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八百万  作者: マー・TY
第五章
56/115

56.手紙の話

 現在、アオは体育の授業を受けている。

 選択科目で、生徒はバドミントン、バスケットボール、バレーボールの3種目のうち一つを選ぶ。

 アオはバドミントンを選んだ。

 バドミントンは他の2つと違って個人種目のため、コートに限りがある。

 そのため、他の生徒同士の試合が終わるまで体育館の隅で座っていた。

 そこへコユがやってきて、隣に座る。


「アンタ、試合しないの?」


「コートが全部使われてるから。……コユちゃんこそ、試合は?」


「ほどほどにしてるわ。あんまり汗かきたくないし」


「そっか」


「まぁいいわ。コート空くまで話さない?」


「うん、いいよ。……あ、そうだ」


「どうかした?」


 シオンに頼まれた怖い話の収集。

 アオはコユにも訊いてみることにした。


「コユちゃん、何か怖い話知ってる?」


「え?知ってるけど……。なんで?怪談にでもハマった?」


「う、うん。そんな感じ」


「ふぅん。………それじゃあ、これはあたしの体験談なんだけど────」


 コユは始めにそう言うと、怖い話をアオに話し始めた。




 不幸の手紙って知ってる?

 あたしが中学生の時流行ったんだ。

 内容は簡単に言うと、届いた手紙を3日以内に誰かに回さないと不幸になるっていう内容。

 そう、チェーンメールってやつ。

 それでね、ある日その不幸の手紙が、あたしの元に届いたわけ。

 わざわざ黒い封筒に入れられて。

 でもあたし、その時は本気にしてなかったんだよね。

 以前いたずらで、不幸の手紙を作った男子がバレて先生に怒られてたのよ。

 だからあたしのところに届いたその手紙も、いたずらなんだって思った。

 だけど、誰がその手紙を出したのかは気になるところなのよね。

 犯人見つけたら怒鳴りつけてやろうかと思ったわ。

 いろいろ考えた後、あたしは友達の一人に不幸の手紙について訊いてみたの。

 その娘は物知りで、眼鏡がよく似合ってたわ。

 不幸の手紙を見たその娘は、眉をひそめてた。


「不幸の手紙かぁ……。他の人に回すのは間違ってるから、ここで止めるべきじゃないかな」


「やっぱそう思う?」


「うん。こんなの送られたら嫌な気持ちになるだけだよ」


「だよね。そうする」


 あたしは手紙をゴミ箱に捨てた。

 もちろんくしゃくしゃに丸めて。

 そうしたら少しスッキリした。

 



 だけどその翌日の朝、また不幸の手紙があたしの机に置いてあった。

 中身を読んでも、昨日と全く一緒。

 まさか同じものを用意してくるとは思わなくて、怒りを通り越して呆れた。

 あたしはまたあの物知りの友達に話した。

 友達は心配そうにあたしを見てた。


「ひどいよね。大丈夫?」


「なんか呆れた。新しいのまで用意して……。ただのいたずらなんだろうけど、ここまでマジになる?あたし何か悪いことしたっけ?」


「う~ん…………。そうだ、コユちゃん、その不幸の手紙見せて」


「え?……いいけど?」


 あたしはその友達に不幸の手紙を見せた。

 友達は文をまじまじと見ていて、そしてあることに気づいた。


「一緒だ」


「一緒って?」


「この手紙の字体、昨日と全く一緒なの」


 その友達は、ちょっと怖がってる感じでそう言った。


「え?わかるの?」


「うん。私記憶力良いから」


「す、凄いわね………。でも、字体が一緒なのは、犯人が昨日と同じってだけじゃないの?」


「ううん。私達が書く文字って、どれも形とか大きさが全く同じってわけじゃないでしょ?過去と全く同じ形とか大きさの字を書くのって、難しいはずだよ。でもこの手紙、それらが全く同じなの」


「コピーしたんじゃないの?」


「これ、シャーペンで書かれてる」


「え?……じゃあ、コピーじゃない?」


 何だか気持ち悪くなってきた。

 まるでゴミ箱に捨てた手紙が、自分から戻ってきたみたいだった。

 皺まで戻って……。

 いや、そんなことはない。

 あたしは首を横に振った。


「話聞いてくれてありがとう。これ、あたしが何とかするよ」


「そ、そう?」


 友達はちょっと不安そうにしてた。

 その日あたしは家に帰ってから、手紙をゴミ箱に捨てた。

 一応捨てる前に、その手紙に赤ペンで印を付けた。

 自分でもなんでそうしたのかは、よくわからない。

 でもきっと、不幸の手紙を信じてるあたしがいたのかもしれない。

 その日の夜、あたしはなかなか寝つけなかった。

 夢の中で黒い男みたいなのが出てきてさ。

 あたしはそいつに何度も殺された。

 殺され方も毎回違うの。

 撲殺鏖殺刺殺絞殺斬殺焼殺etc……。

 その度にあたしは何度も目を覚ました。

 しばらく寝るのが憂鬱だったな……。




 翌朝、あたしの目覚めは最悪だった。

 鏡を見たら、あたしはやつれた顔をしてた。

 それでもなんとか眠気に耐えて、あたしは学校に行って、自分の教室に入った。

 それから自分の机を見ると、机に手紙が置かれてた。

 黒い封筒に入れられて。

 あたしは恐る恐る、封筒を開けて手紙を見た。


「!?」


 手紙には、あたしが付けた赤ペンの印があった。

 あの時は、本当に不気味に感じたわ。

 それで少し、パニックになってた。

 なんか、クラスメイト全員が犯人みたいに見えてきた。


「コユキちゃん」


「!?」


 急にあの友達に話しかけられた。


「コユキちゃん……。その…………」


「ご、ごめん。ちょっと一人にさせてくれない?」


 あたしはそう言って、教室から出た。

 その娘が、せっかく心配してくれたのに。




 その日あたしは、誰とも話せなかった。

 あたしは友達が多い方だったけど、その日は一人で下校してた。

 一日中、不幸の手紙について考えてたから。

 最初はいたずらだと思ってた。

 でも、その日机に置いてあった手紙は……。

 あれは、あたしの家に入って手紙を回収しない限り、再現は不可能でしょ?

 ただのいたずらとは思えなかった。

 不幸の手紙って、本当にあるんじゃないかって思った。

 そして、その瞬間はあたしが横断歩道を渡ってた時に訪れた。


「危ない!!」


 そう声がして、あたしは後ろに引き寄せられた。

 その直後、猛スピードの車が目の前を通り過ぎた。

 信号無視の車だったみたい。

 もう少し遅かったら、あたしはその車に轢かれてた。

 そう考えると、体が震えだした。


「怪我はない!?」


 私を引き戻してくれたのは、あの物知りな友達だった。




 その日あたしは、その友達に神社に連れていってもらった。

 あたしはそこで、お祓いを受けた。

 そしたらその後、あたしに何も起こることはなかったし、机に不幸の手紙が置かれることも二度となかった。

 あたしを助けてくれた友達とは高校は違うけど、たまに連絡を取り合ってる。

 ちなみにだけど、あたしが轢かれそうになった日で3日目だったんだって。




「これでお終い。どうだった?」


「う、うん。怖かった」


 アオはカイだけでなく、コユもまた怖い目に遭っていたことを知った。

 コユを助けた友達。

 もし彼女に会ったら、お礼を言いたかった。


「あ、コート空いたわよ。ほらアオ、こんな話は終わりにして、試合しない?」


「うん。そうだね」


 アオとコユは立ち上がり、コートに向かった。

今回登場した怪異


不幸の手紙

他人に送らなければ不幸になるという、悪意のある手紙。



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