43.幼馴染みの話
「お疲れ~!」
「お疲れ様です!」
隠神高校の武道館。
剣道部の活動を終えたトウは、胴着を畳んでいた。
「お疲れ、トウマ」
同じ剣道部の女子が、トウに話しかけてきた。
「お前何日か見なかったけど、腕前は健在だな」
「あぁ。遅れは取らない」
アオ救出の際、トウはずっと部活を休んでいた。
そのせいか、復帰してからはいつも以上に気合いを入れていた。
2、3年生の剣道部員にも引けを取らない。
「リリ~!帰ろ~!」
「あぁ!それじゃあな、トウマ」
その女子は友人の元に駆けていった。
トウは静かにそれを見送った。
トウは校門を目指して歩いている途中、クロに話しかけられた。
「やぁトウ君。部活帰り?」
「そんなところだな。お前は?」
「図書委員の仕事。別に毎日出なくてもいいんだけど、あそこは居心地いいんだよね」
そう言ったクロは、爽やかに笑った。
クロとの出会いは、アオ救出の時だ。
突然現れたため、トウ自身クロのことはよく知らないが、接しているうちに、物知りで頭が切れる方というイメージができた。
クロの提案で、2人は一緒に帰ることになった。
「そうだ。丁度君に訊きたいことがあったんだよね」
クロが早速口を開いた。
「ニコちゃんって、何者?」
「は?」
トウはニコのことを思い浮かべた。
ニコは幼馴染みで、幼稚園からの付き合いだ。
しかし、トウにはニコが同級生とは思えない。
背が低くく、童顔なうえ、精神年齢が幼稚園から成長していないのだ。
そんな訳で、ニコはトウのことを愛しているが、トウはニコのことが苦手だった。
「ただの幼馴染みだ。それがどうした?」
「いやぁ、不思議な子だなぁって思ってね。こっくりさんした時のこと覚えてる?」
アオ救出の際、トウ達はよくこっくりさんを利用した。
思えばその事件前から、ニコとこっくりさんをしたのを覚えている。
「それがどうした?」
「この隠神市では様々な怪異が見られるわけだけど、こっくりさんは特殊でね、特別な人が参加しないと呼び出せないみたいなんだよ」
「そういうものなのか?」
「うん。それでさ、ニコちゃんが参加したとき、こっくりさん、来たよね」
クロが言っているのは、こっくりさんに村山先生について訊いた時のことだ。
その時は、始めにカイ、シロ、クロの3人で呪文を唱えたが、こっくりさんは来なかった。
しかし、シロに代わりニコが入って呪文を唱えると、こっくりさんを呼び出すことに成功した。
「今のところ僕たちは、ニコちゃんがいないとこっくりさんができないわけだね」
「………」
トウがニコの提案で、こっくりさんをした時も成功した。
ニコには不思議な力があるということなのだろうか。
思えば心当たりがいくつもあった。
「こっくりさんに限ったことじゃない。あいつには見えるらしい。俺達には見えないものが」
「見えないもの?」
ニコがトウの家に来たときのことを話す。
コンビニでジュースと菓子を買って帰ってくると、ニコがトウの部屋で虚空に向かって会話していたのだ。
後から聞けば、トウの家の守護神であるヤモリと会話をしていたという。
「なるほどね。ニコちゃんには霊感があるのかな?見えもするし、引き寄せる体質なのかも」
「見えるのは解るが、引き寄せる?」
「こっくりさんを呼ぶには、引き寄せちゃう子がいる必要があるってことだよ。特殊な人っていうのは、そういう子」
こっくりさんについて腑に落ちないところがあったため、トウは少しスッキリした。
「まぁでも、油断はできないね」
「何?」
「霊感がある子の中にはね、霊に魅入られて連れて行かれちゃう子もいるんだ。ニコちゃんもそうなっちゃうかもね」
一緒にいて初めて知った。
ニコは常に霊から命を狙われているのだという。
「君がしっかり守ってあげないとね」
「……関係ない」
「え?」
トウはそっぽを向いて応えた。
今のところ、ニコはトウにとって厄介者でしかなかった。
「迷惑なんだよな。あぁやって幼児みてぇに付き纏われて……。おかげでいろんな奴らに冷やかされる。俺はあいつが嫌いだ。本当に同い年かよ……。俺は平穏に過ごしたいだけだ」
「フ~ン……」
今のをトウの会話をニコが聞いていれば、間違いなく泣き出しているだろう。
全ての女性を大切にするのが心情のクロだが、この時はニヤニヤと笑っていた。
「そういうこと言うんだ。だけどさぁ、トウ君。キミ、もしニコちゃんが危険な目に遭っていたら、放っておく勇気はあるのかい?」
「何だと?」
「おっと、僕はこっちだ。それじゃあまたね~」
クロは手を振りながら、歩き去って行く。
街灯の下で、トウは一人残された。
「………知ったことか。どうでもいい」
トウはそう言って歩き出す。
明らかに苛立っていた。
『ソウルストーリー』の時と設定変えてるところがいろいろあるんですよね……。




