28.デスゲームの話
「………おや?」
村山は目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。
見たところ、倉庫のようだった。
部屋の中央から右側の壁に、モニターが付けられている。
左手首に手錠がはめられていて、それが壁に固定されていた。
向かい側には同じ状態の、スーツ姿の男性が倒れていた。
見たところ20代くらいだ。
そして2人の手が届かない丁度間の位置に、拳銃が置かれていた。
「う………うぅ………」
気がついたようで、男性は顔を上げた。
「ここは………?」
「おや、お目覚めですか?」
「あなたは……?……!?、何だこれ!?」
男性は左腕に付けられた手錠を見て驚く。
その時、モニターが点いた。
そこに、桃色のウサギのお面を付け、黒い長袖のシャツを着た人物が映し出された。
『ヤッホー。お目覚めかな?お二人さん』
ウサギ面の人物が喋り出した。
変声機でも使っているのか、ヘリウムガスでも吸ったかのような、妙に高い声だった。
『はじめまして。僕はこのゲームのゲームマスターだよ~♪』
「なっ!?」
「ゲーム…ですか」
『そう。ルールを説明するよ~』
男性は思わず身構える。
『まずこの部屋は、お二人のどちらかが死なないと脱出できませ~ん』
「な、何だって!?」
『助かるためには~、相手を殺さないとダメです☆とはいえ、今のお二人の状態では相手を殺すこともできませんよね~?というわけで、この部屋の真ん中に、拳銃を置かせていただきました~』
「拳銃!?………ほ、本物!?」
『もちろん本物で~す。ですが今のお二人の状態では取ることができませんよね~?というわけで、今から60分あげますので、話し合ってくださ~い』
「な、何を!?」
『どちらが拳銃を取って殺すかですよ~?馬鹿ですか~?』
男性の顔が青ざめていく。
『決まったら、殺す方の鎖を解除しま~す。そして、もし60分過ぎても生きているようなら、お二人共死んでもらいま~す☆』
「…………」
『じゃあ、何かあったら呼んでね~☆頑張ってね~☆』
プツンと音がし、モニターが消えた。
男性はガクガクと震えていた。
それとは対照的に、村山はこの状況を受け入れていた。
「60分以内にどちらかが死ななければ、共倒れですか。デスゲームというものですね」
「な、何でそんなに落ち着いてられるんですか!?」
「まぁまぁ落ち着いて。まずは自己紹介といきませんか?私は村山と申します。高校で教師をしております。あなたは?」
「………か、神谷と申します。会社員です」
神谷の声は緊張で震えていた。
村山は柔らかな表情を作り、神谷と話を始めた。
「もうカウントダウンは始まっているのでしょうね。とりあえず、どちらが銃を取るか、ですね」
「は、はい」
「神谷さん、私に取らせてもらえませんか?」
「えっ!?そんな!待ってくださいよ!僕まだ死にたくありません!」
「選ばれた方の鎖が外れれば、銃を取るだけでなく、この部屋を隅々まで調べることができます。2人とも生きて脱出できるかもしれません。まず、私を解放してください」
「そ、それだったら僕でもいいじゃないですか!今会ったばかりのあなたを信用できるわけないじゃないですか!」
「それはお互い様です。しかしどうか、譲ってくれませんか?」
「嫌ですよ!ていうか、なんでこんな状況なのに笑っていられるんですか!?」
「あなたを落ち着かせるためですよ。そして部屋を調べるには、落ち着いている私の方が適任だと思うんですよ」
「いや、そもそも脱出のための手がかりなんてあるんですか!?あなたに調べさせて、もし手がかりが無かったらどうするんですか!?銃を持ってる方が有利じゃないですか!」
「う~ん。どうしましょうか?私としては、そう言う神谷さんも信用できませんし」
「要は銃を取った方に命を預けるわけでしょう!?僕だってあなたに預けられませんよ!」
村山は表情を変えずに考えた。
(う~ん。困りましたねぇ。いくら論で勝ろうが、相手が認めない限りは自由に動けませんし……。難しいものですねぇ)
それから30分が経った。
村山と神谷は相変わらず、話し合いを続けている。
そんな2人の様子を、ゲームマスターは監視カメラを通し、暗い部屋から観ていた。
「脱出の手がかりなんて残してるわけねぇだろw馬鹿だなぁw殺さないと脱出できねぇのにw」
一人椅子に座り、2人を嘲笑う。
「さぁさぁ言い争え!これだから面白ぇwwこういう時ほど人間が出るんだよなぁ!盛り上がる展開頼むぜお二人さんw前回前々回と好評なんだ!このデスゲームは!」
「なるほど。この映像を売って金儲けもできると」
「そういうことwww…………え?」
突然何者かが、自分の独り言に入ってきたことに気づく。
ゲームマスターは後ろを振り向いた。
そこには、赤い狐の仮面を付けた、少し小柄の男が立っていた。
「何だお前!?」
「世間では“赤狐”って呼ばれてるよ」
「赤狐!?………そうか、お前が!」
ゲームマスターは笑い声を上げ、そして拳銃を取り出し、銃口を赤狐に向けた。
「無駄な抵抗するんじゃねぇぞ赤狐!お前には今からゲームに参加してもらう。今話題の殺人鬼が参戦するんだ!こりゃ高値で売れるぜ!」
部屋にゲームマスターの下品な笑い声が響き渡った。
赤狐は黙ったままだった。
「おいどうした?怖じ気づいたか?」
「…………あのさぁ」
「あん?」
「まだ傍観する側でいるつもり?」
「は?」
赤狐はこっそりナイフを取り出し、素早くゲームマスターの手を切り裂いた。
拳銃と、切れた指が宙を舞った。
「う……うわぁーーーーーーー!!!!」
ゲームマスターは椅子から転げ落ち、のたうち回る。
赤狐は落ちた拳銃を拾って言う。
「お前は外を5人の仲間に見張らせてた。僕は5人共殺してここまで来たんだけど、気づかなかった?こんな拳銃向けるだけで僕を従えられるとでも?」
「て………てめぇ………!」
「どうしたの?立てよ。やろうよデスゲーム。僕と、お前の、殺し合い」
赤狐は銃口をゲームマスターに向けた。
「ま、待ってくれ!やめてくれ!悪かった!俺が悪かったよ!そうだ!この映像の稼ぎの9割をやる!だから────」
「命をナメるな」
赤狐は引き金を引いた。
発射された弾がゲームマスターの顔を、ウサギの面ごと貫いた。
「………2人は別の場所。このパソコンで遠隔操作ができるわけか」
赤狐はパソコンを使い、村山と神谷の手錠を外し、入り口も開けた。
『あ、あれ!?外れた!』
『扉も開きましたね』
『どうなってるんでしょうか………』
『さぁ?まぁとにかく、ここを出ましょう』
2人が部屋から出ていくのを、赤狐はカメラ越しに確認した。
(………まさか、村山先生がいるとは。この先生は絶対何かある。……解放してから思ったけど、逃がすべきだったかな……)
赤狐も少し悩みながら、暗い部屋を出た。
解放された村山は、途中神谷と別れ、夜道を歩いていた。
「……フフッ。何があったのかは知りませんが、私はあそこで死ぬ運命ではなかったのですね!」
村山は高らかに笑った。
「どうやら神でさえ、私のあなたへの愛を認めているようです!ねぇ?アオさん!………私、もう我慢できないかもしれません!」
村山はアオに対し、ある決心をした。
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