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八百万  作者: マー・TY
第四章
50/115

50.目的の話

 カイ、シロ、コユ、ショウ、クロの5人は、管理事務所の休憩所の席に座っていた。

 昼食を食べ終えたものの、これといってやることがない。


「何もできることがないなんてね……。何ていうか、もどかしいわ」


 コユはそう言って、今日何度目かの溜息を吐いた。

 その時、カイのスマホの着信音が鳴った。

 カイは慌てて通話に出た。


「もしもし!?トウか!?今どうしてんだ!?」


『………えっと、カイ?』


 電話を掛けてきたのはアオだった。

 カイは思わず苦笑する。


「なんだアオか」


『何かごめん。……その、ニコちゃんが心配で掛けたんだけど、今どうなってるの?トウ君にも何かあった?』


「あぁ。ニコを追ってトウまで山に入っちまって大変なんだ。変な化け物もいるしよぉ」


『変な化け物?』


「……いや、心配すんな!トウもニコもすぐ帰ってくるからな!お前は今は何も考えずにゆっくり休んどけ!なっ?」


『……………うん』


 スマホから聞こえてくるアオの声は、明らかに沈んでいた。

 

「何かあったら俺から連絡する。それじゃあまたな!」


『うん』


 カイはアオとの通話を切った。

 それからカイは、わかりやすく落ち込む。


「はぁ……。何やってんだ俺………」


「いやいや、そう落ち込むなって!」


「アオちゃんを気遣ってのことだよね?少し失敗しちゃったようだけど」


 ショウとクロがカイを励ました。

 今のアオには、心を休める時間が必要なのだ。


「アオを巻き込むわけにはいかないし、これから何かやるってなったら、あたし達5人で動かないとね」


「そうだな。……つーかよぉ、そのアガリビトって奴は、あの2人に何かするのか?お前らの話からすると、トウを追ってったんだろ?」


 ここでシロが、アガリビトについての疑問を述べた。


「ん?捕まえて喰うんじゃねぇのか?」


「あぁ、山で肉は貴重そうだしな」


 カイとショウは、食糧化説を唱えた。

 しかしコユが別の意見を出す。


「アンタら何想像してんのよ?………あたしがアガリビトだったら、山から出ないようにするわね」


「ん?何でだ?」


「仲間を増やすためよ。ここの山にいすぎたらアガリビトになっちゃうんでしょ?それまで粘ってるんじゃない?………まぁ、あたしの勝手な想像だけど」


「…………いや、もっと恐ろしい可能性が考えられるよ」


 4人はクロに注目した。

 クロは微笑しているが、その顔には焦りが混ざっていた。


「トウ君を追うのは食糧目的で合っているかもしれない。でも、ニコちゃんは違うよ」


「ニコは別の目的ってこと?」


「うん。……生き物には生殖本能が備わっている。アガリビトも幽霊とかの類いじゃないから例外ではないだろうね」


「……ちょっと、それって!」


「………これ以上は何も言わないでおこう」


 また4人の顔が青ざめる。

 目的がどれであろうと、2人はただでは済まない。

 何も言わないと言いつつ、クロは心の中で続けた。


(アガリビトも元は人間。人間の女性との性交でも子孫は増やせるだろうね。しかもあれなら栄養を付けさせるために、肉を喰わせるなんてこともしかねない)


「…………いや、違うよな?」


 突然カイがそう言い出した。


「トウがあんな変な奴に負ける訳がねぇ!絶対ニコを連れて帰って来るだろ!なぁ!?お前ら!」


 カイはそう言うと、ニッと笑ってみせた。


「そうよね……」


「あいつ剣道やってるし、なんとかなるよな!」


「死んで帰ってきたらぶっ飛ばす……」


 カイの言葉で、コユ、ショウ、シロに元気が戻ったようだった。

 それを見て、クロは微笑む。


(そうだよね。あの2人はこれからなんだ)




「うゆぅ…………。こっち、やだ……………」


 ニコは震えながら、歩く方向を変えた。

 崖をよじ登ってくるアガリビトの恐ろしい顔が、未だに脳裏に浮かんでくる。

 敏感なニコは嫌な気配を避けつつ、山の中を彷徨っていた。


「うゆ?」


 歩き回っているうちに、ニコは巨大な木を見つけた。

 根元が盛り上がっており、人が入れそうなスペースがある。

 ニコはそこに駆け込んだ。

 中は薄暗かった。

 ニコはリュックサックを横に下ろし、根の壁に背中を付けて体育座りをした。


「怖いよ………。トウ、助けて……………」


 ニコは膝元に顔を埋める。

 瞳からは自然と涙が溢れた。

この話で50話です!

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