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八百万  作者: マー・TY
第四章
43/115

43.幼馴染みの話

「お疲れ~!」


「お疲れ様です!」


 隠神高校の武道館。

 剣道部の活動を終えたトウは、胴着を畳んでいた。


「お疲れ、トウマ」


 同じ剣道部の女子が、トウに話しかけてきた。


「お前何日か見なかったけど、腕前は健在だな」


「あぁ。遅れは取らない」


 アオ救出の際、トウはずっと部活を休んでいた。

 そのせいか、復帰してからはいつも以上に気合いを入れていた。

 2、3年生の剣道部員にも引けを取らない。


「リリ~!帰ろ~!」


「あぁ!それじゃあな、トウマ」


 その女子は友人の元に駆けていった。

 トウは静かにそれを見送った。




 トウは校門を目指して歩いている途中、クロに話しかけられた。


「やぁトウ君。部活帰り?」


「そんなところだな。お前は?」


「図書委員の仕事。別に毎日出なくてもいいんだけど、あそこは居心地いいんだよね」


 そう言ったクロは、爽やかに笑った。

 クロとの出会いは、アオ救出の時だ。

 突然現れたため、トウ自身クロのことはよく知らないが、接しているうちに、物知りで頭が切れる方というイメージができた。

 クロの提案で、2人は一緒に帰ることになった。


「そうだ。丁度君に訊きたいことがあったんだよね」


 クロが早速口を開いた。


「ニコちゃんって、何者?」


「は?」


 トウはニコのことを思い浮かべた。

 ニコは幼馴染みで、幼稚園からの付き合いだ。

 しかし、トウにはニコが同級生とは思えない。

 背が低くく、童顔なうえ、精神年齢が幼稚園から成長していないのだ。

 そんな訳で、ニコはトウのことを愛しているが、トウはニコのことが苦手だった。


「ただの幼馴染みだ。それがどうした?」


「いやぁ、不思議な子だなぁって思ってね。こっくりさんした時のこと覚えてる?」


 アオ救出の際、トウ達はよくこっくりさんを利用した。

 思えばその事件前から、ニコとこっくりさんをしたのを覚えている。


「それがどうした?」


「この隠神市では様々な怪異が見られるわけだけど、こっくりさんは特殊でね、特別な人が参加しないと呼び出せないみたいなんだよ」


「そういうものなのか?」


「うん。それでさ、ニコちゃんが参加したとき、こっくりさん、来たよね」


 クロが言っているのは、こっくりさんに村山先生について訊いた時のことだ。

 その時は、始めにカイ、シロ、クロの3人で呪文を唱えたが、こっくりさんは来なかった。

 しかし、シロに代わりニコが入って呪文を唱えると、こっくりさんを呼び出すことに成功した。


「今のところ僕たちは、ニコちゃんがいないとこっくりさんができないわけだね」


「………」


 トウがニコの提案で、こっくりさんをした時も成功した。

 ニコには不思議な力があるということなのだろうか。

 思えば心当たりがいくつもあった。


「こっくりさんに限ったことじゃない。あいつには見えるらしい。俺達には見えないものが」


「見えないもの?」


 ニコがトウの家に来たときのことを話す。

 コンビニでジュースと菓子を買って帰ってくると、ニコがトウの部屋で虚空に向かって会話していたのだ。

 後から聞けば、トウの家の守護神であるヤモリと会話をしていたという。


「なるほどね。ニコちゃんには霊感があるのかな?見えもするし、引き寄せる体質なのかも」


「見えるのは解るが、引き寄せる?」


「こっくりさんを呼ぶには、引き寄せちゃう子がいる必要があるってことだよ。特殊な人っていうのは、そういう子」


 こっくりさんについて腑に落ちないところがあったため、トウは少しスッキリした。


「まぁでも、油断はできないね」


「何?」


「霊感がある子の中にはね、霊に魅入られて連れて行かれちゃう子もいるんだ。ニコちゃんもそうなっちゃうかもね」


 一緒にいて初めて知った。

 ニコは常に霊から命を狙われているのだという。


「君がしっかり守ってあげないとね」


「……関係ない」


「え?」


 トウはそっぽを向いて応えた。

 今のところ、ニコはトウにとって厄介者でしかなかった。


「迷惑なんだよな。あぁやって幼児みてぇに付き纏われて……。おかげでいろんな奴らに冷やかされる。俺はあいつが嫌いだ。本当に同い年かよ……。俺は平穏に過ごしたいだけだ」


「フ~ン……」


 今のをトウの会話をニコが聞いていれば、間違いなく泣き出しているだろう。

 全ての女性を大切にするのが心情のクロだが、この時はニヤニヤと笑っていた。


「そういうこと言うんだ。だけどさぁ、トウ君。キミ、もしニコちゃんが危険な目に遭っていたら、放っておく勇気はあるのかい?」


「何だと?」


「おっと、僕はこっちだ。それじゃあまたね~」


 クロは手を振りながら、歩き去って行く。

 街灯の下で、トウは一人残された。


「………知ったことか。どうでもいい」


 トウはそう言って歩き出す。

 明らかに苛立っていた。

『ソウルストーリー』の時と設定変えてるところがいろいろあるんですよね……。

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