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八百万  作者: マー・TY
第二章
23/115

23.夜の話

 人々が起きて活動している賑やかな昼と違い、夜は静かだ。

 隠神市のほとんどの人間は、夜を知らない。

 夜の世界は、アマゾンの奥地やピラミッドの中のように、神秘的なのだ。




 ある日の夜、アオは目を覚ました。

 灯りを点けて時計を確認する。

 時刻は午前1時半。まだ起きるには早すぎる時間だった。

 アオはもう一度布団の中に潜り込んだ。

 しかし、すぐには眠くならない。

 アオはベッドから出ると、本棚に手を伸ばした。

 読書をしていれば自然に眠くなるのでは?

 そう思って本を開くが、数秒で読む気が失せてしまった。

 本は好きなのに、こういうことは珍しかった。

 まるで脳が内容を弾き返しているようだった。

 アオは本を本棚に戻した。

 頭がボーッとしている中、ふとカーテンを開け、窓の外を見た。


「……満月だ」


 今夜の月は黄金色に輝き、綺麗な円を描いていた。

 もっと間近で見たい。

 そう思ったアオは、パジャマ姿のまま自室を出て、忍び足で廊下を歩いた。

 家族は眠っているので、起こすわけにはいかない。

 玄関に辿り着くと、靴を履き、扉を開けた。

 家の外に出て、道路に立った。

 辺りは月明かりで照らされていた。

 月は普段見るものよりも明るく、大きく、そして美しかった。


「綺麗……」


 月の魔力にでも支配されてしまったのか、アオはしばらく月を見たまま突っ立っていた。

 虚ろな顔で月を眺めていたアオは、ある物音で我に返った。

 辺りを見まわした。

 アオは道の左側から、人影が歩いてくるのを見た。


「何……?」


 その人物は全身真っ黒で、ゆっくりと歩いていた。

 人影はアオに顔を向けた。

 その顔は口しか確認できず、あとは完全に真っ黒だった。


(!!)


 アオはそれが怖くなり、足早に家の中に戻り、自室に入った。

 毛布を被り、あれが来ないことを祈って震えた。

 それからアオは、夜を少し怖く感じるようになった。




「へぇ、そんな体験ができたんだ。いいなぁ。アオちゃん」


「少し怖かったけど………」


 アオはあの夜に体験したことを、クロに話してみた。

 彼なら何か知っていると踏んだ。

 案の定、知っているようだった。


「彼は夜の住人だよ」


「夜の住人?」


「そう。僕たちが昼を生きるように、彼らは夜を生きている」


 まるでおとぎ話のようだ。


「それはお化け?」


「幽霊の類いではないかな。ただ、僕たちに見えてないだけ。おそらく彼らにも、僕たちは普段見えてないんじゃないかな」


「普段?」


「月には魔力があるんだよ。特に満月のときが一番強力なんだ。月明かりに照らされることで、僕たちと彼らは初めてお互いを認識できるんだ。満月が見えるとき限定で」


「じゃあ、いつもは透明?触れもしない?」


「そういうことになるかな。僕たちが見えているのにあっちは見えている、というのも考えにくい」


 どうやらアオ達が夜の住人と接触できる機会は、満月しかないようだ。


「興味津々のようだね。だけどあっちの世界にはあんまり接触しない方がいいと思うよ。きっと帰れなくなるかもしれないから」


 クロにそう言われ、アオは改めてゾッとするのだった。

最近故郷の鹿児島を離れ、一人暮らしをすることになりました。まだ慣れませんが、なんとか生活しながら投稿していきたいと思います。

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