持ってお風呂に行くんだって。

 それでね、グーを取り出して、また呪文を唱えるの。


「グー見つけた、グー見つけた、グー見つけた」


 その呪文の後に、ユウちゃんはグーを包丁で刺したの。

 ハサミで切ったときは心が痛んだけど、もう平気だったんだって。

 それで、包丁が刺さったグーをまたお風呂に沈めたの。

 その後、ユウちゃんは自分のお部屋に行って、押し入れに隠れたんだ。

 後は、待つだけなんだって。


「楽しみだな~」


 ユウちゃん、楽しかったみたい。

 こうして隠れてる間に、グーに幽霊が憑依して探しに来るの。

 ユウちゃんはお父さんと一人暮らしで、お母さんは離婚して出て行っちゃったんだって。

 お父さんは夜遅くに帰ってくるから、その間寂しいみたい………。

 それで、ユウちゃんはひとりかくれんぼを始めたの。

 ひとりかくれんぼは、2時間以内に終わらせないといけないから、ユウちゃんはとりあえず1時間待ったの。 




「暇~」


 退屈だから始めたのに、ユウちゃん、退屈になっちゃったんだって。

 そうだよね。

 押し入れにいるんだから、外の様子は解らないよ。

 だから、ずっとスマホをいじってたんだって。


「暇つぶしの暇つぶしか~。これが本末転倒ってやつ?」


 でも、スマホの時計を見たら、もうすぐ1時間経ちそうだったんだって。


「そろそろいいかな?」


 ユウちゃんはスマホと、塩水が入ったコップを持って押し入れから出たの。

 ひとりかくれんぼの終わらせ方はこうだよ。

 塩水をちょっとだけ口に入れて、ぬいぐるみを見つけて、コップの塩水、口の中の塩水を順番にかけるの。

 その後、「私の勝ち」って3回言うの。

 それでお終い。


「グー、いるかなぁ?」


 ユウちゃんはリビングに行ったの。

 そしたら、テレビの砂嵐が止まってたんだって。


(あれ?なんで?……もしかして、マズイ?)


 ユウちゃんは焦って、急いでお風呂場に向かったの。


(…………あれ?)


 でも、お風呂にグーはいなかったの。

 包丁も。

 

(グー、どこ?)


 ユウちゃんはお風呂場を出て、グーを探しに行ったの。

 幽霊が入ってても、小さいぬいぐるみだから、倒せると思ったみたい。

 でも、そうじゃなかったの。


「うわっ!!」

 

 急に頭に殴られたような衝撃が走って、ユウちゃんは倒れちゃった。

 その時、塩水が入ってたコップも落ちちゃって、割れちゃった。

 頭に当たったのは、お父さんの灰皿だったんだって。

 なんとか立てたみたいだけど、今度は椅子が飛んできて、当たっちゃった。


(ヤバい、これ……。体中痛い……)


 今度はユウちゃん、立てなかったみたい。

 そんなユウちゃんのところに───


「み~つけた」


 包丁を持った、グーが来たんだ。

 ぬいぐるみの表情は変わらないのに、その時のグーは笑ってたって。

 グーはユウちゃんに飛び掛かってきて、ユウちゃんを刺したの。


「うっ!?」


 グーは何回も、ユウちゃんを刺したの。

 こう言いながら。


「グーの勝ちグーの勝ちグーの勝ちいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 それでユウちゃんは、死んじゃったんだ。




「お終い!どうだった?」


「うん………、怖かった」


 とうとう怖い話で死亡者が出た。

 アオは、改めて降霊術の恐ろしさを思い知った。

 しかし、気になる点がある。

 本当なら、この話は死んだ本人しか知らない筈だ。


「………ニコちゃん、ユウちゃんは……」


「ユウちゃんとは今もお友達だよ。今もそこにいるよ」


「えっ……!?」


「あ、できた!」


 ニコはできた絵を、アオに見せた。

 その絵には椅子に座ったアオと、その肩に手を置く見知らぬ少女が描かれていた。

今回登場した怪異


ひとりかくれんぼ

少し前に話題となった、危険な降霊術。やり方を間違えれば………。

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