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八百万  作者: マー・TY
最終章
102/115

102.主犯格の話

 怯えるアオを見て、キララはうっとりしていた。

 まるで子猫でも見ているようだった。


「はぁ~……やっと会えた~❤中学の頃、あの後アオちゃん学校に来なくなっちゃったからね❤はぁ~ん❤寂しかった~❤」


 キララはまるで、この日を待ちわびたと言いたげだ。

 アオはそこからすぐ逃げ出したかった。

 しかし、体が震えて言うことを聞かない。

 心臓も、いつもの倍の速度で動いていた。


「そうそう!そうだよアオちゃんその表情!キララが求めてたのはそれだよ!!あ~~可愛い尊い❤❤❤」


 アオの怯えた表情で、キララはさらに興奮する。

 アオは思わず顔を逸らす。

 しかしキララは、両手でアオの顔を掴み、無理矢理自分に向けさせた。

 アオの瞳は次第に暗くなってきていた。


「いっ…いや………!!」


「あれ~?アオちゃんの目、だんだん素敵になってきてる~❤フフフ~❤とっても楽しみになってきた~❤でもここだと邪魔入りそうだよねー。アオちゃんのお兄ちゃんみたいなのが来たら面倒だしな~。あはは❤やっぱりお持ち帰りかな~?」


 キララはアオの顔から手を離す。

 アオはアスファルトの方に顔を向け、息を荒げた。

 キララは液体が入った瓶とハンカチを取り出した。

 それから瓶の中の液体をハンカチに掛け、アオの口と鼻を塞いだ。


「んぐっ!!むーーー!!!」


「おやすみ~、アオちゃん❤」


「むっ………うっ………………………。………………………」


 ハンカチに染み込んだ液体の匂いを無理矢理嗅がされているうちに、アオは次第に眠気に襲われた。

 瞼が重くなり、目を開けてはいられない。

 キララは危険だ。

 そう思っているからこそ、眠っている場合ではない。

 しかし、アオは強力な眠気に逆らえず、意識を失った。

 倒れるアオをキララが優しく抱き寄せた。


「はぁ~ん❤アオちゃん柔らか~い❤さっ、お家に帰ろうね~❤」


 キララはアオを抱き起こそうとした。

 その時、眠ったはずのアオの手がピクリと動いた。


「へ?」


 さらに、アオの目が開く。

 その目は虚ろで暗かった。


「えっ!?何で起きて……!?」


 アオはキララの手を振り解き、両手で突き飛ばした。

 不意を突かれたキララは尻餅を着く。

 

「痛っ!ちょっとアオちゃん何するの!?ていうか、何で薬が効いてないの!?だったらもう一回……」


 キララは再びハンカチに液体状の薬を掛けた。

 しかし嗅がせるよりも早く、アオがハンカチと瓶をはたき落とす。

  

「えっ!?うぐっ……!!」


 割れた瓶に気を取られたのを見逃さず、アオは両手でキララの首を絞め始めた。

 アオの瞳は冷たく、殺気を放っている。


「………あは、あははははははは!!!」


 殺されそうになっているのにも関わらず、キララは笑い声を上げた。

 アオはキララの首に、さらに力を込める。

 それでもキララの笑い声は止まらない。


「あはっ……残念❤」


 ここまではアオの方が優勢だった。

 しかし、キララがポケットから黒い物体を取り出し、素早くアオの首に当ててから事態が変わった。

 

“バチバチバチ!!”


 弾けるような音が辺りに響く。

 キララがアオの首に当てたものは、スタンガンだった。


「ッ………………!?」


 アオは苦痛の表情を浮かべ、再び倒れた。

 キララはアオの頬を撫で、意識がないのを確認する。


「フフッ、あはははは!よく解らないけど、残念だったね~❤でも、必死に抵抗しようとしてるの、何だか萌えた~❤」


 殺されるかもしれなかったというのに、キララはまた興奮していた。

 今すぐにぐちゃぐちゃにしたいという気持ちを抑え、気絶したアオを抱き上げた。




「……あれ?」


 気づけばアオは、夢の中の四角い部屋の中にいた。

 その横には、ネムが倒れている。


「ネム……えっ……?」


 ネムは眠っているようだが、いつもと違った。

 体が痙攣していて、苦しそうだった。


「ネム!どうしたの!?」


 アオはネムを抱き寄せた。

 ネムの呼吸は荒かった。


「……もしかして、起きたの?」


 ネムの今の状態が自分を助けてくれた結果だと思うと、胸が痛くなった。


「ネム…ごめんね………」


 自分が弱いばかりに、本来傷つく必要のないネムが傷ついている。

 やはりネムに頼るのは間違っているのではないかと、改めてそう思うのだった。


“ドッ!!”


「ッ!?」


 突然部屋が大きく揺れた。

 

「何っ!?」 


 アオは思わず上を見上げる。

 天井がアオとネムに向かって落下してきた。




「ッ!!?」


「あっ、アオちゃんやっと起きた~❤もぅ、全然起きないから我慢できなくて~、無理矢理起こしちゃった~❤」


 目を覚ましたアオは、薄暗い部屋の隅に両手足を縛られた状態で倒れていた。

 その部屋はボロボロで、壁には黒い染みが付いている。

 

「ここ……どこ……………?」


「フフフ~❤こんな空き家が見つかって良かった~❤」


「ひっ!」


 興奮で頬を紅潮させたキララが、アオを見下ろしていた。


「あはっ❤今からたっぷり遊んであげるからね~❤」


「やっ、やだ!」


「……と、そ・の・ま・え・に~❤」


 キララはしゃがみ込み、アオの制服を掴んだ。


「嫌だ!やめて!」


「やっぱりお腹見られるの嫌なんだね~?か~わいい~❤それじゃあ、やっぱり残ってるのかな~?」


 キララは制服をめくってアオの腹部を確認した。

 アオの腹部には、火傷の痕があった。


「あははっ!残ってる~~!!すご~~い!!」


 キララはその腹部の火傷痕を、スマホで撮影し始めた。

 

「嫌だ……もう嫌だ………」


 アオ自身、腹部の火傷痕は誰にも見せたくはなかった。

 抵抗もできず、ただ泣きじゃくることしかできない。


「フフフ~❤これくらいでいいかな~?」


「どうして……?どうしてこんなことするの…?……ほっといて……私のこと…放っておいてよ………」 


「あらら~。そんなつれないこと言わないでよ~。今日アオちゃんと遊びに来たのはキララだけじゃないんだから~❤」


「えっ………?」


「あはっ、あはは~❤」


 キララは近くに置いてあったボントンバッグのファスナーを開け、中にあったものを取り出した。


「ほら、アスカちゃんだよ~?」


「い、いや………いやぁあああああ!!!」


 アオは悲鳴を上げた。

 キララが取り出したのは、少女の生首だった。


「本当は体の方も来る予定だったんだ~。だけどアスカちゃんったら、誘ったらもうそういうことはしないとか、そんなことは良くないとか、訳解らないこと言うんだもん。挙げ句の果てにはキララのこと邪魔しようとしてきたから、思わず殺っちゃった~❤」


 キララは無邪気そうに笑いながら、アスカと呼ばれた少女の首をアオの目の前に置いた。


「嫌だ!もう嫌だ!!お願いもうやめて!!!」


 恐怖でアオは半狂乱になる。

 そんなアオの脳裏に、忘れたい中学時代の思い出が次第に浮かび上がってきた。

次回、アオ過去編に入ります。

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