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八百万  作者: マー・TY
第四章
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47.還る話

「……はしゃいでるなぁ」


 特にやりたいこともなく、こがらし公園を歩き回る司波は、走り回っている生徒達を見てそう呟いた。

 遠足だからか、多くの生徒はリュックサックを置いてはしゃぎ回っている。

 自然の空気を満喫し、開放的になっている者がほとんどのようだ。


「生徒は元気でいいなぁ。………あ?」


 生徒達とは逆に冷めている司波の少し先に、村山に代わって1組の担任になった瀬戸浦と、カイ、ショウ、クロがいた。

 瀬戸浦は元1組の副担任で、腹が出ている中年の男性教師だ。

 カイが何やら焦った様子で話しており、瀬戸浦も困惑しているようだった。

 少しすると、3人はその場を離れていった。

 司波は瀬戸浦に近づき、話しかけた。


「瀬戸浦先生、どうかされましたか?」


「あぁ、司波先生。丁度良いところに。あなたに報告しようと思っていたところです」


「何ですか?」


 瀬戸浦は額を伝う汗をハンカチで拭きながら、カイ達から訊いた内容を話し始めた。


「実は、うちのクラスの阿久津君と、先生のクラスの七楽さんが山に入って戻れなくなってしまったようなんです」


「阿久津と七楽が!?どういうことですか!?」


「日之道君の話によると、最初に七楽さんが山に入っていき、それを見た阿久津君が後を追ったそうです」


「七楽はどうして山に?」


「そこはよく解らないそうです。それで、危険を感じた日之道君達が駆け付けると、この公園と山とを繋ぐ橋が壊されていて、しかも山の方で阿久津君が灰色の男と対峙しているところを目撃したそうです」


「灰色の男?それで、阿久津は?」


「助けだけ求めて、山の中に消えていってしまったようです」


「………ちょっと待ってください」


 司波は俯き、右手で顔を覆った。

 つい最近も、自分の生徒が行方不明になったばかりなのだ。

 そんな司波を、瀬戸浦は元気づけようとする。


「大丈夫ですよ。彼らはきっと帰ってきます。それより私達がしっかりしないとですよ」


「………そうですね」


「はい。それでは、私は他の先生方にこのことを報告致しますので、司波先生は管理事務所へ報告をお願いします。では」


 そう言うと瀬戸浦は、小走りで去っていった。

 一人残された司波は、フラフラと管理事務所の方に歩き出した。

 アオが行方不明になった時と同じ不安がこみ上げてくる。


「アオに続いて、今度は七楽と阿久津か……。何でいなくなるんだよ、お前ら……」




 カイ、ショウ、クロの3人は、休憩所でシロ、コユの2人と落ち合った。

 クロが2人に召集をかけたのだ


「で、どうだったんだ?」


「ニコは見つかったの?トウもいないけど……」


「いや、そのことなんだけど………」


 クロは今までの経緯を2人に説明した。

 コユの顔が青ざめる。


「そんな……。だったら2人が危ないじゃない!ていうか何なの!?灰色の男って!」


「アガリビトだ」


「は?」


 4人全員がクロに視線を向ける。

 クロには心当たりがあるようだった。


「何だ?そのアガリビトって」


「人が山に還った姿さ」


「人!?あれが人だってのかよ!?」


 カイとショウは驚愕していた。

 トウと対峙していた灰色の男は、とても人間とは思えなかったのだ。

 クロの話は続く。


「山の動物が都会に順応することがあるよね。されとは逆に、人が山に順応した姿がアガリビトなんだ」


「順応って………」


「そんなことあり得るのかよ!?」


「あり得るから怖いんだ。山に来ると開放的な気分になるよね?都会に長くいる人間程そうなる傾向にある」


 カイ達が暮らしているのは都会の方だ。

 クロが言うとおり、カイやショウは夢中になって遊んでいた。

 公園内を見ると、はしゃぎ回っている生徒が多い。

 そんな様子を見たシロが、コユと同じように青ざめてクロの言いたいことを要約した。


「つまり、アガリビトの正体は、都会から山に来てはしゃぎまくって、その勢いのまま山っつーか、自然に還ってった人間ってことか?」


「そういうことだよ。人工物がない、自然100%の山ほどそうなりやすい。こがらし公園がある山は相当自然度が高いとみえるね」


 4人は再びゾッとした。

 自分達もそうなる可能性があったと考えたからだ。

 そこでコユは、友人達に降りかかろうとしている危険に気づく。


「ちょっと待って!カイ達が見たアガリビトも危険だけど、ニコとトウもこのままだと山に還っちゃうってこと!?」


「………そうなる可能性も否定できない」


 5人は沈黙する。

 クロがスマホを取り出し、LINEをチェックし始めた。


「そうだ!スマホ!」


 それを見たコユもスマホでニコに、カイがトウに電話を掛けた。

 しかし、2人共電話に出ることはなかった。

 クロもスマホをポケットに仕舞った。


「おそらく圏外だ。山に入るわけにもいかないし、連絡も着かない。今回ばかりは僕達じゃどうにもできない。祈るしかないよ……」


「クソっ!」


 カイが悔しそうに、木のベンチに拳を打ちつける。

 クロは静かに山の方を見つめた。


(トウ君、君が頼りだ。ニコちゃんを見つけてなんとか脱出してくれ……!)

今回登場した怪異


アガリビト

山に還った人間。神に近い存在とも云われている。

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