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八百万  作者: マー・TY
第三章
32/115

32.崩される話

「おしまい」


 放課後の教室で、アオは本を閉じてそう呟いた。

 心臓が早鐘を打っている。

 その本はクロに薦められたもので、それ程までに興奮させられるものだった。


「クロ君っておもしろいの知ってるんだなぁ」


 そう言いながら本を鞄に仕舞う。

 丁度その時、シロが教室に入ってきた。


「あ、シロ君」


「あ?お前汗かいてね?」


「今さっき読み終わった本が刺激的だったんだ。アクションものはあまり読まないんだけど、面白かった」


「そ、そうか……」


「うん。……そうだ、私もう帰るんだけど、シロ君はどうする?」


「俺も帰るところだ。……一緒帰るか?」


「うん!」


 2人は帰り支度を整え、教室を出た。

 今日は曇天で、夕焼けが見えなかった。




「なんか……2人きりで帰るの、久しぶりだね」


 校門を出たところで、アオがそう言った。

 シロは話題に乗る。


「最近じゃ騒がしいのが増えたからな。……ニコとコユは今日どうした?」


「ニコちゃんは美術部の活動で、コユちゃんは絵のモデルを頼まれて美術室にいる」


「カイ達は?」


「カイとショウ君は放課後、教室に残って他の友達と遊んでるみたい。トウ君は剣道部」


「あいつらはあいつらで充実してんのか」


 友人達の様子をアオから聞き、シロは喧嘩ばかりしている自分はそれでいいものかと、少し不安になった。

 それを忘れようと、話題を気になっていることに変える。


「あの夢はまだ見んのか?もう一人のお前が出てくるってやつ」


「あぁ、……まだ見るよ。ネム……」


 アオはまだ、時折ネムの夢を見る。

 しかし何度見ても、その内容は変わることはない。

 アオがネムに何をしようと、ネムは決して目覚めようとしない。


「にしてもつまんねぇ夢だよなぁ。要は寝てるもう一人の自分と小部屋で過ごす夢だろ?ネムって奴は何しても起きねぇのか?」


「うん。私、脇腹弱いから、握ったりくすぐったりもするんだけど……」


「俺だったら殴って起こすな」


「さすがにそこまではしないよ……」


 アオは苦笑した。


「司波先生はネムが自己主張してるとか言ってたけどよぉ、………ホント何がしてぇんだろうな」


「ネムと話してみないと解らないなぁ……」


「………夢の話で思い出したが、村山は最近どうだ?」


「村山先生……?」


 村山はアオがお気に入りのようで、よく話しかけてくる。

 授業の分かりやすさや丁寧な指導から、生徒からの人気は高いが、シロのように警戒している生徒も何人か存在する。


「いつも通り……かな?……私は村山先生を、信用できるよ。この前は危ないところを助けてくれたから」


「危ないところって、何があったんだよ!?」


 アオは歩きながら、その時のことをシロに話した。


「あの3年の先輩が突然狂いだして病院に運ばれたってやつか。その先輩と殺人鬼の喧嘩に居合わせたって……お前………」


「うん………でも、あの殺人鬼さん、……赤狐さんは、私が襲われそうになってたところを助けてくれて、………実はいい人なのかも」


「殺人鬼に良いとかあるかよ。そんで、急な展開で動けなくなってたところを村山に連れ出されたわけか。その後何か変なことされてねぇか?」


「何もされなかった」


「まぁ、それならいいか。………考えすぎだったか?」


 シロはフードの下から頭を掻いた。

 2人が歩く後ろから、黒い軽自動車が近づいてきた。

 その車は、丁度2人の横に止まった。


「?」


 突然窓が開いた。

 そして、そこから突き出されたスタンガンがアオを狙う。


「危ねぇ!」


 シロはアオを突き飛ばした。


「シロ君!?」


「グアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 バチバチと弾ける音と、シロの叫び声が響き渡った。

 弾ける音が止むと同時に、シロはその場に倒れた。


「シロ君!シロ君しっかりして!」


 アオはシロの元に駆け寄り、体を起こそうとしたが、その背中にスタンガンを当てられた。

 再び弾ける音が響き、アオは意識を失い倒れ込んだ。

 車から覆面を被った一人の男が出てきて、アオを抱き上げた。

 男はアオを後部座席に乗せ、運転席に戻った。


「ま………て……………」


 薄れゆく意識の中でシロが最後に見たのは、走り去って行く黒い軽自動車だった。

僕が今までで一番興奮した本は、山田悠介さんの『スピン』です。

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