表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八百万  作者: マー・TY
第四章
42/115

42.楽しみな話

「─────どうだ?行けそうか?」


 科学準備室。

 自分の耳に受話器を当てた司波は、通話相手であるアオにそう訪ねた。

 アオは残念そうな声色で応える。


「ちょっとまだ……怖いんです。……すみません」


「いや、無理すんな。別に授業とか関係ないしな。しっかり休め。休みすぎたら単位に響くだろうが、まぁ、お前の成績なら問題ないだろう。自習はしてるか?」


「はい、頑張ってます」


「復帰してから授業に着いて来られるようにな。そんじゃあまた、学校でな」


「はい。ありがとうございました」


 通話が切れたのを確認すると、司波は受話器を置いた。

 そして溜息を吐く。


「日之道…………兄と区別つけるためにアオと呼ぶか。アオ救出、村山死亡から5日しか経ってねぇってのに……。簡単に切り替えられるかっての」


 司波は机の上のプリントを手に取った。

 その内容は、隠神高校の行事のひとつである、遠足についてのものだった。




「遠足楽しみだな~」


 そう言ってニコは、満面の笑みでメロンパンに齧りついた。

 遠足のことが待ち遠しいようだ。


「呑気だなお前……」


「見習いたいわ」


 ニコと机をくっつけているシロは呆れ顔をし、コユは苦笑いをしていた。

 今日は教室で昼食を摂っていた。

 アオがいないせいか、どこか物寂しい。


「アオ来れるかなぁ?遠足」


「いや、難しいんじゃねぇか?」


 シロは難しい顔をして応える。


「あの時、アオが病院行くのにカイと付き添ったけどよぉ、あいつ怯えっぱなしで会話どころじゃなかったぞ」


「村山から外が怖くなるように調教されたのよね」


「じゃあ、来られない?」


 ニコはすっかりへこんでしまった。

 アオに受け入れられてから、ニコはアオのことが好きなっていたのだ。

 落ち込むニコの頭を、コユは優しく撫でる。


「そうは言ってないでしょ?放課後アオの顔見に行くわよ。美術部自由だし、行けるでしょ?」


「!!……うん!!!」


 ニコは満面の笑みで頷いた。


「どう育ったらここまで純粋になるんだよ」


 シロは溜息を吐いて呟いた。




 放課後、ニコ、シロ、コユの3人はカイと合流し、日之道家を目指していた。


「アオって今、家で何してるわけ?」


「読書と自習しかしてねぇよ」


「へぇ。偉いわね」


「ずっと部屋の中ってのもなぁ。寧ろ病気になるだろあいつ」


「えぇ!?アオ大丈夫かなぁ!?」


「大丈夫だって。あいつあぁ見えて強いんだぞ」


 他愛もない会話で盛り上がっているうちに、日之道家に到着した。

 カイが家のドアを開ける。


「ただい──!?」


 玄関に、アオが蹲っていた。

 頭を抑えて震えている。

 入ってきたニコ達も驚く。


「アオ!どうしたんだよ!?」


「アオ!」


 リビングの方から、サラが駆け寄ってきた。

 アオを立たせて玄関から遠ざける。


「焦らなくていいの。少しずつ治していかないと」


「うん。……ごめんなさい」


 アオは弱々しい笑みを浮かべて謝った。




 アオの部屋に来た4人は、アオから事情を聞いた。

 どうやら、一人で家から出られる訓練をしていたようだった。


「無茶するわねアンタ」


「ありがとう」


「褒めてないわよ!」


 アオの天然な返しに、コユがツッコむ。

 そんな中、ニコは浮かない顔をしていた。


「どうしたんだ?ニコ」


「アオ、やっばり遠足行けないの?」


 ニコの質問を聞いたアオは、困ったような笑みを浮かべた。


「ごめんね。行きたいんだけど、今のままじゃ、きっとみんな楽しめないよ」


「うゆ……」


「司波先生からも遠足について電話が来て、それで出られるかどうか試したんだけど、やっぱりまだ怖いなぁ……」


「うゆぅ…………」


 ニコはまた落ち込んだ。

 そんなニコを見かねたアオは、ニコを優しく抱き締めた。


「ありがとね、ニコちゃん。私は行けないけど、その代わり、遠足から帰ってきたら、思い出たくさん聞かせてね」


「うゆぅ……」


「遠足は1年生の時だけじゃないよ。来年は一緒に行こう。だからさ、そんな顔しないでよ。私は笑顔のニコちゃんが好きだなぁ」


「うゆ……。うん、わかった」


 ニコは微笑んで応えた。


「よ~し。じゃあ、もっと笑顔になるために、こちょこちょタイムだ~!」


 そう言うとアオは、ニコの体を擽り始めた。


「ニャハハハ!やめて!くすぐったいよ~!」


 ニコは涙を流して笑い転げた。

 そんな様子を見て、3人も釣られて笑った。

ちなみに、アオはニコのことを妹のように思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ