3話
タクト達と移動を開始してしばらく経つと、馬車などが見えるようになって来た。
それからしばらくすると、石の壁が見えてきた。
「あれが町?」
「そうだ。 あの壁で魔物達が入らないようにしているんだ。」
僕が質問すると、タクトが答えてくれた。
壁に近づいていくと、入り口が見えてきた。
その下には、数人鎧を着た人間が立っていて、検問をしているように見える。
僕達はそこに着くと、兵士が話しかけてきた。
「お、貴方達は今朝魔物の討伐に行った冒険者だよな?それで、今朝は5人に見えたんだが、そちらは知り合いか?」
どうやら、僕に聞いているようだ。
旅人と答えるべきだろうか? けれども、それにしては知識がなさすぎて、不審に思われてしまうかもしれない。
ならば、村から出てきたばかりで、冒険者になりに来た、と答えるべきかな。
「僕はアルと言って、村から出てきたばかりで彷徨っていたところを、この冒険者の人達と偶然出会って、町まで一緒に来させてもらいました。」
「そうか、持ち物は無いのか? 身分を証明できる物が無いなら、怪しい物が無いか、念の為調べさせてもらう。」
兵士はそう言って僕の取り調べをした。
「ようこそ、シヴェリアへ。」
僕の取り調べが終わると、そう言って歓迎してくれた。
門の下をくぐると、少し遠くに店がいくつも見えた。
「これからアルはどうするんだ? 俺たちは冒険者ギルドに報告をしに行くが。」
僕の予定は今のところ決まっていない。
ただ、冒険者には興味があるし、今晩飯を奢ってくれると言っていた。
ならば、このままタクト達に付いて行く方がいいだろう。
「僕も冒険者ギルドに行くよ。
冒険者にはなってみたいし、それに晩ご飯も楽しみだしね。」
「そうか、ならギルドまで案内する。」
しばらく歩いていると、二回建ての建物が見えてきた。
その建物から、装備を整えた人が、チラホラと入ったり出たりしていた。
「あれが冒険者ギルド?」
「そうだ。 冒険者は荒くれ者が多い。
大丈夫だとは思うが、あまりギルドで問題を起こすんじゃないぞ。」
「わかった。 気をつけるよ。」
僕達は扉を開けて中に入ると、食べ物の匂いや酒の匂いがした。
辺りを見渡してみると、たくさんの紙が貼ってあるボードや、その紙を持って並んでいる人達、食事をしている人がいた。
タクト達は慣れているのか、足を止めることなく受付に並んだ。
僕も後を追いかけて急ぎ足で追いつき、あちこちを眺めた。
タクトを見た人達は何人か頭を下げたり、丁寧に挨拶をされたりしていた。
どうやら、タクト達は結構凄いようだ。
しばらく並んで待っていると、ようやく出番が来た。
タクトが受付嬢に話しかけた。
「依頼の達成の報告をしたい。」
「はい、討伐部位と依頼書を見せていただけますか?」
受付嬢に言われた通りタクトは角と依頼書を出した。
文字がいろいろ書いてあるが、僕には読むことが出来なかった。
まぁそれもそうだ、生まれてから一度も勉強なんてしたことは無いし、する必要も無かった。
そして、困った事が発覚した。
僕は魔物の名前を知らないし、文字を読むこともできない。もしかしたら依頼を達成するどころか、依頼を受けることもできないかもしれない。
僕がそう思って頭を抱えていると、みんな怪訝そうな顔で見ていた。
タクトの用はもう済んだようで、こちらを向いている。
「冒険者に興味があるんじゃないのか?」
「興味はあるんだけど…というかなりたいんだけど、僕文字読めないし、魔物の名前も知らない。」
僕がそう言うと受付嬢が微笑んで言った。
「文字が分からなくても言葉は通じますから、私達が翻訳しますし、どんな依頼があるか聞いてくれましたら、あなたにあった依頼をお勧めします。
それに、魔物は本に絵が載っていますので、知らなくても問題ないです。
なので、心配することはありませんよ。」
そうか、ならよかった。
それなら僕も冒険者をやることができる。
「よかったです。それなら冒険者になります。」
「はい、わかりました。
では、登録しますので、名前を言って下さい。 」
「アルだよ。」
僕が名前を言うと、受付嬢は機会に付いているボタンを押した。そうすると、なんかのカードがでてきた。
「それでは、このカードに魔力を通していただけますか?」
僕は魔力を少し流す。
すると、カードの中の何かが壊れそうになってしまった。そのため、慌てて魔力を流すのをやめた。
受付嬢も少し慌てている。
「そんなに流さなくても大丈夫ですよ!」
やはり、人にとっては多かったらしい。
僕がどうしたものかと悩んでいると、ふと昔もらった物を思い出した。
僕が崇められいるのを嫌がっているときに、創造神がそんな僕を見て作ってくれたものがあった。
僕は空間魔法から、貰った物をすぐに取り出して身につけた。
それは指輪のような形で、力を封じ込めるための神器だ。これを付ければ魔力や能力を人間と同等に下げることができる。取り外しも簡単で、使う機会が無くて入れっぱなしにしていた物だ。
「これで登録完了です。
何かありましたらいつでもお聞きください。」
「わかった。それでは。」