49.巨頭の話
岩陰で弁当を半分だけ食べたトウは、再び山の中を歩き出す。
アガリビトから逃げられはしたが、今自身がいる場所がどこなのか見当も付かない。
スマホの充電はまだ余裕があるが、位置情報が解らず、連絡も取れないので使い物にならない。
「何か目印でもあればいいんだが……。人工物が見当たらないな……」
山では道を外れないよう、木にカラーテープが巻いてあることが多い。
トウはそのような目印を探しているが、一向に見つからない。
「せめて頂上に行ければな……。ニコを見つけやすくなるかもしれねぇのに……」
周囲が木で囲まれた広い山で、連絡も取り合えない2人が再会できる確率は絶望的に低い。
闇雲に捜すより、トウは頂上を目指すことにしていた。
頂上なら見晴らしが良いうえに、救助隊のヘリにも気づいてもらいやすい。
「……いや、やっぱ直接捜した方が早いか!?」
正直トウは焦っていた。
アガリビトがニコを見つけたとき、何をするかが解らないからだ。
恐ろしいことには変わりないだろうが。
「………ん?」
頭を掻きむしっていたトウは、自分が今居る斜面の下の方に、木造の建築物が集まっている場所を見つけた。
どうやら村のようだ。
「あそこなら人が居るかもしれない!」
そう言うとトウは、急いで斜面を駆け下りた。
トウは村の入り口に辿り着いた。
近くには看板が立っており、それには『巨頭オ』と書かれていた。
「『村』の字が一部掠れてるだけか。それにしても変な名前の村だな………」
少し不審に思いながらも、トウは村の中に入った。
村の中は静かだった。
雑草が伸び放題で、木造の家は一部崩れているものがあれば、苔が生えまくっているものもあった。
どうやら長い間管理されていないようだ。
「すみません!誰かいませんか!?道に迷ってしまったんです!」
いるかどうかも解らない村人達に向けて大声で言う。
しかし、村は相変わらず静まり返っている。
本当に誰もいないと思われたその時、近くの草むらから音がした。
「!」
トウは瞬時に音がした方を見た。
音の主がヌッと顔を出す。
いや、体を起こすといった方が正しいだろう。
草むらから現れたそれは、頭が異常に大きい人間のようなものだった。
「何だコイツ……」
トウは、思わず後退る。
すると、いくつもの物音が聞こえた。
周囲を見ると巨頭の人のようなものが、木の陰や建物の中から次々と出てくる。
数えたところ、巨頭の人のようなものは20体以上居り、トウを取り囲んでいた。
村からの出口も塞がれてしまっている。
「一人じゃないのか!何なんだよコイツら……」
巨頭の人のようなものは、両手を太股辺りに付けると、巨大な頭を左右に振りながら一斉にトウに近づいてきた。
「ッ!!」
トウは瞬時に走り出した。
巨頭の人のようなもの達の間を素早く抜ける。
動きはそこまで速くないようだ。
しかし、数が多すぎるためか、なかなか思う通りにならない。
トウはガードな手薄なところを見つけると、そこから逃げ出した。
「はぁ……はぁ………。本当に何者なんだよあいつらは……」
トウは村の廃屋で息を潜めていた。
なんとか脱出できないものかと考える。
外を覗くと、巨頭の人のようなもの達が徘徊していた。
トウを捜しているようだ。
「くそっ……!こんなところで足止め食らってる場合じゃねぇってのに!」
こうしている間にも、ニコは危険に晒されている。
早くこの村から脱出したかった。
「………何かないか?」
トウは廃屋の中を見た。
どうやらこの廃屋は倉庫として扱われていたらしく、農具等、様々な道具が置かれていた。
トウは早速それらを物色していく。
斧、鍬、シャベルと、まだ使えそうなものは相当沢山あった。
「武器になりそうな物が充実してるな……。ん?」
ある物に、トウの目が止まる。
それは山刀だった。
トウはそれを手に取り、鞘を抜いて見る。
刃は少し錆びていたが、武器として使えそうだった。
トウは試しに山刀を振ってみた。
剣道の竹刀よりは短いが、不思議と使いやすかった。
「………行ってみるか」
トウは護身用に山刀を持っていくことにした。
鞘をリュックサックのポケットに突っ込むと、右手に山刀を持って廃屋を出た。
相も変わらず奇妙な走り方で、巨頭の人のようなもの達は追いかけてくる。
廃屋から出た最初は疎らだったおかげで躱すのは容易だったが、出口に近づくにつれて巨頭の人のようなもの達は密集していた。
「!」
背後から近づいてきたものを躱し、後ろに回って山刀で斬りつけた。
バランスを崩したその巨頭の人のようなものは前のめりに倒れ、それに巻き込まれたものたちも次々と転んでいった。
「デカい頭が徒となったな」
トウはその隙を見逃さず、出口に近づいていく。
出口前には3体の巨頭の人のようなもの達が立ち塞がっていた。
それらが一斉に襲いかかる。
しかしトウは怯むことなく、それらの間を抜けた。
その際、一体の脚を斬りつけた。
斬られたそれは倒れ、同族達の道を塞ぐ。
その隙にトウは、村から脱出した。
「時間を取られたな。……待ってろニコ!」
トウは山の中をどんどん進んでいく。
山刀を持ってから、不思議とトウの中から恐怖は消えていた。
今回登場した怪異
巨頭オ
とある村。そこには巨頭の人のようなものがおり、両手を脚にぴったりとくっつけ、頭を左右に振りながら追いかけてくるという。




