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八百万  作者: マー・TY
第四章
53/115

53.約束の話

「はぁ……はぁ………。もうあいつみたいなのはいないよな?……ニコ!」


 アガリビトが絶命したのを確認したトウは、倒れているニコに駆け寄って抱き起こした。


「ニコ!おい!生きてるか!?」


「……………トウ?」


 ニコは意識を取り戻した。

 トウを見て微笑む。


「ニコ!」


「エヘヘ……。トウ、勝ったんだね」


「あぁ。お前……無茶しやがって…………」


「だってトウ、危なかったもん」


「はぁ………。………ありがとな。精進する」


「うん!頑張って!」


 ニコはゆっくりと起き上がった。

 少々ふらついたが、何とか踏みとどまる。


「トウこそ大丈夫?怪我してるよ」


 アガリビトの猛攻を食らい、トウの体はボロボロだった。

 顔に痣ができている。


「平気だ。このくらい……」


「ダメ!休まなきゃ!」




 トウとニコは、巨大樹の穴に入った。

 ニコはトウの体の傷口に絆創膏を貼っていく。

 しかし枚数が足りず、全てを塞ぐことはできなかった。

 そもそも擦り傷とはわけが違う。


「うゆ……。ごめんね。足りない」


「いやいいって」


「うゆぅ……………。!……そうだ!」


 ニコはリュックサックを開け、中から焼きプリンを取り出した。


「お腹減ったでしょっ!はいこれ!食べて!」


 ニコは焼きプリンをトウに差し出した。


「……」


 トウは無言でニコの顔を見た。

 ニコの目は焼きプリンにいっていた。

 トウはクスリと笑う。


「なっ、なんで笑うの!?」


「あはは、悪いな。お前本当はそれ、食べたくて仕方ないんだろ?プリン好きだもんな」


「うゆっ!?」


「図星か」


 トウはニコの幼馴染み。

 ニコのことは誰よりも知っている。


「で、でもぉ……」


「ありがとな。気持ちだけ受け取っとくわ。俺には弁当の残りがある」


「い、いいの?」


「いいって言ってるだろ?それに俺、お前の笑顔好きなんだよ。だからニコって名付けた」


「!!」


「ほら、見せてくれよ。お前の幸せそうな笑顔」


「トウ!ありがとう!!」


 ニコは焼きプリンを、トウは弁当の残りを、それぞれ食べ始めた。

 トウはチラッとニコの顔を覗いた。

 ニコは満面の笑みで焼きプリンを口に入れている。


(無いは無いで調子狂うな。コイツの笑顔)


 トウの顔からも、自然と笑みが溢れた。

 そして2人は、それぞれ完食した。


「美味しかった~!!!」


「そうか」


 トウの体の状態も、少しはマシになってきていた。

 そんなトウの顔を、今度はニコが覗き込んできた。


「………何だよ?」


「トウ、もしかして、思い出した?ニコ達が小さかった時のこと」


「どうしてそう思う?」


「だってトウ、なんかいつもより優しいもん」


 ニコの鋭さを、トウは改めて思い知った。


「そうだな。お前を捜してる時に思い出したよ。昔のこと。俺とお前が初めて出会った頃とかな」


「うゆぅ!じゃあトウ、今まで忘れてたの!?」


「お前はずっと覚えてたのか?」


「当たり前だもん!」


 ニコは頬を膨らませた。

 それもまた可愛らしかったが、トウは申し訳ない気持ちにもなってきた。


「………すまないな。お前があの頃と全く変わらないから、だんだん疎ましく思ってきていた」


「うゆっ!トウは変わっちゃった!『僕』じゃなくて『俺』になったし、それになんか、クールになった!」


「そりゃ成長すれば誰でも変わるだろ」


「……でも、トウは変わっちゃったけど、変わってなかった!」


 ニコは、今度は嬉しそうにそう言った。


「ニコのこと見つけてくれたし、助けてくれた!ニコのために無茶もした!トウは、トウのままだった!」


「ニコ…………」


「ねぇ、トウ」


 ニコは自分の肩を、トウの肩にくっつけた。


「わかってると思うけど、ニコね、トウのことが好きなの。当然トウには幸せになってほしい」


「ニコ?」


「でもニコ、子供っぽいから、トウに迷惑かけてるよね?………でも、ニコはトウが好きなの」


「………」


「だけど、トウには好きな人がいるかもしれない。ニコは、その人に負けてるかもしれない。だから、断ってもいい。決めるのはトウだから。断られたら、ニコもちゃんと諦めるから。だから、ニコのわがままだけ聞いて」


「………」


 ニコは体をトウの方に向けた。

 そして深呼吸をし、勇気を振り絞って言った。


「トウマ、好きです。結婚前提に、付き合ってください!」


 ニコは頭を下げた。

 それはニコにとってトウへの、最後の告白だった。

 言葉通り、ニコは断られたら諦める気でいた。

 トウも真剣な顔でそれを聞いていた。


「………ニコ。……いや、イロハ」


 トウはニコを見つめる。

 答は既に決まっていた。


「こちらこそ、よろしく頼む」


「えっ!?」


 ニコは慌てて顔を上げた。


「……いいの!?」


「そう言ってるだろ」


「本当にいいの!?ニコのこと、疎ましかったんでしょ?」


「まぁな。………だが、約束したからな」


「約束?」


「お前こそ忘れたか?小2のあの日、約束しただろ?お前をお嫁さんにするって。幸せにするって」


「トウ………」


 ニコの瞳から、涙が出てきた。

 そんなニコの頭を、トウは優しく撫でる。


「付き合おう、ニコ。必ずお前を幸せにしてみせる」


「!!!………トウーーーーー!!!!」


 ニコはトウを、思いっきり抱き締めた。


「痛っ!」


「トウ!!!ありがと~!!!」


「たっ、ただし、学校じゃこういうの控えろよ!」


 巨大樹の穴の中はすっかり賑やかになった。

 しばらくして、その巨大樹がライトで照らされた。




「おはよう」


 週末を開け、月曜日。

 1年2組の教室に、アオが入ってきた。


「アオーーーー!!!」


 ニコがアオの胸の中に飛び込んできた。

 アオは優しくニコを抱き締める。


「ニコちゃん、おはよう」


「アオ!よかった!」


「おいおい、アオが困ってんだろ」


 そこへ、シロとコユも寄ってきた。


「アオ、もう大丈夫なの?」


「うん。カイと一緒に登校してきた。ちょっとずつ慣れながら、一人でも外出できるようにするよ」


「いや別に一人じゃなくても……」


「お~いアオ!遊びに来たぜ!」


「やぁアオちゃん。学校では久しぶりだね」


 さらにカイ、トウ、ショウ、クロの4人も、2組の教室に入ってきた。

 トウは右頬ににガーゼを貼っている。


「そうだ、ニコちゃんとトウ君、遠足のとき……」


「あぁ。大変だった」


 トウとニコは、あの後救助隊に発見された。

 ニコは家に帰され、トウは病院で検査を受け、警察にも行った。

 それらを終えて家に辿り着いたトウは、LINEグループで事の流れを話したのだった。


「そりゃ取り調べも受けるだろうな。俺返り血浴びてたし、山刀持ってたし、アガリビトの死体放置してたし。まぁ、特務課って人達が何とかしてくれたようだが」


「お疲れ様………」


「それで、お前らついにくっついたって?」


 ショウがニヤニヤしながら訊いた。

 トウはショウをジトリと睨みつけた。


「あぁ。俺とニコはもうカップルってやつだ。何か変か?あァ?」


「い、いえ。変じゃないっス……」


「よかったね、ニコちゃん」


「うん!」


 ニコはアオに、満面の笑みで応えた。

 そんな様子を見て、コユは微笑みながら提案した。


「やっと全員揃ったわね。ねぇ、今週末みんなでどこか遊びにいかない?遠足の延長ってことで」


「おっ!いいなそれ!」


「賛成~!」


 8人全員が、揃って笑みを見せる。

 そして、遊びに行く場所について語りあった。

 この時間はニコにとって、とても幸せなものだった。

少し短かったですが、第四章はこれで終わりです。次章に期待!

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