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どこココ⁇⁇⁇⁇⁇⁇
辺り一面真っ白。
何にも無いよ、ただただ白いよ。
床と壁の境目も分かんないくらい真っ白だよ。ってか壁あるの?だだっ広い空間だったりするの?
某バトル漫画の『精神と時の間』に似てる気もするけど、あの部屋には建物があったはず。
何にも無いよココ。私しかいないよ。
「おーい。誰かいませんかぁ?」
「はーい。」
「‼︎‼︎‼︎」
試しに叫んだら返事がきてマジでビビった。しかも真後ろとか本当に心臓に悪いからやめて。
美女がいました。
マジで美女。緩く巻かれた膝下まであるプラチナゴールドの髪にエメラルドのようなクリクリキラキラのお目目、小ぶりな薔薇の唇、白磁のような白く滑らかな肌。豊満なボディでキュッとクビレた腰の位置が高い。ギリシャ神話の女神様みたいな御衣装がスタイルの良さを更に際立っている。
何処のスーパーモデルさんでしょうか?
ニコニコ笑顔が眩しいです。綺麗で可愛いとか、世が世なら傾国と言われるレベル。いや、そのレベルをはるかに超えている。
「はじめまして桐崎 美羽さん。
私はエール。あなたがいた世界とは別の世界を統治している女神よ。」
マジで女神だった。どうりで綺麗なわけだよ。
「って、はいそうですかって信じられるわけないでしょ。
何処ココ?何?夢?」
全力で頬をつねってみました。
めっちゃ痛かったです。
涙どころか冷や汗が出てくる勢いで痛かったです。夢じゃありませんね、夢でこれだけ痛み感じるとか無いわ。
「頬真っ赤よ、大丈夫?」
女神様が頬に触れると痛みかスッと無くなった。
マジで女神だこの人。後光が見えてきたよ。
「本題に入りましょうか。
ココはあなたはいた世界と私の世界の間の空間、あなたは元の世界から弾き出されたの。」
「は?弾き出された?え?帰れるの?」
「残念だけど無理。あなたは本来、私の世界に生まれるはずだったから、元の世界からするとイレギュラーな存在なの。」
「どういうことですか?」
「詳しく説明すると、30年前私の世界で貴族の一人娘として生まれるはずだったあなたの魂が、時空の切れ目に吸い込まれて地球のご両親のところに生まれてしまったの。それぞれの世界は魂の数が決まっていて、何かしらの原因で上限を超えてしまった魂は世界に拒絶されて弾き出されるの。地球でも神隠しと言われる失踪事件がたまにあったでしょう?あれは殆どが世界から弾き出された魂なのよ。
別の世界の神はどんな理由があろうと介入することはできないから、あなたの魂が弾き出されるのを待って救出しようとしたんだけど、思ったより時間がかかってしまって。ごめんさない。」
思ったより壮大な話だった。
世界に拒絶されたより本来ならお父さんとお母さんの子供じゃなかったことの方がショックだよ。自他共にみとめる家族大好きっ子なんです。
「元の世界であなたの存在は初めから無かった事になってしまったから、戻ることはできないけど、私の世界で桐崎 美羽としてその体のまま生きることはできるわ。その場合世界に合わせて変更点はあるけれど、あなたの感覚的にはあまり変わらないから安心して。
もう1つ選択肢として、元の運命のとおり貴族令嬢レジーナとして生きることも出来るけど、どうする。」
どうやらこのまま消えてしまうという最悪のパターンは回避出来るらしい。
ってか私って貴族として生まれる予定だったのか。ごくごく平凡な家庭に生まれたけどな。
貴族令嬢は憧れはあるけど、しきたりや礼儀作法なんかのめんどくさい事が多そうだし、何より私が令嬢に向いているとは思えない、めんどくさがりなんだもん。
今からそれらを叩き込まれたってモノにできる気もしないし。
そうなると選択肢は1つ。
「私のままでお願いします。」
今までで一番綺麗なお辞儀ができた気がするよ。
「OK。それじゃ生活に困らないように色々説明させてもらうわね。」
ローラ風に言われました。
私がやってもウザいだけだろうな。
前に平凡フェイスの友人がやってるの見てイラっとしたことあったし。
それを嫌味なくできるとか、美人って得だわ。
「まず私の世界の人は殆どが獣人なの、動物と人どちらの姿にもなれて猫族、犬族などさまざまな種族がそれぞれの国を作って暮らしているわ。数は少ないけど人族もいるのよ。
もとの世界と一番違うのは寿命かしら。種族によって差はあるけど、平均すると5000年くらいね。」
「‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
「質問は後で受け付けるから説明続けるわよ。
寿命が違うから成長スピードも違うの。10歳までは地球と同じだけど、それから極端に遅くなって100歳で成人。そこからさらに遅くなって5000歳で外見年齢は50歳前後くらいよ。お年寄りの外見になるのは竜族みたいに長寿の種族だけだからあまりいないの。成長スピードはどの種族も同じよ。
30歳だと12・3歳くらいだから、最初幼児化して違和感あると思うけどすぐに慣れるわ。」
現時点で頭が混乱しそうなんだけど大丈夫かな?
「まだ続けるわよ。
あなたみたいに別の世界から転移してきた子達を『落とし子』と言ってどの国でも性別・年齢関係なく手厚く保護しているから安心して。地球での孤児院見たいな施設があって衣食住は心配いらないし、歴史や一般常識、読み書きなんかの教育も受けれるの。
ランダムだけど施設の門前に転移するし、施設長には私から信託で訪れる落とし子の特徴や名前を伝えるから、そのまま呼び鈴を鳴らせば大丈夫よ。
私の世界は比較的新しくて魂の数に余裕があって、弾かれた子をよく受け入れるから制度はバッチリ整えてるの。
ファンタジーに付き物の魔法もあるけど、生活に使うような軽いものだからあまり期待しないでね。使い方は施設で教えてくれるし、誰でも使えるから。
あと説明してないことは・・・あ、そうそう私の世界には『運命の番』というものがあって、たった1人の運命の相手がいるの、地球みたいに曖昧なものじゃなくて出会ってしまえば必ず惹かれ合うし、その人無しではいられなくなるの。獣人は運命の番を匂いで感じとる事ができるけど、人族は獣人に比べて嗅覚が弱くて分かりにくいから相手に見つけてもらう事が多いけど。
世界は広いし運命の番を見つけられないまま一生を終える子も多いから、必ず巡り会えるわけじゃ無いけど。
説明はこれくらいかな。何か質問ある?」
「何が分からないか分かりません。」
正座して聞いてから足痺れたよ。
元の世界と違いすぎて馴染める自信が全くない。とりあえずの衣食住の心配が無いことだけは把握したよ。そこ大事。
それにしても、獣人とか魔法とか運命とかファンタジーだな。嫌いじゃないよ、むしろ大好きだよ。歴代愛読書は全部ファンタジーなくらいです。異世界トリップを空想するなんで日常茶飯事です。
今中二病って言った人挙手しなさい。デコピンします。
「いきなりだもんね、無理ないわ。
習うより慣れろ、百聞は一見にしかず。やってみないとわからない事ばかりだと思うけど、私の世界を楽しんでくれたら嬉しいな。」
ふわっと微笑んだ顔は聖母マリアの様な慈しみの表情だった。
何が起きるかわからない。不安でいっぱいだし、元の世界に未練もいっぱいある。でも戻れないものは仕方ないしくよくよしても何にもならない。なる様になれ、やってみるしかないんだから。
「エールさんを信じてみます。
それに自分の人生、楽しまないと損だしね。」
精一杯の笑顔を向けたら抱きしめられました。お胸で窒息するかと思ったよ。
「ありがとう。今まで怒られるは泣かれるは痛い子扱いされるわで素直に転移してくれた子いなかったから、正直怖かったのよ。
嬉しいから必ず幸せになる加護付けといたわ。」
親指立ててグッてやられたけど、大丈夫かそんなことで加護なんか与えて⁉︎
まぁ貰えるものは貰っておこう。お守りみたいなモノだど思っておけばいいよね。
「あ、1つだけ質問いいですか?」
「もちろんよ。1つと言わずいくらでも大歓迎よ。」
「いえ、今のとこ1つしかないんで。」
ションボリされた。
悪いことした様な気分になるけど本当に無いんだからしょうがない。
「もしですよ、もし何かしらの偶然で運命の番に出会ったて結婚した場合、竜族でしたっけ?みたいな長寿な種族が相手だった場合、私は相手よりかなり前に死んでしまうことになりますけど、伴侶ロスみたいになって後追いとかなったりしませんか?」
ウチの祖母は大丈夫だったけど、伴侶を亡くしてすぐ痴呆になったり病んで急死してしまうなんて話をよく聞くし。
好きになった人にそんな想いはさせたく無いんだよね。我儘かもしれないけど。
「優しいのね。大丈夫よ、運命の番に出会った時点で長寿の方に合わせて寿命が延びるから。」
「は⁉︎寿命が延びるとか、そんなファンタジーな‼︎」
「ファンタジーって今更じゃない?」
「そうだった。そうだったけど、とんでも設定だな。今まで読んできた小説にもそんな設定出てきたことないよ。」
「あらそうなの?でも割とあるのよ。私が知ってるだけでも27の世界で使われてるわ。」
「多いな⁉︎いや多いのか?
わけわかんなくなってきた。今更か?
とりあえず今までの常識は全て捨てた方がいいかな。」
「全部捨てる必要は無いけど、臨機応変にってことかしらね。」
臨機応変か最もだ。
とりあえず時間はいっぱいあるんだから、なれていくしか無いよね。
なる様になれだ。
バットエンドは回避できるみたいだし、人生楽しんだもの勝ちだ。
私の人生第2章、始まりです。