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八百万  作者: マー・TY
第二章
22/115

22.四つ葉の話

 カイが目を覚ますと、空がオレンジ色になりかかっている。

 どうやら河川敷のベンチで眠ってしまったようだ。

 川辺では子供達が遊んでいる。

 グラウンドには、少年野球のチームが熱心に練習をしていた。


「野球かぁ。俺もやりてぇなぁ。入れてもらえねぇかなぁ………ん?」


 野球少年達を眺めるカイの元に、一人の少女が駆け寄ってきた。


「はい!」


 少女はカイにクローバーを差し出してきた。

 よく見ると、葉は4枚あった。

 カイは今まで3枚のものしか見たことがなかったので、珍しがって見た。

 少女は四つ葉のクローバーを差し出したまま、ニコニコと笑っている。


「それ持ってたら幸せになるやつだよな?くれるのか?」


「うん!」


 少女は元気よく首を縦に振った。


「そうか。ありがとな」


 カイは少女から四つ葉のクローバーを受け取った。

 少女は元気よく駆けていく。

 その先に、シロツメクサがたくさん生えていた。

 少女はそこにしゃがみ込むと、クローバーを採取し始めた。


「クローバー好きなんだな。でも一気に掴んで抜くわけじゃないのか」


 カイは少女の動きを観察する。

 少女はいろいろなところから、1本ずつ抜き採っていた。

 そして、採ったクローバーを赤白帽子に詰めていく。

 カイは座っていたベンチを立って、帽子の中を確認してみた。


「………え?」


 どのクローバーも、葉が4枚だった。

 いや、四つ葉のクローバーしか入っていない。


「そんなにたくさん生えてるもんなのか?」


 カイはシロツメクサ畑にしゃがみ込むと、四つ葉のクローバーを探し始めた。

 あんなにたくさん見つかるなら、俺にも見つけられるかもしれない。

 そう考えたが甘かった。

 カイが見つけたクローバーは、どれも三つ葉。

 四つ葉はない。

 一方少女は、なんの迷いもなく四つ葉を採っていた。

 まるでそこにあるのが解るかのように。


「なぁ、何かコツとかあるのか?」


 カイは少女に目線を合わせて訊いてみた。


「妖精さんが教えてくれるんだよ」


「妖精?」


 カイは辺りを見回した。


「何もいないぞ?」


「マナには見えるの!」


 少女はニコニコしながら応える。

 彼女にはそういう類いが見えるらしい。


「お兄ちゃん、一緒に探す?」


「お、そうするか!そうだ、マナってお前の名前か?」


「うん。お兄ちゃんのお名前は?」


「俺はカイっていうんだ。よろしくな!」


「うん!カイお兄ちゃん、妖精さんがこっちにあるって!」


「ホントか!?」


 それから2人は、仲良く四つ葉のクローバーを探した。

 カイは、マナに見える妖精のことは、気にならなくなっていた。

 そして、空が完全にオレンジ色になったとき、


「マナ~!」


 マナを呼ぶ声が聞こえた。

 少し遠くに、一人の女性が立っていた。


「あっ!ママだ!ママーーー!!」


 マナは帽子を持って、母親の元に駆けていった。


「マナーーー!また遊ぼうな!」


「うん!!」


 カイの呼び掛けに、マナは元気に応えた。

 母親の元に着くと、マナは片手で帽子を抱いて、カイに手を振った。

 カイも振り返す。

 マナとその母親は、河川敷を後にした。

 その姿から、幸せが溢れているように感じた。


「カイ!」


 マナと入れ替わりで、アオがカイの元に駆け寄ってきた。


「こんなところにいたの?LINE、既読にならないから心配したよ」


「わりぃな。なんか寝てたみたいでさ。そんじゃあ帰ろうぜ」


「今夜はハンバーグだよ」


「マジで!?よっしゃ!」


 カイはアオと一緒に歩き出す。

 手には1本の四つ葉のクローバーが握られていた。 

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