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八百万  作者: マー・TY
第三章
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38.無力な話

 翌日の朝、カイ、シロ、トウ、ニコ、コユ、ショウ、クロの7人は、1年1組の教室に集合していた。

 カイが全員に、昨日ガレンから聞いた情報を話した。


「アオの誘拐と、4人の女の子が行方不明って、何か関係ありそうね。……アオ、大丈夫かしら」


 コユは不安に思った。

 クロも険しい顔をする。


「人間にこっくりさんから自分の情報を守れるとは思えない。……その4人はもう亡くなっているかも……」


「なっ!?……おい、その4人を攫ったのが村山なら、アオも危ねぇじゃねぇか!」


「アオちゃんの居場所が解れば、後はもう助けに行くだけなんだけどね。こっくりさんにはもう、アオちゃんの安否しか訊くことがないかも。ニコちゃん、儀式の紙はあるかい?」


「あるよ!」


 再びこっくりさんを呼び、アオの安否を確認する。

 今の時点では、アオは生きているようだった。


「生死は解るのになんで居場所は解らねぇんだ?」


「何でだろうね?」


 クロは考え始めた。

 ホームルームが始まる時間帯になり、話の続きは昼休みになった。




 昼休み、7人は再び1組に集まり、昼食を摂った。

 そしてクロが、自分の考えを持ち出した。


「思ったんだけどさ、もっと単純に訊けば良かったんだと思う」


「どういうことだ?」


 カイが首を傾げる。


「こっくりさんを通して、犯人は村山先生ということが解ってるんだ。なら単純に、村山先生の家がどこにあるか訊けば良かったのかも」


「でも、本当にそこにアオがいるっていう保証もないでしょ?」


「だから訊くんだよ」


 机の上に、儀式の用紙と、その鳥居に10円玉を置く。

 クロの指示で、カイ、シロ、ニコの3人が、10円玉に人差し指を置いた。

 呪文を唱え、こっくりさんを呼び出す。

 そして、クロの言うとおりに質問をした。


「こっくりさんこっくりさん、村山先生の家はどこですか」


 10円玉はゆっくりと動き出す。

 そして五十音に向かい、その上をデタラメに走り回った。

 そしてしばらくすると、10円玉は鳥居に戻る。

 アオの居場所を訊いたときと似た反応だった。


「結局解らないのかよ!」


「いや、反応としては同じなんだ。アオちゃんが村山先生の家にいると考えてもいいかも」


 その後、7人はそれぞれアイデアを出し、次の行動を決めた。




「私の家に……ですか?」


「はい」


 放課後、カイ、トウ、ショウ、クロの4人は、職員室で仕事をしていた村山の元にいた。

 4人は、村山の家に遊びに行きたい、という頼みを持ち出した。


「ふむ………。私の家に来ても面白いものは何もありませんよ」


「そんなこと言わずに。僕は教師志望でして、村山先生には憧れているんですよ。それで、先生がどのような環境で生活なされているのか、拝見したいんですよ」


 目を輝かせて話すクロ。

 村山は苦笑して言った。


「プライベートなことですからね。あんまり見せたくはないですね」


「えぇ~?いいだろ?」


「良くないんですよカイ君。世の中には他人に自宅を見られたくないという人間がいまして、私もその一人です。私に憧れているのなら、そこのところを解ってもらえませんか?」


 村山は微笑みながら、カイ達を説得する。

 ここでクロが、村山を揺さぶりに出た。


「見せられない理由があるんじゃないですか?」


「はい?」


 村山の眉がピクリと動く。

 クロは小声で続けた。


「行方不明の日之道明生さんは、実は先生が攫ったんじゃないですか?」


「………何のことだか」


「コラコラ君たち、村山先生は忙しいんだ。邪魔するなら帰りなさい」


 4人と村山の間に、教頭が割って入った。


「そうですね。すみません、お邪魔しました」


 これ以上何も聞き出せないと判断し、4人は職員室を出た。

 村山と教頭は、それを見送る。


「まったく、近頃の1年ときたら……。村山先生も、怒る時には怒っていいんですよ」


「すみません。私の指導不足です」


 村山は微笑みながらも、ペコペコと頭を下げて謝った。

 教頭が去ると、村山は仕事の続きをしようと、デスクに戻る。


(なかなか鋭いですね……。おもしろい……)

 

 パソコンのキーボードを打ちながら、冷や汗を掻いていた。




 一方、シロ、ニコ、コユの3人は、担任の司波から話を訊くために、科学準備室に来ていた。


「村山の家?」


「あぁ、先生なら知ってるんじゃねぇかと」


「……ちょっと待て、お前ら何調べてるんだ?」


 コユがここまでの経緯を司波に説明する。

 司波は溜息を吐いた。


「手を出すなと言ったはずだが……。まぁ、お前らをそうさせる俺達も悪いんだろうな」


「でも先生、アオのこと、と~っても心配してるんでしょ?ニコわかるよ!授業中たまに上の空だもん!」


「確かに。なんかボケーッてしてることあるわね」


 ニコとコユが、悪戯っぽく笑った。

 シロと司波も、釣られて笑う。


「そうか、お前らにはそう見えてんだな」


「まぁな」


「そうか……。さてと、本題に入るが……」


 笑いから一変し、司波は深刻そうな顔をして、腕を組む。


「申し訳ないが、俺はあいつん家知らねぇんだ」


「は?たまに一緒にいることあるだろ?」


「確かに飲みに行くことはあるけどな、そんな友達感覚じゃねぇんだよ」


「じゃあ、学校に村山先生の資料とかないの?」


「確認できればいいんだがな……。数年前にそれが原因で教師同士のいざこざがあって、それ以来見れねぇ。教頭が管理しているが、頼んでも見せてもらえないだろう。しかもあの人、村山に信頼寄せてるもんなぁ」


「チッ、それが解りゃなぁ」


 苛立ったシロは机を叩いた。

 そんな様子を見て、司波は続けて言う。


「お前ら生徒の安全を守るのは教師の義務だが、何言っても通じなさそうだしな。今後何かあれば教えてくれ。俺も解ったことはお前らに話すつもりでいる」


「先生ありがとー!」


 3人は司波に礼をいい、科学準備室を出た。

 放課後は二手に分かれたが、どちらも有力な情報を聞き出せないまま、この日は解散となった。




 時刻は夜の9時頃。

 村山は家の門の前に、人影が立っているのに気づいた。


「こんばんは。村山直人さんですね?」


「はい。……あなたは?」


「隠神警察署特務課の日之道雅蓮と申します」


 ガレンは警察手帳を村山に見せた。


「日之道明生さん、……私の娘なんですがね、その娘が行方不明になっているという事件はご存じですよね?」 


「えぇ。ウチの生徒ですからね」


「それでですね。ウチの者達はあなたのことを捜査から外しているようなんですが、私はどうも気になりましてね……。夜分に申し訳ないのですが、家の中を見せていただくことってできませんかね?」


「………」


 家宅捜索の申し出だった。

 村山は少し考えた。

 そして優しく微笑みながら、了承した。


「いいでしょう。お上がりください」


「そうですか。では遠慮なく」


 村山は鍵を開け、ガレンを中に招き入れた。

 鍵穴が2箇所あることに違和感を覚えたが、ガレンは村山の家に上がった。


「なかなか広そうですねぇ」


「いやぁ、……私、少しばかし育ちがいいもので。この家も両親から譲り受けまして」


「へぇ。お金持ちなんですね」


 他愛もない会話をしながら、ガレンを先頭に2人は進んでいく。

 そしてガレンは、リビングへのドアを開けた。


「なっ……!?」


 ガレンは言葉を失った。

 リビングには、白いワンピースを着た体中痣だらけのアオが、まるでガレンを待っていたかのように、椅子に座っていた。

 顔を上げたアオは、ガレンを見て驚く。


「パパ……?」


「アオ、お前……その姿────」


 すっかりアオに気を取られていたガレンの体に、激しい電流が走った。

 村山が背後からスタンガンを当てていた。

 そして十分に痺れさせたと判断すると、村山はスタンガンを離した。

 ガレンはその場に倒れた。


「…………!」


 アオは椅子に座ったまま、震えていた。


「大丈夫。気絶しただけですよ。それよりアオさん、ちゃんとお家にいられたんですね。偉いですよ」


 村山はアオの頭を撫でた。

 頭を触れられる際、アオの肩がビクリと反応した。


「あ……ありが…とう……ございます……」


「おや?元気がないですね」


 村山はアオの横腹にスタンガンを当てた。


「───────ッ!!!!」


 ガレンに当てた時より威力は抑えられ、当てられている時間は短かったが、アオにとっては激痛だった。

 アオは椅子から転げ落ち、悶え苦しむ。


「おや、元気出ましたか」


 村山は愉しそうに笑うと、アオの体を、髪を引っ張って起こした。


「それではまず、この人を拘束します。その後に夕食にしましょう。デザートにあなたの大好きなみかんのゼリーを買ってきましたよ。楽しみにしていてくださいね」


「はい……」


 アオは頷くと、村山の部屋に行き、引き出しから手錠を取り出した。

 今のアオは、村山に従うことしかできない。

こっくりさんの最中に10円玉から指を離すと、その人が呪われたっていう話を聞いたことがあるんですよね。

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