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八百万  作者: マー・TY
第二章
16/115

16.殺人鬼の話

「いやぁ、あのオッサンウケたな!」


「確かにw土下座とかしてたぜwあいつ」


「金も割と持ってたしなw」


 時刻は午後11時。

 夜中にも関わらずまだ明るい繁華街を、3人のチンピラは歩いていた。

 大学に入ったもののロクに授業に出席せず、時々仲間と一緒になって女を襲ったり、弱そうな人間を見つけては集団リンチをした後に金を奪うという日々を送っていた。

 先程も会社帰りのサラリーマンを襲撃し、金を巻き上げたところだった。


「へへへッ、40過ぎたオッサンがみっともなく泣くなって話だよなぁ?」


「そりゃあんだけ殴れば泣くだろw豚みてぇに太りやがって」


「あんなの生きてる価値ねぇんだよwだから俺らがあーやって生きてる意味見つけてやってんじゃねぇかよ!むしろ感謝してほしいくらいだなぁ」


「ブハッ!違ぇねぇ!」


「ボコボコのオッサンが俺らに土下座してありがとうございますってか?豚のうえにMかよwキモっ!」


「それもそうだなぁww」


3人は襲ったサラリーマンを笑い物にしながら歩いている。

 弱い者はどう扱ってもいい。

 そんな考えを持っていた。


「お?」 


 一人が前方を見た。

 3人から数メートル離れたところを、小柄な少年が歩いていた。


「おい、あいつ」


「あ?あぁ、いいなぁ」


「ヒョロヒョロで弱そうだなぁwもうひと稼ぎ行くか?」


 3人は顔を合わせてニヤリと笑うと、歩を早めて少年に近づいた。




 3人は少年を路地裏に連れ込んだ。

 相手を見つけるとまず人気の無い場所に連れ込むのが手口だ。

 少年は抵抗することなく、あっさりと連れて来られた。

 壁を背にする無表情の少年は、3人の顔を見上げた。

 チンピラ達はニヤつきながら、少年と話し始めた。


「君さぁ、名前なんていうの?」


「……灰崎玲音」


「レオン君かぁ……、中学生?」


「高1です」


 レオンと呼ばれた少年は、3人に臆することなく応えた。

 高校生ではあるが、顔には子供っぽさが残っていた。


「コイツ全然ビビってなくね?」


「まぁ待てよ。あのさぁ、俺たちレオン君のお友達になりたいんだよねぇ」


「友達?僕の?」


 レオンの眉がピクリと動いた。

 チンピラのうち一人が続ける。


「そうそう。俺らが友達になればさぁ、いじめっ子から君を守ってあげられるよ?レオン君弱そうだからさぁ、よくいじめられるでしょう?」


「……」


「あれ?その反応図星?俺って鋭いんだよねぇ。それでさぁ、友達になるのに、ちょっと条件がいるんだけどさぁ」


「条件?」


 レオンは首を傾げた。

 話をするチンピラと残りの2人は、悪い笑みを浮かべた。


「俺らさぁ、金に困ってんだよねぇ。だからさぁ、金貸してくれねぇ?週に一回俺2万でいいからさぁ」


「悪い話じゃねぇだろ?それだけで俺らが守ってやれるんだぜ?」


「友達だからさぁ、お互い助け合っていかないとねぇ?」


 そう言うと3人は声を上げて笑った。

 そんな彼らを、レオンは冷めた目で見ている。


「…………。嫌ですけど?」


「はぁ?」


 その一言で、チンピラ達の顔が苛立ちに染まる。

 一人が近くにあったゴミ箱を乱暴に蹴った。


「おい、それはないんじゃねぇの?」


 友達の提案をしたチンピラが、レオンに顔を近づけて言う。


「俺らはお前の友達になりたいって言ってんだ。それを嫌とかねぇだろ?なぁ?おい!だいたいその態度だけどさぁ、調子乗ってんのかよ?」


 チンピラ達は苛立っていた。

 弱い者達は常に彼らの言いなりになっていた。

 しかしレオンの場合は違った。

 今こうして脅してはみたが、顔色ひとつ変えないのだ。

 そのレオンの態度が、彼らを刺激したのだ。


「何が友達だよ」


「あァ!?」


 突然のレオンの言葉に、チンピラ達は反応した。


「たまにいるんだ。友達っていう言葉を振りかざして、弱者から何もかも奪う奴らが。何が友達だよ。お前らただ僕をいじめたいだけだろ?金が欲しいだけだろ?」


「うるせぇ!!弱ぇ奴らは俺らに従っときゃいいんだよ!!!」


 一人がレオンの胸倉を掴んで怒鳴り散らした。


「おい、コイツもうボコそうや」


 そして残る2人にそう提案した。 

 レオンは上着のポケットの中に手を入れた。


「じゃあ、どっちが弱いかはっきりさせてあげるよ」


「あァ!?」


“ドスッ”


 レオンは胸倉を掴むチンピラの腕にアイスピックを突き立てた。


「い!?いで───」


“シャッ”


 レオンはアイスピックを左手で素早く抜き取ると、そのチンピラの喉元を右手のナイフで掻き切った。

 勢いよく血が吹き出した。


「あ……がっ……、ぐげっ…………!」


 そのチンピラは喉元を抑え、カエルのような声を上げると、やがて絶命した。


「は?…………」


 残る2人は、ただその光景を唖然として見ていた。

 その現実を受け入れた1人が悲鳴を上げる前に、レオンが口内にナイフを突き立てた。

 そのチンピラも、呻き声を上げて死んだ。

 残る1人は腰を抜かして転んだ。

 目の前にあるのは、仲間の死体とそこから出た鮮血、そして右手にナイフ、左手にアイスピックを持って立っているレオンだ。

 レオンは、返り血が掛かった顔を残る一人に向けた。

 立ち上がれずに、無様に後退る残ったチンピラに、レオンはゆっくりと近づいていく。


「ま、待て!悪かった!俺達が悪かった!」


 命乞いの声を、レオンは無視して進んでいく。

 追いついたレオンは、逃げられないようにチンピラの足を踏んづけた。


「か、金ならいくらでもやるよ!あ、後何でもするから!だから助けてくれ!見逃してくれ!」


「何でもする?………じゃあ死ね」


 レオンはそのチンピラの身体に乗り、両手の凶器で顔を刺しまくった。




 最後の一人が絶命するのを確認すると、レオンは彼の近くに腰を下ろした。

 顔と服に返り血が付いている。


「隠れながら帰ろう。夜だし人は少ないはず。今度はちゃんとこれを付けてやろう」


 レオンは懐から赤い狐のお面を顔に付けて、立ち上がった。


「……お前らみたいなのがいるから、人は不幸になるんだ」


 レオンはチンピラ達の死体にそう言い捨て、闇夜に歩き出した。




「なぁ、赤狐って知ってるか?」


「あぁ。ネットで話題だよな?」


 “赤狐”。

 赤い狐のお面を被った殺人鬼の噂は、今や隠神市全体に広まっていた。

 ここ隠神高校1年1組の教室も例外ではない。

 レオンは自分の席に座り、自分自身である赤狐についての噂話を聞いていた。


(この様子じゃやりにくくなるだろうなぁ。でも1、2回目撃された程度だし、まだ都市伝説みたいな扱いなのかな?でももう何十人と殺してきたしなぁ)


 レオンは心の中でそう呟く。

 まさか赤狐の正体がこの教室にいるとは誰も思わないだろう。


(……僕がやるんだ)


 レオンには2つ年上の姉がいたが、いじめを機に自殺してしまった。

 それから、レオンは人を殺し続けた。

 弱い者いじめが好きな者達を。

 平気で人を傷つける者達を。

 レオンはこの行いを、そんな人間達への報復としている。

 それと同時に、この行いは助けられなかった姉への償いだと思っている。

 もう二度と、姉のような犠牲者が出ないように。

 死ぬ覚悟も、地獄に堕ちる覚悟も、レオンはできていた。

 担任の村山が教室に入ってきた。

 レオンは村山に目を付けられた。

 レオンの席は廊下から2列目の一番前にある。


「おや?灰崎君の瞳はなかなか魅力的ですねぇ。まるで人を殺したことがあるかのような」


 そう言っても、村山はレオンの目を愛おしそうに見つめた。

 レオンは村山を睨む。


「失礼ですね。先生の方がよっぽど危なく思えますけど?」

 

「ほう…、まぁいいでしょう。さぁ皆さん、席に着いてください。ホームルームの時間ですよ」


 1年1組の生徒達が自分の席に着く。

 レオンは気を引き締め、村山の話を聞いた。

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