2話
5人に付いて行って少し経つと、リーダーと思われる男が止まり、こちらを向いた。
すると、他の4人もこちらを向き、やや警戒しているようだ。
少し経った後、リーダーと思われる男が言った。
「さっきは助かった。
俺の名前はタクト、Aランク冒険者で、パーティ名は黒牙だ。」
どうやら冒険者という職業みたいだ。
Aランクが何かは分からないが、タクトは理性的で真面目そうな人物のようだ。
僕が考えていると、元気そうな女性が次に喋った。
「私はアイリって言うの〜。
気軽によろしくね。」
アイリという人はかなりテンションが高いようだ。
「俺の名前はドイだ。
こいつはいっつもこんなだから鬱陶しかったら無視していいからな。」
ドイはそう言って笑いながらバシバシと背中を叩いて来た。
ドイもかなり話しやすそうな人だ。
「も〜ひどいよドイっち。」
アイリはそう言ってむくれている。
そんな様子を見て、他のメンバーは笑っている。
どうやら、パーティの仲は良さそうだ。
「おいらはビリーだ。」
少し意地っ張りに見れる青年はビリーという名前らしい。
少し苦手な相手だ。
「私はイリス。
助けてくれてありがとうございます。」
イリスはまだ僕を結構警戒しているみたいで表情が固い。
人間からしたらさっきの魔物はかなり強いみたいだ。
魔法を使える人間は結構いるし、魔力が使えなければ魔物を倒すのはかなり難しい。
僕の正体がバレたらまた封印されちゃうかもしれない。
それは絶対に嫌だからバレないように生きていこう!
まずは人間として頑張ってバレないように生きてみるかな。
「僕は…えーっと……」
まずい。
僕の名前って知られてるのかな?
もしかしたらバレてしまうかもしれない。
アステル…あす…てる…ある。
よし、僕はアルって名乗ろう!
名前を言い淀んだせいか、みんなが僕を訝しんで見てる。
ここは、平常心でいかないと。
「僕の名前はアルって言うんだ。
村から出てきたばかりで何も知らない。
だから、色々教えてくるてと嬉しいな。
それと、僕はあまり人と喋ったことがなくてね、それで名前を言うのも久しぶりなんだ。
仲良くしてくれると嬉しいかな。」
僕がそう言うと、みんなは少し納得してくれた。
「まだわからない。
なんでお前はあんな威力の攻撃ができた?
村の人間はそんなに強いとは思えないが。」
タクトはまだ納得していなかったようだ。
それにしても、お前と呼ばれるのはいい気がしないな。
「村に来た魔物を僕が追い払っていたんだ。
幸いにも、僕の魔力は人より多いみたいでね。
それで魔力の扱いには慣れているんだ。」
僕がそう言うと、タクトは「なるほど。」と言って頷いた。
あ、そうだ。
僕は疑問に思ってたことがあるんだ。
「ねぇねぇ、冒険者ってなんだい?
それと、Aランクって何?」
僕がそういう言うと、全員が驚いた顔をしてこちらを見た。
なんだか、聞いてはいけない事を聞いてしまったのかもしれない。
「冒険者は、人がギルドに依頼して、それを受けてお金を稼ぐ人達のことだよ。
それと、依頼を達成すると、その依頼の難易度によってポイントが貰える。
初めはみんなFから始まって、その次はE、Eの次がD、Dの次がC、その上がB、そしてA、その上がSそして、SSってなっている。
ランクが高いからと言って強いわけじゃないけど、大抵の人は強いね。」
どうやら、Aランクはそこそこ高いらしい。
依頼とはいったい、どんな事をするんだろうか?
「依頼って例えばどんな事をするの?」
「多いのは魔物の討伐かな。
討伐した証拠を渡せば完了。
他には、素材の採集かな。」
それは、人間にとっては大変そうだ。
でも、そうしなければ魔物が溢れてしまう。
仕方のないことか。
けれども、僕にとっては好都合だ。
僕は今まで必要ないから食事などを取っていなかった。
それに知らない事もまだまだ多い。
そのためにも、仕事を見つけられたのは嬉しい。
「ありがとう。
君たちのお陰で、いろいろ知ることがてきた。
最後に一つ、街に行くにはどの方角に行けばいいか教えてくれないか?」
「俺たちも今から街に戻るところだ。
折角だから一緒に行かないか?
助けて貰ったお礼に飯を奢るよ。
俺がよくいっているオススメの店があるんだ。
なかなか美味いってことで一部の人では有名なんだ。」
「おお! 本当か!?
それはとても楽しみだ。」
初めてのご飯は楽しみだ。
いや、初めてではないか。
昔食べたが、肉を火炙りしただけの料理と言えるものではなかった。
それのせいか、それから食事をしようとは思わなかったんだ。
でも、今回は調理された料理だ。
とても心踊るのは仕方のない事じゃないだろうか?
そんな風にワクワクしていると、タクトが怪訝そんな顔で俺を見て言った。
「ところで、成人なのか?
まだ、成人したばかりくらいに見えるが、何才なんだ?」
そうか、僕は不老だから歳を取らない。
今何歳か自分でもわからないが、そこまで長くは生きていない。
本当の年齢を言ってしまったら、人間でないことがバレてしまう。
僕の見た目は成人辺りだと言う。
だから、成人と同じ年齢を言えばいいだろう。
けれども、何才で成人かはしらない。
ここは、まず聞いてから丁度同じだと言えばいいかな。
「そもそも、成人て何才なんだい?」
みんなは、また驚いた顔をして僕をみた。
きっと常識なんだろう。
「15歳で成人だよ。
それで、アルはいくつなんだ?」
「僕は丁度成人のようだ。」
「良かったな。
酒が飲めるぞ。
それじゃあ、そろそろシヴェリアに向かおうか。
あーっと、シヴェリアは街の名前だ。」
どうやら、街には名前が付いているようだ。
僕は返事をして街シヴェリアまで向かった。