34.探索の話
「…………んっ」
暗い部屋の中で、アオは目を覚ました。
体を起こすと、自分がベッドの上にいることがわかった。
(私の部屋?……じゃないよね。………ここ、どこだろう?私は……………あ、……そうだ)
アオはここまでの経緯を振り返った。
シロと下校中、横から黒い車が接近。
そこから突き出されたスタンガンを、自身を庇ったシロが受ける。
そして倒れたシロの体を起こそうしたところで体中に激痛が走った。
アオはそこまでしか覚えていない。
(………私もスタンガンを当てられたんだ。じゃあここ、黒い車の人の家?)
アオは自分が誘拐されたことに気づくのに、そこまで時間が掛からなかった。
(……この部屋は寝室かな?普通の家の中のように思えるけど。………シロ君もここにいるのかな?)
アオは考えを巡らせた。
シロがアオを庇ったということは、元々スタンガンはアオに向けられたものだ。
誘拐犯の目的がアオなら、シロもまた巻き込まれるという形で捕まっているだろう。
誘拐犯が気絶したシロを放っておくとも思えなかった。
(………いや、それとも私が巻き込まれた?)
シロには敵が多いように思えた。
今までシロに喧嘩で敗れた者の犯行と考えてもおかしくなかった。
アオを狙ったのは、喧嘩でシロを戦いにくくするためだろう。
あるいはシロがアオを庇うことを読んだのか。
(シロ君の行動を読んだとしたら、誘拐犯はシロ君のことをよく知っている人?)
そこまでいったところで、アオは考えるのを一旦中止した。
(やめよう。まずこの状況をなんとかしないと。拘束されてないし、このまま逃げ出せるかも)
アオはベッドから立ち上がった。
そこで少し違和感に気づく。
(あれ?……スカートが長いような……。それに、肩がスースーする)
アオは手を伝いながら、壁を調べた。
ザラザラした壁に、ツルツルした出っ張りを見つけた。
(あった、電気)
アオはスイッチを押し、部屋の灯りを点けた。
灯りを点けるスイッチの左に、この部屋のドア、そしてさらに左には鏡が置かれており、アオの姿を写し出していた。
「えっ………!?」
鏡に写る自分を見て、アオは驚く。
自分は制服のまま眠っていたとばかり思っていた。
しかしアオは今制服ではなく、白いワンピースを着ていた。
「私、何で、……こんな格好…………見られた!?」
アオの体が震え出す。
誘拐犯に着替えさせられたのだろう。
アオは部屋を見渡した。
勉強机に、セーラー服が置かれているのを見つけた。
隠神高校女子生徒の制服だ。
「ッ!」
アオは白いワンピースを脱ぎ、机の上の制服に着替えた。
ワンピースは気味が悪かったのだ。
「はぁ……はぁ……。早く、脱出しないと」
アオは次に、カーテンに目を付けた。
開けると庭が見えた。
庭から脱出できると思い、窓を開けようとするが、鍵が固定されていて開けられなかった。
割ろうかと思ったが、大きな音を出して誘拐犯に気づかれるリスクを恐れ、できなかった。
次に壁に掛けられている時計を見た。
時刻は午前1時を過ぎていた。
「………私、8時間くらい寝てたんだ」
その後も部屋の中を調べるが、使えそうなものは出てこなかった。
「…………」
アオはドアを見つめた。
今までこの部屋を調べ続けていたのは、この部屋の外が怖かったからだ。
この部屋はこの一軒家の一部に過ぎない。
残りの部屋は得体が知れなかった。
しかし、いつまでもここに留まっている訳にはいかない。
アオはドアノブを回した。
ドアは簡単に開いた。
恐る恐る部屋から顔を出してみる。
廊下は暗く、灯りは点いていなかった。
それに、静か過ぎて人の気配を感じ取れない。
(寝てるのかな?)
思えばアオが部屋の中を探索している最中も、誰も来なかった。
アオは念の為部屋の灯りを消し、廊下に出た。
足音を立てぬよう、気をつけながら歩く。
居間に着いたところで、窓を開けようとした。
やはり固定されていて、開かない。
アオは居間を出て、廊下を歩いていき、玄関に辿り着いた。
鍵を開けて外に出ようとしたが、何故かそれもできなかった。
「なんで、開かないの?」
「もうひとつ鍵があるんですよ」
背後から声がした。
アオが振り返るよりも早く、背後の男はアオの腹部に手を回し、口を押さえた。
「──────!!!」
アオは手を振り解こうとするが、抵抗虚しく、元の部屋に連れていかれた。
男はアオをベッドに突き飛ばすと、部屋の灯りを点けた。
「!?」
アオは驚愕した。
目の前にいたのは、村山だった。
「深夜徘徊なんて関心しませんねぇ。アオさん」
「村山先生!?」
村山はニヤリと笑った。
アオを助け出した時の笑顔とは、まるで違った。
「私を誘拐したのは、先生なんですか?」
「はい」
「どうしてですか!?お家に帰してください!」
「できませんねぇ」
そう言いながら村山は、アオに接近する。
「私、あなたと接していくにつれて、どんどんあなたに夢中になっていってしまいましてね。あなたが美しすぎて、自分のものにしたいくらいにね………。」
怯えるアオの顔がよく見える位置まで近づくと、村山はアオの顔を舐めた。
「ヒッ!」
「なので美しいあなたが誰かに汚されてしまう前に、あなたを手に入れることにしたのですよ。アオさん」
「ッ!」
アオは村山の腹を蹴った。
村山はアオから少し離れた。
「私は、物じゃありません!」
「……フフ。フフフ。……気が強いところもあるんですねぇ」
村山はポケットからスタンガンを出すと、それを起動させてアオの脚に当てた。
「きゃあアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
アオの悲鳴と電気が弾ける音が部屋中に響く。
しばらく電気を浴びせたところで、村山はスタンガンを退いた。
満身創痍のアオに話を続ける。
「このスタンガンは夕方の頃より電気が弱くてですね、簡単に気絶できないようになってるんです。今のは私を蹴った罰です」
「はぁ、はぁ、……ば……つ…………?」
「はい。今のままではアオさんは、私と暮らしていけません。そこで、少しずつ罰を与えながら慣れていただこうと思います。そして罰はこれ以外にもう2つ」
村山は懐から紐を取り出した。
「私の家から出ようとしたことへの罰が一つ、そして、私がせっかく着せてあげた服を着替えてしまったことへの罰が一つ。アオさんになら似合うと思ったんですがねぇ。あなたの制服、処分するべきでした」
「い………いやっ………」
アオの目から涙が溢れた。
「村山……先生…………。言ったじゃ…ないですか………信用して、……いいって」
「えぇ、信用してください。これからは私が、あなたの主なんですから。ではまず、罰を受けましょうね」
村山はそう言いながら、残酷な笑みでアオの首に紐を結んだ。
これを書いてるとき、フリーゲームでも作っているような感じでした。




