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八百万  作者: マー・TY
第三章
28/115

28.デスゲームの話

「………おや?」


 村山は目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。

 見たところ、倉庫のようだった。

 部屋の中央から右側の壁に、モニターが付けられている。

 左手首に手錠がはめられていて、それが壁に固定されていた。

 向かい側には同じ状態の、スーツ姿の男性が倒れていた。

 見たところ20代くらいだ。

 そして2人の手が届かない丁度間の位置に、拳銃が置かれていた。


「う………うぅ………」


 気がついたようで、男性は顔を上げた。


「ここは………?」


「おや、お目覚めですか?」


「あなたは……?……!?、何だこれ!?」


 男性は左腕に付けられた手錠を見て驚く。

 その時、モニターが点いた。

 そこに、桃色のウサギのお面を付け、黒い長袖のシャツを着た人物が映し出された。


『ヤッホー。お目覚めかな?お二人さん』


 ウサギ面の人物が喋り出した。

 変声機でも使っているのか、ヘリウムガスでも吸ったかのような、妙に高い声だった。


『はじめまして。僕はこのゲームのゲームマスターだよ~♪』


「なっ!?」


「ゲーム…ですか」


『そう。ルールを説明するよ~』


 男性は思わず身構える。


『まずこの部屋は、お二人のどちらかが死なないと脱出できませ~ん』


「な、何だって!?」


『助かるためには~、相手を殺さないとダメです☆とはいえ、今のお二人の状態では相手を殺すこともできませんよね~?というわけで、この部屋の真ん中に、拳銃を置かせていただきました~』


「拳銃!?………ほ、本物!?」


『もちろん本物で~す。ですが今のお二人の状態では取ることができませんよね~?というわけで、今から60分あげますので、話し合ってくださ~い』


「な、何を!?」


『どちらが拳銃を取って殺すかですよ~?馬鹿ですか~?』


 男性の顔が青ざめていく。


『決まったら、殺す方の鎖を解除しま~す。そして、もし60分過ぎても生きているようなら、お二人共死んでもらいま~す☆』


「…………」


『じゃあ、何かあったら呼んでね~☆頑張ってね~☆』


 プツンと音がし、モニターが消えた。

 男性はガクガクと震えていた。

 それとは対照的に、村山はこの状況を受け入れていた。


「60分以内にどちらかが死ななければ、共倒れですか。デスゲームというものですね」


「な、何でそんなに落ち着いてられるんですか!?」


「まぁまぁ落ち着いて。まずは自己紹介といきませんか?私は村山と申します。高校で教師をしております。あなたは?」


「………か、神谷と申します。会社員です」


 神谷の声は緊張で震えていた。     

 村山は柔らかな表情を作り、神谷と話を始めた。


「もうカウントダウンは始まっているのでしょうね。とりあえず、どちらが銃を取るか、ですね」


「は、はい」


「神谷さん、私に取らせてもらえませんか?」


「えっ!?そんな!待ってくださいよ!僕まだ死にたくありません!」


「選ばれた方の鎖が外れれば、銃を取るだけでなく、この部屋を隅々まで調べることができます。2人とも生きて脱出できるかもしれません。まず、私を解放してください」


「そ、それだったら僕でもいいじゃないですか!今会ったばかりのあなたを信用できるわけないじゃないですか!」


「それはお互い様です。しかしどうか、譲ってくれませんか?」


「嫌ですよ!ていうか、なんでこんな状況なのに笑っていられるんですか!?」


「あなたを落ち着かせるためですよ。そして部屋を調べるには、落ち着いている私の方が適任だと思うんですよ」


「いや、そもそも脱出のための手がかりなんてあるんですか!?あなたに調べさせて、もし手がかりが無かったらどうするんですか!?銃を持ってる方が有利じゃないですか!」


「う~ん。どうしましょうか?私としては、そう言う神谷さんも信用できませんし」


「要は銃を取った方に命を預けるわけでしょう!?僕だってあなたに預けられませんよ!」


 村山は表情を変えずに考えた。


(う~ん。困りましたねぇ。いくら論で勝ろうが、相手が認めない限りは自由に動けませんし……。難しいものですねぇ)




 それから30分が経った。

 村山と神谷は相変わらず、話し合いを続けている。

 そんな2人の様子を、ゲームマスターは監視カメラを通し、暗い部屋から観ていた。


「脱出の手がかりなんて残してるわけねぇだろw馬鹿だなぁw殺さないと脱出できねぇのにw」


 一人椅子に座り、2人を嘲笑う。


「さぁさぁ言い争え!これだから面白ぇwwこういう時ほど人間が出るんだよなぁ!盛り上がる展開頼むぜお二人さんw前回前々回と好評なんだ!このデスゲームは!」


「なるほど。この映像を売って金儲けもできると」


「そういうことwww…………え?」


 突然何者かが、自分の独り言に入ってきたことに気づく。

 ゲームマスターは後ろを振り向いた。

 そこには、赤い狐の仮面を付けた、少し小柄の男が立っていた。


「何だお前!?」


「世間では“赤狐”って呼ばれてるよ」


「赤狐!?………そうか、お前が!」


 ゲームマスターは笑い声を上げ、そして拳銃を取り出し、銃口を赤狐に向けた。


「無駄な抵抗するんじゃねぇぞ赤狐!お前には今からゲームに参加してもらう。今話題の殺人鬼が参戦するんだ!こりゃ高値で売れるぜ!」


 部屋にゲームマスターの下品な笑い声が響き渡った。

 赤狐は黙ったままだった。


「おいどうした?怖じ気づいたか?」


「…………あのさぁ」


「あん?」


「まだ傍観する側でいるつもり?」


「は?」


 赤狐はこっそりナイフを取り出し、素早くゲームマスターの手を切り裂いた。

 拳銃と、切れた指が宙を舞った。


「う……うわぁーーーーーーー!!!!」


 ゲームマスターは椅子から転げ落ち、のたうち回る。

 赤狐は落ちた拳銃を拾って言う。


「お前は外を5人の仲間に見張らせてた。僕は5人共殺してここまで来たんだけど、気づかなかった?こんな拳銃向けるだけで僕を従えられるとでも?」


「て………てめぇ………!」


「どうしたの?立てよ。やろうよデスゲーム。僕と、お前の、殺し合い」


 赤狐は銃口をゲームマスターに向けた。


「ま、待ってくれ!やめてくれ!悪かった!俺が悪かったよ!そうだ!この映像の稼ぎの9割をやる!だから────」


「命をナメるな」


 赤狐は引き金を引いた。

 発射された弾がゲームマスターの顔を、ウサギの面ごと貫いた。




「………2人は別の場所。このパソコンで遠隔操作ができるわけか」


 赤狐はパソコンを使い、村山と神谷の手錠を外し、入り口も開けた。


『あ、あれ!?外れた!』


『扉も開きましたね』


『どうなってるんでしょうか………』


『さぁ?まぁとにかく、ここを出ましょう』


 2人が部屋から出ていくのを、赤狐はカメラ越しに確認した。


(………まさか、村山先生がいるとは。この先生は絶対何かある。……解放してから思ったけど、逃がすべきだったかな……)


 赤狐も少し悩みながら、暗い部屋を出た。




 解放された村山は、途中神谷と別れ、夜道を歩いていた。


「……フフッ。何があったのかは知りませんが、私はあそこで死ぬ運命ではなかったのですね!」


 村山は高らかに笑った。


「どうやら神でさえ、私のあなたへの愛を認めているようです!ねぇ?アオさん!………私、もう我慢できないかもしれません!」


 村山はアオに対し、ある決心をした。

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