35.動き出す話
「そんじゃあ、行ってくる」
「カイ、……気をつけてね。いってらっしゃい」
すっかり窶れてしまったサラに見送られ、カイは玄関から外に出た。
いつものように学校に向かう。
いつもと変わらない日常。
その中に、アオだけがいなかった。
「はぁ……なんであいつがいないのに早起きできたんだ?俺は」
カイはいつもアオに起こされている。
時にはなかなか目覚めず、諦めたアオに置いてかれることもあった。
「………俺にできることねぇかなぁ?」
青空を見つめて、カイはそう呟いた。
学校に着いてもいつもと変わらなかった。
クラスメイトからの挨拶を返しながら、カイは教室に向かった。
「ん?」
いつもなら既に教室にいるトウとショウがいなかった。
それ程までに早く来てしまったようだった。
「ハハハ。あいつらどんな顔するかなぁ」
ケタケタと笑いながら自分の席に着く。
しかし、2人がいないホームルームまでの時間を退屈だった。
カイは机に突っ伏した。
「………シロ達は来てんのかな?……アオのこと話すべきだよな。あいつらアオの友達だし」
そう言うとカイは、2組に行くために席を立とうとした。
その時、
「カイ……」
「ん?」
机に座るカイの目の前に、シロが立っていた。
「シロ!丁度良かった、お前に言わなきゃならないことが────」
「すまん!!!」
“ドン”と、鈍い音が鳴り響く。
シロが床に頭を付ける音だった。
咄嗟のことに、カイは驚く。
「何だ!?」
「あれ、シロよね?この辺じゃ最強っていう」
「なんでカイに土下座してるんだ!?」
1組にいる生徒も、全員シロとカイに注目していた。
「おい!やめろよシロ!頭上げろ!」
カイはしゃがんで、シロの顔を床から無理矢理引き剥がした。
シロの体は震えていた。
「何かあったのか!?」
「俺が……俺がいながらアオは……」
「アオのこと知ってるのか!?」
「俺のせいだ……。俺がすぐ横にいたのに、あいつは………」
「シロ……!お前昨日アオと一緒だったのか!?何があったんだ!?」
カイは空き教室にシロを引っ張って来た。
そこでシロから、昨日あった出来事を聞いた。
「そうか。……そんなことが……」
「すまないカイ。あいつが攫われたのは……俺のせいだ……」
シロの顔は珍しく青ざめていた。
カイはまるで、昨日の自分を見ているようだった。
「自分を責めるなよ」
カイはシロに、ニッと笑って見せた。
「アオはさ、今まで友達らしい奴がいたことないんだ。でも、お前はアオの友達になってくれたよな?」
「………」
「それでさ、晩飯の時とか、あいつ全然喋らなかったのに、入学式くらいの時だったかな?あいつなんだか明るくなったんだよ。それでな、お前の話をする時が一番楽しそうなんだ」
「アオ……」
シロは入学式の時の、アオとの出会いを思い返していた。
アオの勇気ある発言は、今も鮮明だ。
「お前はアオのためによくやってるよ。あいつの友達になってくれて、ありがとな」
「…………う”ぅ”!」
シロは右手で目を覆った。
「なんだ?泣いてんのかよ?」
「泣いてねェ………」
「ハハハ!そうか!………それでさぁシロ。俺、父ちゃんから下手に手を出すなって言われたんだけどな、やっぱ無理なんだよな。妹が何されてるかわからねぇってのに、じっとしてやれないんだよ。だから───────」
ホームルームではアオが誘拐されたことについて話され、2時限目の時間に警察が来て、何人かの生徒からアオについての話を訊き、帰っていった。
そして昼休みの屋上に、カイ、シロ、トウ、ショウ、コユ、ニコの6人が集まった。
シロが再び、アオ誘拐の経緯を全員に話した。
「車のナンバーは見れなかった?」
「いや……目がぼやけちまって」
「何してたんだお前は」
「くっ……!」
「そう責めるなよ!シロはアオを庇ったんだろう!」
シロを責めるトウを、ショウが諭す。
ニコは涙目になっており、コユは俯いていた。
空気が重くなっているところに、カイは言う。
「なぁ!俺達ならアオを助けるために、何かできると思うんだ!俺は何もしないのが嫌だ!アオを迎えに行きてェ!」
シロは頷いたが、コユは不安そうだった。
「そんなことして大丈夫なの?もしアオにこれ以上の危険が及んだら……」
「いや、やらなくて後悔するより、やって後悔する方がいいな。僕は」
屋上の扉が空き、クロが入ってきた。
そのままカイ達の元に向かい、シロの横に座った。
「誰だお前?」
「クロって奴だ。アオの読書仲間らしい」
「紹介ありがとう。シロ君」
クロは爽やかに微笑んだ。
笑みを絶やさずに、そのまま続ける。
「僕もこの手でアオちゃんを救いたい。仲間に入れてくれないかな?」
「あぁ、いいぞ」
カイはあっさりクロを招き入れた。
「はぁ………。確かにそうね。あたし、アオに助けられたことがあるし、今度は助ける側にならないとね」
「うおぉ!俺もやってやる!」
「ニコも!ニコもアオ助けたい!」
「やるか。友のピンチだしな」
「おぉ!みんなありがとな!」
クロに続いて、コユ、ショウ、ニコ、トウも、アオの救出に賛成した。
これで7人全員の意見が一致した。
早速クロが口を開く。
「誘拐の経緯は昨日、シロ君に聞かせてもらったよ。他に何か手がかりはないかな?」
「はぁ……。やっぱりそこよね」
「はい!」
ニコが勢いよく手を挙げた。
「こっくりさんが言ってた!村山先生がアオを手に入れるって!」
「あぁ、……それか」
「どういうことかな?」
「以前ニコとこっくりさんをしたことがあってな。それで、村山先生の今後の行動を訊いた。そしたら10円玉が、“あおをてにいれる”の順で動いた」
「お、おい!それが本当なら、もう犯人解ってんじゃねぇか!?」
ショウが一人、驚愕している。
クロは何やら考えこんでいる。
「犯人は先生なんだな!?じゃあ今すぐ──!」
「待ちなよ」
今にも走りだそうとしているカイを、クロは制止させた。
「何だよ!?」
「何て説明するつもりだい?『こっくりさんが、村山先生が犯人と言ってたいました』とでも言うつもりかな?」
「それがどうしたんだよ!?」
「馬鹿馬鹿しいと言われて、一蹴されるのがオチだと思うよ」
「うゆ……。ニコ、おまわりさんにこっくりさんのこと言ったら、笑われた」
そう言って、ニコはしゅんとする。
クロはニヤリと笑い、立ち上がって言った。
「文字通り、僕達で動こう。僕達のやり方で、アオちゃんを助けるんだ」
探偵ものっぽくなるのかな?そういうの苦手ですが、頑張ります。




