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八百万  作者: マー・TY
第三章
35/115

35.動き出す話

「そんじゃあ、行ってくる」


「カイ、……気をつけてね。いってらっしゃい」


 すっかり窶れてしまったサラに見送られ、カイは玄関から外に出た。

 いつものように学校に向かう。

 いつもと変わらない日常。

 その中に、アオだけがいなかった。


「はぁ……なんであいつがいないのに早起きできたんだ?俺は」


 カイはいつもアオに起こされている。

 時にはなかなか目覚めず、諦めたアオに置いてかれることもあった。


「………俺にできることねぇかなぁ?」


 青空を見つめて、カイはそう呟いた。




 学校に着いてもいつもと変わらなかった。

 クラスメイトからの挨拶を返しながら、カイは教室に向かった。


「ん?」


 いつもなら既に教室にいるトウとショウがいなかった。

 それ程までに早く来てしまったようだった。


「ハハハ。あいつらどんな顔するかなぁ」


 ケタケタと笑いながら自分の席に着く。

 しかし、2人がいないホームルームまでの時間を退屈だった。

 カイは机に突っ伏した。


「………シロ達は来てんのかな?……アオのこと話すべきだよな。あいつらアオの友達だし」


 そう言うとカイは、2組に行くために席を立とうとした。

 その時、


「カイ……」


「ん?」


 机に座るカイの目の前に、シロが立っていた。


「シロ!丁度良かった、お前に言わなきゃならないことが────」


「すまん!!!」


 “ドン”と、鈍い音が鳴り響く。

 シロが床に頭を付ける音だった。

 咄嗟のことに、カイは驚く。


「何だ!?」


「あれ、シロよね?この辺じゃ最強っていう」


「なんでカイに土下座してるんだ!?」


 1組にいる生徒も、全員シロとカイに注目していた。


「おい!やめろよシロ!頭上げろ!」


 カイはしゃがんで、シロの顔を床から無理矢理引き剥がした。

 シロの体は震えていた。


「何かあったのか!?」


「俺が……俺がいながらアオは……」


「アオのこと知ってるのか!?」


「俺のせいだ……。俺がすぐ横にいたのに、あいつは………」


「シロ……!お前昨日アオと一緒だったのか!?何があったんだ!?」




 カイは空き教室にシロを引っ張って来た。

 そこでシロから、昨日あった出来事を聞いた。


「そうか。……そんなことが……」


「すまないカイ。あいつが攫われたのは……俺のせいだ……」


 シロの顔は珍しく青ざめていた。

 カイはまるで、昨日の自分を見ているようだった。


「自分を責めるなよ」


 カイはシロに、ニッと笑って見せた。


「アオはさ、今まで友達らしい奴がいたことないんだ。でも、お前はアオの友達になってくれたよな?」


「………」


「それでさ、晩飯の時とか、あいつ全然喋らなかったのに、入学式くらいの時だったかな?あいつなんだか明るくなったんだよ。それでな、お前の話をする時が一番楽しそうなんだ」


「アオ……」


 シロは入学式の時の、アオとの出会いを思い返していた。

 アオの勇気ある発言は、今も鮮明だ。


「お前はアオのためによくやってるよ。あいつの友達になってくれて、ありがとな」


「…………う”ぅ”!」


 シロは右手で目を覆った。


「なんだ?泣いてんのかよ?」


「泣いてねェ………」


「ハハハ!そうか!………それでさぁシロ。俺、父ちゃんから下手に手を出すなって言われたんだけどな、やっぱ無理なんだよな。妹が何されてるかわからねぇってのに、じっとしてやれないんだよ。だから───────」




 ホームルームではアオが誘拐されたことについて話され、2時限目の時間に警察が来て、何人かの生徒からアオについての話を訊き、帰っていった。

 そして昼休みの屋上に、カイ、シロ、トウ、ショウ、コユ、ニコの6人が集まった。

 シロが再び、アオ誘拐の経緯を全員に話した。


「車のナンバーは見れなかった?」


「いや……目がぼやけちまって」


「何してたんだお前は」


「くっ……!」


「そう責めるなよ!シロはアオを庇ったんだろう!」


 シロを責めるトウを、ショウが諭す。

 ニコは涙目になっており、コユは俯いていた。

 空気が重くなっているところに、カイは言う。


「なぁ!俺達ならアオを助けるために、何かできると思うんだ!俺は何もしないのが嫌だ!アオを迎えに行きてェ!」


 シロは頷いたが、コユは不安そうだった。


「そんなことして大丈夫なの?もしアオにこれ以上の危険が及んだら……」


「いや、やらなくて後悔するより、やって後悔する方がいいな。僕は」


 屋上の扉が空き、クロが入ってきた。

 そのままカイ達の元に向かい、シロの横に座った。


「誰だお前?」


「クロって奴だ。アオの読書仲間らしい」


「紹介ありがとう。シロ君」


 クロは爽やかに微笑んだ。

 笑みを絶やさずに、そのまま続ける。


「僕もこの手でアオちゃんを救いたい。仲間に入れてくれないかな?」


「あぁ、いいぞ」


 カイはあっさりクロを招き入れた。


「はぁ………。確かにそうね。あたし、アオに助けられたことがあるし、今度は助ける側にならないとね」


「うおぉ!俺もやってやる!」


「ニコも!ニコもアオ助けたい!」


「やるか。友のピンチだしな」


「おぉ!みんなありがとな!」


 クロに続いて、コユ、ショウ、ニコ、トウも、アオの救出に賛成した。

 これで7人全員の意見が一致した。

 早速クロが口を開く。


「誘拐の経緯は昨日、シロ君に聞かせてもらったよ。他に何か手がかりはないかな?」


「はぁ……。やっぱりそこよね」


「はい!」


 ニコが勢いよく手を挙げた。


「こっくりさんが言ってた!村山先生がアオを手に入れるって!」


「あぁ、……それか」


「どういうことかな?」


「以前ニコとこっくりさんをしたことがあってな。それで、村山先生の今後の行動を訊いた。そしたら10円玉が、“あおをてにいれる”の順で動いた」


「お、おい!それが本当なら、もう犯人解ってんじゃねぇか!?」


 ショウが一人、驚愕している。

 クロは何やら考えこんでいる。


「犯人は先生なんだな!?じゃあ今すぐ──!」


「待ちなよ」


 今にも走りだそうとしているカイを、クロは制止させた。


「何だよ!?」


「何て説明するつもりだい?『こっくりさんが、村山先生が犯人と言ってたいました』とでも言うつもりかな?」


「それがどうしたんだよ!?」


「馬鹿馬鹿しいと言われて、一蹴されるのがオチだと思うよ」


「うゆ……。ニコ、おまわりさんにこっくりさんのこと言ったら、笑われた」


 そう言って、ニコはしゅんとする。

 クロはニヤリと笑い、立ち上がって言った。


「文字通り、僕達で動こう。僕達のやり方で、アオちゃんを助けるんだ」

探偵ものっぽくなるのかな?そういうの苦手ですが、頑張ります。

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