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八百万  作者: マー・TY
第三章
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31.狂暴化する話

 人気の無い体育館裏に走り着くと、レオンは赤い狐の仮面を外した。


「くっ………。何なんだよあの人」


 レオンはアオが狂暴化した男子生徒に襲われそうになっているところに出会した。

 赤狐となったレオンは、男子生徒と交戦。

 その間にアオは、レオンにとっての要注意人物である村山に手を引かれ、その場を離れた。

 レオンは襲いかかってくる男子生徒を何度もナイフで切りつけたが、勢いは留まらなかった。

 交戦しているうちに、刺叉を持った教師が駆けつけてきた。

 この状況を見て、レオンは逃走。

 そして今に至る。


「見るからに正気じゃなかったな。あの人どうなるんだ?それにあの娘、……アオっていうんだよな。無事なのか……」


 水が流れていない、大きめの排水溝。

 レオンはそこに、赤い狐の仮面、パーカー、ナイフを隠し、教室に戻った。

 放課後になって回収しに来るまでの間に、アオが無事なことと、狂暴化した男子生徒が拘束され、病院に搬送されたことを知った。




 その夜レオンは、わざとぶつかり、骨折を装って治療代を請求してきた男を路地裏に誘い込み、頭を殴って気絶させた。

 その後赤狐になり、ハンマーを駆使して全身の骨を砕き、苦しませながら殺した。

 そしていつものように、人目を避けながら歩いていた。


(奴らからして僕って鴨なんだろうな。そりゃそうか。小さいし、弱そうだし)


 そんなことを思いながら歩いていると、獣のような匂いが赤狐の鼻を刺激した。


(何だ?)


 赤狐から見て左の方は、公園の入り口だった。

 匂いはそこからする。

 赤狐は公園に入っていった。


“グチャッ……クチャクチャ……”


 公園に入ってから、微かに咀嚼音のようなものが聞こえてきた。

 ポケットに手を入れ、いつでもナイフを出せるように構える。

 もし相手が野良犬でも、対処できる自信があった。

 音の主は砂場にいた。

 公園内を照らす数本の街灯で、肌の色を確認できた。


(………人?)


 よく見ると、それは髪が茶色でセミロングの、全裸の女性だった。

 女性は夢中で、毛むくじゃらの動物の肉を貪っている。


(喰われてるのは猫か?何だよあの人……)


 危険だと判断した赤狐は、ゆっくりと後退った。

 その時、不運にも木の枝を踏んでしまい、ポキリと音を出してしまった。


(しまった!あの人に集中しすぎた……)


 音に気づいた女性が、その血走った目を赤狐に向けた。

 血で汚れた歯を剥き出しにし、赤狐を威嚇し始める。

 赤狐は走ってその場を離れた。




 翌日の放課後、レオンは昨夜来た公園を訪れていた。


(昨夜ここにいたあの女性、昨日狂暴化したウチの学校の生徒と似ていた)


 人が狂暴化する理由が気になり、ひとまずここに来たのだった。

 公園では何人かの子供が遊んでおり、昨夜のようなことがあったとは思えない。

 砂場に来てみると、猫の死体は無くなっていた。

 さすがに回収されたのだろう。

 レオンは公園内を、隈無く歩き回った。


「?」


 1本の木を見上げた時に、その光景に気づいた。

 そこにはスズメやネズミ等の小動物が、枝に何匹も突き刺さっていた。


(何だよこれ……。こんな風に獲物を保存する鳥がいるって聞いたことがあるけど、流石にそんな風には……) 


「ヒサルキだよ」


 背後からの声に、レオンは振り向く。

 小学校特有の赤白帽子を被った小さな女の子が、真顔でレオンを見上げていた。


「………何?」


「ヒサルキだよ。あれやったの」


 女の子は木の上を指さして言った。

 この子は何か知っていると踏んだレオンは、しゃがんで女の子に視線を合わせた。


「ヒサルキって、何かな?」


 できるだけ優しい声を出す。

 しかし、女の子は答えることができなかった。


「お兄ちゃんに教えてくれない?ヒサルキって何?」


 もう一度訊いても同じだった。

 女の子は戸惑っている。


(説明できないのか?あるいは誰かに口止めされているのか……。何にしても、これ以上訊いても無駄かもな)


 レオンは女の子にお礼を言うと、近くにあったベンチに座り、スマホでヒサルキについて調べた。

 怪談等から、ヒサルキは動物を狂暴化させる憑き物であることがわかった。


(昨日のあの生徒も、ヒサルキに取り憑かれていた可能性が高いな。そしてあの女性も、特徴と一致する)


 レオンはスマホから、ヒサルキの対処法も知った。




 その夜、赤狐は放課後寄った公園にいた。

 液体が入った瓶を片手に、拓けた場所に立つ。


「グルルル……」


 女性の唸り声が聞こえた。


「来たな」


 四つん這いの女性が、滑り台の陰から姿を現した。

 彼女は昨日の同じ時間、赤狐が遭遇した者と同一人物だった。


「グアアアアアーーーーー!!!!」


 女性は低い体制で立ち上がり、赤狐に襲い掛かった。

 爪での攻撃を難なく躱すと、赤狐は瓶を女性に投げつけた。

 

“ガシャン!!”


「ギィアアアアアーーーー!!!」


 瓶は女性の頭部に命中して割れた。

 中の液体が、女性の身体を濡らす。


「終わりだヒサルキ」


 赤狐はポケットからマッチ箱を取り出した。

 中のマッチを取り出し、火を点ける。

 女性は尚も飛び掛かってきた。

 赤狐はそれを躱し、火の点いたマッチを女性に投げた。

 すると女性の身体を一気に火が包んだ。

 瓶の中の液体は、油だった。


「アアアアアアアアアアアアーーーー!!!!!」


 燃え盛る炎の音の中に、女性のわめき声が響いく。

 火達磨になっているにも関わらず、女性は赤狐を襲うのをやめなかった。


「こうなったら持久戦だ」


 ヒサルキに取り憑かれた動物は痛みを感じず、一種のゾンビ状態になる。

 そうなれば焼き殺すしか方法がないとのことだった。

 そして、これ以上被害を出さないために、赤狐は女性ごとヒサルキを殺す決意をしたのだった。




 肉の焦げる臭いが、辺りに充満する。

 黒焦げになった女性はもう動かず、まだ一部は燃えていた。

 赤狐は死体となった女性に合掌し、頭を下げた。

 パトカーのサイレンが聞こえてきたところで、レオンは公園から走り去った。

今回登場した怪異


ヒサルキ

動物に取り憑き、狂暴化させる一種の憑き物。人間が憑依された場合、犬や猫を襲って生のままで喰らうようになる。また、羞恥心が無くなるらしく、全裸で徘徊するようになる。

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