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反撃開始でタオシタイ

 テンポ・アドバンテージ。

 それが出撃前、エディナ様が語った俺たちの優位性である。


 俺たちの速度は単に足が速いというだけではない。

 俺というハードウェアが、剣を持ち、銃を構え、切る、撃つという一連の動作、それら一つ一つが従来機とは比べ物にならない速い。

 そしてエリサというソフトウェア。素早い判断力と決断力、操作速度。

 そして伝達された操作にタイムレスで反応し実行する二人のコンビネーション。

 それらが合わさることにより、常識では考えられない速度で動くことができる。


 敵が攻撃のための一動作する間に、俺たちは3動作以上動く。

 敵が剣を構えたその時に、俺たちは構え、振り上げ、斬り下す、までを完了できる。

 敵が銃を向けたその時に、俺たちは照準から逃れ、接近し間合いを詰め、打撃を負わせる。


 この優位性を最大限に活かし、敵を撃破する。

 だがその時、不吉な警告音と共に俺の視界の端に赤い警告ランプが浮かび上がる 


 向き直る、正面の敵は残り3体、量産型ルイン隊長機、砲撃ルイン、重装ディガス。

 3体が陣形を組もうとするが、その前に俺たちはダッシュで接敵する。

 隊長機が反応するが、何もできないうちに剣を突き立て破壊する。

 司令塔を失った残り2機が一瞬動きを停める、俺たちが相手ならその一瞬が命取りだ。

 一歩踏み込み砲撃ルインを切り捨てる、だがそこで耐久値の限界が来た剣が折れてしまう。


「ほあ!?せんぱいっ、折れたッス!」

「下、隊長機!」

「了解ッス」


 不測の事態にテンパってしまうところは若さ故か、俺がフォローすれば問題ない。

 後ろに下がり隊長機が握っていた剣を拾い上げる。

 それをチャンスと思ったのか、残り1機の重装ディガスは盾を投げ捨て、背を向けて逃げ出そうとした。

 

「逃がさないッス!」


 追おうと再度ダッシュをしようとする、その時。

 視界の端の警告灯がひと際大きく光りだす。

 膝が落ち、足が止まる。俺は倒れないよう腰を落としバランスをとる。


「うえ!?どうしたんッスか?」

「過熱だ。銃だ、撃て!」

「魔導銃ッス!」

 

 片膝をつき、一瞬で魔導銃に持ち替え管を接続し一撃、重装ディガスを撃ち抜く。

 首筋の装甲の薄い部分を貫通し、重装ディガスは倒れ動かなくなる。


 研究所を出て十数分、試験機に乗った新兵が初陣で2個小隊撃破。

 常識外の戦果と言えるだろう。

 

 しかし今度は視界に青い警告灯の光が映る。

 赤い警告灯は熱量、すなわちオーバーヒート寸前であることを示す。

 青い警告灯は魔導水残量を示し、ここで既に3分の1の魔導水を消費している。

 これは、予想より遙かに消耗が大きい。 


 格納庫を出てからずっと全力稼働したツケが回ってきやがったか。

 冷却には時間を置かなくてはならない上に、この魔導水残量では安全圏まで逃走するのは不可能だ。


「わわ、過剰加熱に魔導水消費量がえらいことになってるッス!せ、せんぱい、ごめんなさいッス、自分調子に乗っていたッス」

「いや、エリサのせいじゃない、そこは俺の管理分野だ、わりぃ」


 オペレーションは俺のお仕事。

 いや、撃破優先で意図的に無視してたんだけど。

 動きを止めたらやられてたしな、たぶん。

 

 次の決断しなければならない。

 魔導水を倒した敵機から奪うか?

 いや、補給にかける時間はない。

 研究所に戻るか?

 時間的に、突入も制圧もされていないだろうが、こちらも熱ですぐに動ける状態じゃない。


「はうう、せんぱい、自分らもうダメッスかね……」

「いや、諦めんの早すぎるぞ。まだ戦える」

「ヤケクソの特攻じゃないッスか?水はともかく熱はどうするんッス?」

「ま、普通ならしばらく休まないと排熱しきれないし、同じように戦えば今度こそオーバーヒートでお陀仏チーンだ」

「お陀仏は分かんないッスけど、策があるんッスよね?」


 この世界に仏教概念は無いようだ、そういや2人の女神が創造した世界って言ってたっけ。

 排熱は緊急時の最終手段を使えば、短時間なら動けるはずだ。。


 おそらくカキータは実験稼働データを元に戦力を計算して計画を立てたはずだ。 

 俺たちが強行突破で脱出を図る事も、旧型機の混じった1個小隊程度なら戦えることも織り込み済みのはず。

 脱出時に弱い1番部隊戦力をぶつけ消耗させ、本命の2番部隊で撃破か、研究所制圧までの足止めを行う、実験データ上戦力ならそれで十分だから、おそらくそういう筋書きだろう、とする。


 データの大本が同じなら、こちらにとって計算外の要素は敵にとっても計算外の要素足りえる。

 この常識外の短時間での2個小隊壊滅と当機の異常な消耗は、双方計算外のはず。


「勝算ありだ、やるぞエリサ」

「ういッス。せんぱいに秘策ありッスか?乗るッスよ」

「カキータは俺たちの戦力は模擬戦のデータで計算しているはずだ。多少ゲタを履かせていたとしても、燃費排熱無視でここまで短時間で撃破することまでは読めていない、とする」

「模擬戦じゃ3機相手で手いっぱいだったッスからね」

「敵にとって計算外の要素は迎撃部隊が早々に全滅させられた事、俺たちが早々に燃料不足で逃走断念するとは思っていない事」

「あー、要するに『なんでこんなに早く戻ってきてるんだよ』ってことッスね!」

「そこで奇襲をかける、と。模擬戦データじゃ俺達の力で2個小隊瞬殺なんて予想もできないだろうし、不意打ちで何機か潰せれば行ける、とういうかやるしかない」

「それ、結局特攻じゃないッスか!」

「勝機がある特攻は強襲と言うんだ」


 俺は戦術の専門家じゃないので、やることは単純だ。

 士官学校の優等生だったエリサが納得してるんだから、それほど的外れな策ではないはず。


「では始めるぞ、作戦名『もうやめて!背後から熱いもので激しく突いて早くイって!』」

「せんぱい、そのネーミングセンスはどうかと思うッスよ」

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