表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八百万  作者: マー・TY
第二章
25/115

25.晴らした話

「ゼェ……、ゼェ…………。こ、ここまで来れば大丈夫か?」


 髪を金色に染めた少年・平山は、雑居ビルの入り口に息絶え絶えで座り込んでいた。

 夜になり辺りが闇に吞まれていく中、彼がいる繁華街はまだまだ明るかった。


「畜生……。なんで俺がこんな目に……。後藤の奴は大丈夫か!?」


 数分前、平山は親友の後藤と共に、夜道を歩いていた。

 昼間に見たいじめられっ子の助けを乞う姿を思い出し、2人で下品に嗤っていた時だった。

 2人の目の前に、黒いバイクに乗った男が現れた。

 その男の姿に、2人は驚愕した。

 何故ならその男、首がないのだ。


「う……うわぁ!!!」


「バケモンだぁ!!!」


 2人は恐ろしくなり、滅茶苦茶に走って逃げた。

 その際に、お互い離ればなれになってしまった。




 平山は走り出した時に、バイクの走行音を確認した。

 間違いなく、追ってきていると感じ取れた。

 しかし、後藤とはぐれたことに気づいた時には、バイクの走行音は聞こえなくなっていた。


「絶対後藤の方に行ったよな?」


 平山はスマホで後藤に電話を掛けた。

 しかし連絡が着かない。


「大丈夫かよあいつ」


 体力を回復させた平山は、ゆっくりと立ち上がる。


「あいつがどうなってるか知らねぇけど、とりあえず家目指すか」


 平山は細心の注意を払い、繁華街から出た。




 いつもは後藤と駄弁りながら帰るが、今は一人、コソコソと隠れるように移動していた。

 周囲にはまだまだ建物がある。

 バイクが出す音が聞こえたら、そこに逃げ込むつもりでいた。


「くっそ、ふざけんなよ……。なんで俺がこんなコソコソしねぇといけねぇんだ!」


 学校では後藤と一緒になって、上級生には媚びるものの、教室では威張り散らしていた。

 悪友も増え、完全にクラスを支配していた。

 自分に怯え、従うクラスメイトを観ていると、気持ちがよかった。

 だからこそ、今のこの自分を、クラスメイトには見せられなかった。


「俺らは狩る側なんだよ………。だよな?後藤」


 平山はもう一度後藤に電話を掛けた。


「……………………ん?」


 後藤は電話に出ない。

 しかし、着メロがすぐ近くから聞こえてきた。

 それが後藤のスマホのものだと気づくのに、時間は掛からなかった。


「後藤!!」


 平山は音が聞こえる方に走った。

 親友とまた会えることへの安心感で、今までの恐怖が消し飛んだ。

 目の前の角を曲がった。


「後藤……、…!?」


 平山は目の前の光景を見て、立ち尽くした。

 そこにいたのは、こちらに背を向けて立つ首なしの男と、バイクに首を踏まれて倒れている後藤だった。

 後藤は全身ボロボロで、口から血と唾液が混ざったものを出し、目玉が飛び出していた。

 辺りにスマホの着信音だけが響いている。


「嘘だろ……おい……。後藤……………」


 首なしの男が振り返った。


「ヒィ!」


 平山は尻餅を着く。

 逃げようにも、恐怖で腰が抜けて立ち上がれなかった。

 首なしの男はバイクに跨がった。


「お、お前……何なんだよ!なんで俺達を狙うんだよ!」


 平山の言葉を無視するように、首なしの男はエンジンを掛けた。

 後藤の首の上を移動し、タイヤの前輪を平山の方に向ける。

 その際に後藤の首部分が轢き潰された。


「………お前、もしかして…………」


 平山は1年前のことを思い出していた。

 その日の夜、後藤と一緒に山道に続く車道に行った。

 そこは暴走族がよく走る道だった。

 2人はそこに釣り糸を張り、暴走族を転ばせるいたずらを思いついた。

 ほんの悪ふざけのつもりだった。

 しかし、その事故は起こってしまった。

 2人が待つ釣り糸が張られた場所に、黒いバイクに乗り、ヘルメットを被った一人の男が走ってきた。

 2人は転ぶことを期待したが、男は何かが切れる音だけを残して走り去っていった。

 不思議に思う2人の元に、丸いものが降ってきた。

 それはヘルメットを被った男の首だった。

 2人は張っていた釣り糸を切り、その場から逃げ出した。

 そしてこの出来事を、2人だけの秘密にした。

 運が良かったのか、この事件が公に出ることはなかった。

 そして今まで通りに生活しているうちに、いつの間にかその出来事は、2人の記憶から消えていたのだった。


「あ、あの時は、悪かったよ!悪気は無かったんだ!ただのいたずらのつもりで、だから」


 バイクに乗った男は、平山に向けて猛スピードで走り出した。


「殺さないで─────」


“グシャッ”


 辺りに血飛沫が舞った。




 翌朝、平山と後藤が殺された道は、通れなくなっていた。

 近くにパトカーが止まり、警察が何人も来ている。

 その現場を、アオが少し遠くで見つめていた。

 手元にあるスマホには、平山と後藤が惨殺されたという内容の事件の記事が載っていた。

 アオは虚ろな目で現場を見届けると、その場を去った。 

今回登場した怪異


首なしライダー

道路に張られていた糸で首が撥ねられ、首が無い状態で走り続けるバイク乗り。糸を張った犯人と、自分の首を捜しているのだとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ