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八百万  作者: マー・TY
第二章
18/115

18.落書きの話

 情報通のショウはいろいろな場所や、噂話について詳しい。

 怖がりなくせに、心霊スポット等もよく把握していた。

 そんなショウがやってきたのは、駅付近にある陸橋。

 ビデオカメラを自分に向けて、元気良く語り出した。


「ショウのオカルトチャンネルへようこそっ!どうもっ!ショウです!」


 ショウは動画サイトに動画を挙げている。

 漫画やゲームの都市伝説の内容が多いが、こうして外で撮ることもたまにはある。

 街を歩くと、視聴者に話しかけられることもあった。

 小学5年生の頃から始めたショウの動画は、そこそこ人気が出ていた。


「今回はですね、ここ、藤沢駅付近の陸橋下にね、沢山落書きがあるということなので、見に行きたいと思いますっ!」


 そう言って、ショウは陸橋の下に入った。


「うおっ!すげぇ!」


 陸橋下には、数え切れない程の落書きで埋め尽くされていた。

 見た目は普通の陸橋。

 そのせいなのか、全く目立たない。

 ショウはカメラを回しながら、落書きをひとつひとつ読み上げていく。


『メグ参上!』


『あたしはあんたのことが好きだった』


『俺、降臨!!!!!』


『LINEのID誰か教えて(笑)』


『リア充消えろ』


「……みんな好き勝手書いてるなぁ」


 もはや無法地帯だった。

 使われているのはほとんど油性のマジックペンで、たまにシャーペンやボールペン、色つきのものもあった。

 スプレーは使われていない。

 文字だけかと思いきや、相合い傘や、どこかのキャラクターの絵も描いてあった。

 そちらの方が落書きらしい。


「お?これ長いな」


 ショウは長めの落書きを見つけたので、読み上げてみた。


『「君」と書いて「恋」と読み、「僕」と書いて「愛」と読もう。そうすればはなれそうもないでしょ?』


 ショウは爆笑した。


「ブハハハハハハハハハ!やべぇ!すげぇなこれ!書いた奴誰だよ!」


 恋愛漫画に出てきそうな台詞だ。

 実際に言えればどんなに格好いいことか。

 しばらくニヤニヤしていたショウは、また気になる落書きを見つけた。


「ん?電話番号?」


 他にも電話番号は書かれていたが、一部が塗り潰されていたり、消えたりして読めなかった。

 ショウが見つけたその番号は、唯一全て読めるものだった。


「どうすっかなぁ?掛けるかなぁ?……でもこれはこれで盛り上がりそうだなぁ」


 ショウは掛けるか掛けまいか、迷っていた。

 しかし、最終的には動画の盛り上がりが欲しくなり、掛けることにした。


「『落書きだらけの陸橋に書かれていた電話番号に掛けたらヤバかった』って題にするかっ!」


 カメラを自分の方に向け、スマホに落書きの通りに電話番号を打っていった。


「よし、掛けます!」


 ショウは電話を掛けた。

 電話の音量を上げ、通話画面を自分の顔と一緒にカメラに映す。

 10秒後にガチャッという音が聞こえた。

 繋がったようだった。


『……………』


 しかし、相手からの応答がなかった。


「もしもし?」


 ショウが話すも、応答がない。

 今度は少し、ハッキリとした声で聞いた。


「もしもし?俺、落書きに書かれてた電話番号に掛けた者なんですけどぉ?」


『…………フフ』


 スマホから、女性の笑い声が聞こえた。

 ショウは思わずスマホを落とした。

 まだ通話は続いている。


『フフフ………アハハ……』


 女性の笑い声がハッキリと聞こえる。

 ショウはスマホにカメラを向けて下がった。


『アハハハ……フフフ……フフ………』


 女性の笑い声はしばらく続いたが、突然消えてしまった。

 しかし、通話はまだ続いている。

 向こうが切った訳でもなさそうだった。


「え?何だったんだ?今の?」


 ショウはそっと近づき、スマホを回収しようとした。

 スマホを手に取った、その時だ。


『アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ─────────』


「うわぁ!!」


 突如として、女性の狂ったような笑い声が響き渡った。

 ショウはスマホを投げ捨て、その場から逃げ出した。


『フフフ、フフフフフ、フフッ』


 笑い声はしばらく続き、だんだん小さくなっていった。


『あーおかしい』


 その声を最後に、通話は切れた。

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