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八百万  作者: マー・TY
第五章
55/115

55.悪夢の話

今回の章では、一部登場人物の視点で怖い話を聞かされます。読者の皆さんは、アオになったつもりでお聞きください。

「ただいま」


「おかえり~」


 シロとクロと別れ、アオは家に帰り着いていた。

 リビングに行くと、料理中のサラが出迎えた。


「アオ、おかえり。学校どうだった?辛い思いしてない?」


「してないよ。シロ君達優しいから」


「そう、良かったわ。ちょっと待っててね。すぐ夕食できるから、カイと待ってて」


「わかった」


 カイはソファに座り、ニュースを観ていた。

 アオはその横に座る。


「おっ!おかえりアオ!」


「ただいま。珍しいね。カイがニュース……」


「ん?この時間おもしれぇ番組ねぇからな。適当に観てんだ」


「そっか。………あ、そうだ」


 アオはシオンとのやりとりを思い出した。


「カイ、何か怖い話、知ってる?」


「怖い話?何でだ?」


「えっと、……図書委員の仕事で。夏も近いから」


「なるほどな!頑張ってるな!」


「ありがとう。それで、何かない?実体験でも、人から聞いたものでも、何でも」


 カイは腕を組んで考えた。

 そしてニュース番組を観せるテレビを見て、ハッとした表情になる。

 何か知っているようだった。


「あったぞ!ひとつ!怖いかどうか別だけどな」


「本当?教えてくれない?」


「あぁ、いいぜ!」


 カイはアオに、自身が体験した出来事について話し始めた。




 これは中2の時だ。

 気づいたら俺は、駅のホームに立ってたんだ。

 駅のホームって、普通列車待ってる人が何人かいそうだったんだけど、その時は静かだったんだ。

 ていうか俺一人しかいなかった。


『まもなく、列車が到着いたします。黄色い線までお下がりください』


 急にスピーカーからそんな声が聞こえてきて、列車が駅に到着したんだ。

 それで列車のドアがゆっくり開いた。

 何か怪しく思えて、乗るかどうか迷って様子見たよ。

 でも列車はいつまで立っても動かないんだ。

 まるで俺が乗るのを待ってるみたいでさ。

 駅のホームを見渡しても改札に行くまでの階段とか何もねぇから、仕方なく俺は乗ってみたんだ。

 中には男と女が一人ずつ座ってて、俺以外に人がいたのがわかってちょっと安心した。

 俺が座席に座ると、ドアが閉まって、列車は出発した。

 窓の外を見ると、俺がいた駅が遠ざかっていって、背景が真っ黒に変わった。

 地下鉄だったからな。

 しばらく座ってると、アナウンスが聞こえてきたんだ。


『次は…、イケヅクリ~イケヅクリ~』


 確かにそう言ってたんだ。

 イケヅクリって変な駅名だと思った。

 するとアナウンスのすぐ後、4人のボロい着物着た子鬼みたいなのが出てきて、乗ってた男を囲んだんだ。


「何だ?あいつら……」


 俺は無意識にそう言ってた。

 ヤバいのがここからだった。

 4人の子鬼みたいな奴らが、一斉に男に襲い掛かったんだ。

 刃物で男をどんどん切り裂いていった。

 周りに血が飛び散って、俺にも掛かってきた。

 男は切り刻まれた肉の寄せ集めと頭だけにされて残って、子鬼みたいな奴らは隣の車両に入っていった。

 男の死体が、なんか刺身の盛り合わせに鯛の顔だけ置いてある、あれに見えたよ。

 あれがイケヅクリっていうんだよな?

 ホントはそんなこと考えてる暇はなくて、俺はただただビビってたな。

 そうこうしてると、またアナウンスが流れてきた。


『次は…、エグリダシ~エグリダシ~』


 今度は抉り出し。

 馬鹿な俺でも意味が解った。


「きゃぁああああああああああああああ!!!」


 突然女の悲鳴が聞こえてきた。

 気づいたらまたあの子鬼みてぇなのが出てきて、女を囲んでた。

 子鬼みてぇな奴らは、今度はスプーンを持ってて、それで女の体中を抉り出していった。

 スプーンでゼリーを掬うと、その一部が乗るだろ?

 それが今は人肉なんだよ。

 女は小さいクレーターみたいな穴だらけになって死んだ。

 子鬼みてぇな奴らも戻ってった。

 俺の顔は青ざめてただろうなぁ。

 この流れでいくと、次は俺だから。


『次は…、ヒキニク~ヒキニク~』


 子鬼みてぇな奴らが、俺を囲んだ。

 ピザ生地なんかを延ばす木の棒を持ってる。

 今度は俺が、ヒキニクにされる。


「やめろぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 この時俺は怖くなって、大声で叫んだ。




 気づいたら俺はベッドの上にいた。

 紛れもなく俺の部屋だった。

 そこで俺は、列車での出来事が夢だったことに気づいた。

 ガチャッて音がして、ドアが開いた。

 部屋にアオが………、お前が入ってきた。

 お前、寝ぼすけの俺が起きてることに驚いてたっけ。

 でも俺が汗だくなのに気づいて心配してくれたのは嬉しかったぞ。

 登校まで時間があったから、俺はシャワーを浴びてリビングに向かった。

 母ちゃんにも驚かれたな。

 それでお前と一緒に朝食を食べようとして、椅子に座った時だった。

 そのニュースが流れたのは。


『速報です。今朝、市内で男女の変死体が発見されました。男性の方は、体がバラバラになってあり、女性の方は、腹部から内蔵が飛び出していたとのことです』


 俺は驚いた。

 被害者の写真が公開された時は特に。

 だって、あの夢に出てきた2人と顔が一緒だったんだぜ?

 俺は解ったよ。

 あの夢で殺されたら現実でも死ぬって。




 その日の夜。

 俺は寝たくなかった。

 寝たらまたあの夢を見そうだったからな。

 でも何か、眠気に耐えられなくなって、俺はつい寝ちまったんだ。

 それで気づくと列車にいて、2人の死体が置いてあった。


『次は…、ヒキニク~ヒキニク~』


「続きからかよ!」


 俺は逃げようとした。

 けど、何故か体が動かなくなっていた。

 目の前に4人の子鬼みてぇな奴らが、木の棒を持って出てきた。

 明日の朝、ぐちゃぐちゃになって見つかる俺。

 それを最初に見つけて、泣き崩れるお前。

 そんな未来を想像してしまう。

 ……そしたら、なんかだんだんイラついてきた。


「……ふざけんなよ」


 俺はまだ死ねなかったんだ。

 だってあの時期、お前には俺がいないといけなかったからな。


「お前らみてぇなのに殺されてたまるか!!!!!」


 そう叫んだら、急に体が動くようになった。

 俺は目の前の子鬼みてぇな奴らを思いっきり蹴飛ばした。

 俺は運転席がある方に向かった。

 アナウンスで流れる駅名は、人の殺し方だ。

 この列車が止まれば、駅名が読まれることはない。

 俺は列車内を駆け抜けた。

 途中で邪魔が入ってきたけど、そいつらは避けたり蹴飛ばしたりして突破した。

 運転席に着くと、俺は思いっきりブレーキのレバーを引いた。

 そしたら、何故かそこで目が覚めた。

 それでそれっきり、その夢を見ることはなくなった。




「これで終わりだ。どうだった?怖かったか?」


 アオは苦笑していた。

 この夢の終わらせ方が、いかにもカイらしかった。


「ありがとう。……そして、ごめんね」


「ん?なんで謝るんだ?」


「あの時、カイは辛かった筈なのに、私のことばかりで……」


「気にすんな」


 カイはアオの頭に優しく手を置いた。


「お前は俺以上に辛かっただろ?」


「そんなこと……」


「それにお前がいたから、俺はこうして生きてるんだぜ!ありがとな!」


「カイ…………」


 アオは少し俯く。

 そして目を瞑ると、カイの膝に体を倒した。

 アオは久しぶりに、こうしてカイに甘えたくなった。

今回登場した怪異


猿夢

夢の中の列車で、それは起こる。列車内の乗客が、車内のアナウンスの通りに殺されていく。

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