4.幼い話
「アンタさぁ、うざいんだけど」
「うゆ?」
そのやり取りは昼休みの時間、1年2組の教室で起こった。
机をくっつけて昼食を楽しんでいた、クラスの上位層に君臨している女子のグループ全員の目が、1人の小柄な少女に向いている。
「ウチら別にアンタと仲良くなりたいわけじゃないんだけど」
「え……!?」
リーダー格の女子の発言に、小柄童顔の少女は仰天している。
「なんで!?なんでなんで!?ニコ何か悪いことした!?」
手を鳥のようにバタつかせて、一人称が“ニコ”の少女は訊いた。
「まずさぁ、普通にぶりっ子とかウザいんだって。何それ?作ってんの?」
「作ってる?」
ニコは首を傾げた。
その仕草がリーダー格の女子の苛立たせた。
「アンタのそういうところが気に入らないっつってんの!高校生になってガキの真似!?恥ずかしくないわけ!?」
「確かにガキだわw」
「うざーいw」
「どっか行って。ガキが移るw」
今度はリーダー格だけでなく、1人を除いたメンバーたちが責め立てた。
「たがらさぁ、さっさと消えなよ」
「え……で…、でも……」
「消えろって!」
そう言ってリーダー格の女子は、まだジュースが半分入ったペットボトルをニコに投げつけた。
それがニコの頭に当たる。
「う…。うわ~~~~~~~~~~~~~ん!」
ニコは泣きながら教室から出て行った。
「やりすぎよ。アンタたち」
ニコを唯一責め立てなかった女子が、他のメンバーに注意する。
「何?コユ、アンタあいつの肩持つわけ?」
「そんなこと言ってないじゃん。言い方。泣かすことなかったでしょ?」
「いいじゃん別に。あんなのどうでもいいし」
「言えてるw」
そんなグループの態度に、コユと呼ばれた少女は溜息を吐いた。
ニコは決して、ぶりっ子を演じているわけではない。
「可愛く演じれば、守ってもらえるしモテる」なんて発想は、彼女からは出てこない。
これがニコの“素”なのだ。
ニコは、身体的には周りと同じように成長しているが、精神、心は幼い頃から全く成長していないのだ。
その幼さは、小学校低学年くらいまでは通用したが、高学年になってからは、だんだん煙たがられるようになっていった。
ただ、良い意味で言えば“純粋”だ。
ニコはクラスの上位層のグループだけでなく、クラスメイトほぼ全員に話しかけに行っていた。
それはニコの、「みんなと友達になりたい」という願いから来ている。
(ダメなのかなぁ?ニコ、ダメなのかなぁ?みんなと仲良くしたら、ダメなのかなぁ?演じてるって、何?わかんないよぉ…)
ニコはしょんぼりと落ち込んで帰路を歩いていた。
「痛いの痛いの飛んで行けー!」
「うゆ?」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
公園からだった。
ニコは様子を見に行く。
そこには、小学生くらいの少女と、クラスメイトの男女がいた。
女子の方はアオ、男子の方はシロという名前だった筈だ。
「お姉ちゃん、ありがとう」
「うん。絆創膏持ってて良かった」
「もう転ぶなよ」
「うん。ありがとう!」
少女は遊具で待っていた友達のところに駆けていった。
そんなアオとシロを見て、ニコの目がパッと輝いた。
「お弁当、ニコも一緒に食べていい!?」
「え!?……う、うん」
「なんだお前?」
翌日の昼休み。
ニコはアオとシロに声を掛けていた。
勢いに押され気味だったが、アオは了承した。
そして3人で一緒に食べながら話すことになった。
「入学式自己紹介したけど、改めてするね。私、日之道明生。よろしくね」
「冬庭志路だ」
「うん!アオ!シロー!」
「それで……えっと、ニコちゃんって呼んでいいの?」
「うん!」
「あァ?お前そんな名前だったか?」
アオとシロは、“ニコ”という呼び名について疑問に思っていた。
ニコの本名は、七楽色葉という。
「ニコのね、好きな人が付けてくれたの!いつもニコニコしてるからニコ!」
「へぇ…。素敵だね」
そう言ってアオは微笑む。
逆にシロは首を傾げた。
「お前、なんで俺らのところに来た?」
「ニコね、みんなと仲良くなりたいんだけど、みんな、ニコと仲良くしたくないみたいなの」
「だろうな」
「うゆっ!?」
「シロ君!」
「わりぃ……」
「まったくもう…。ニコちゃん、私たちと友達にならない?」
「ふぇ?」
アオの急な提案に、ニコは目を丸くする。
「欲しいんだろ?」
シロもやれやれというような感じで言った。
「ニコでいいの!?」
「私たちで良ければ、歓迎するよ」
「!!!……ありがとーーー!!!!」
ニコは跳んで喜び、アオに抱きついた。
「アハハ。ニコちゃん可愛い」
「騒がしいのが増えたな」
シロが珍しくクスリと笑った。
キャラ紹介
ニコ
本名 七楽 色葉
性別 女
学年 高1
誕生日 2月21日
趣味 お絵描き
好きな食べ物 プリン
嫌いな食べ物 ニンジン
明るく無邪気で天真爛漫。
精神が幼児のときより成長していない。
普通誰も気づかないようなことを察知できる鋭さを持つ。
絵の腕はピカイチ。




