戦ってニゲノビタイ
俺たちのいた研究所は帝国貴族院復権委員会の魔導兵器に包囲されている。
1個中隊相当ということだが、正確な数は分からないので最大数20機程度と見積もって覚悟を決める。
時間は間もなく正午、一番星のカキータが指定した時間まであと少し。
少しでも生存確率を上げるため、おそらく投降を呼びかける準備をしているであろう時間帯を選ぶ。
「出撃!」
「出撃ッス」
俺はエリサと共に格納庫から外に出る。
出口は一つ、間違いなく待ち伏せされている。
俺は両手に盾を装備し体をガードしながら、全力で飛び出した。
大きくジャンプ、通常の魔導兵器は自分の頭程度の高さまでしか跳べない。
しかし、各部を強化され、エリサの動作を俺が高速でアシストしたルイン・リミテッドは、その3倍の高さまで跳び上がれるのだ。
上空から敵の配置を確認する。
入り口の左右に魔導銃を構えた量産型ルインが各1機。
正面―すでに跳び越してしまったが―に量産型ディガスが2機。
1個小隊の戦力、すなわち、全体の4分の1。
ならば!
「エリサ、ここで仕留めるぞ!」
「ガッテン承知ッス!」
上空から右側にいたディガスに向かって盾を投げ捨て、銃に持ち変え管を接続する。
高度から落下する重量物には相応の破壊力がある。
盾はディガスのセンサー類が集まる頭部に命中し、破壊する。
俺達はそのまま正面の量産型ルイン2機の背後に着地する。
跳び蹴りしようかとも思ったが、脚部を損傷しては元も子もないので止めた。
従来機では考えられないスピードにルインは反応ができない。
そのまま片方を背後から右手に持ち直した魔導銃で打ち抜く。
魔導銃は持ち替えた後、管を手首の供給栓に差し込まみ本体から魔導水を供給する仕組みだ。
指を器用に動かせない従来機はこれに時間がかかり、すぐに武器の持ち替えができない。
だが人間と同等以上の動きができる俺たちは、武器の持ち替えを一瞬で取り行えるのだ。
装甲の薄い背面を打ち抜かれ、ルインは沈黙する。
「まず1機め!」
「撃墜マークひとつ目ッスね!」
もう1機のルインがこちらに向き直る。
しかしその時俺たちは既にダッシュで間合いを詰め、剣を振りかぶった後だった。
ガシッと鈍い手ごたえと共に袈裟切りにする。
フレームを経たれ、魔導水供給管を切断されたルインはそのまま動かなくなる。
「2機目!」
「まだまだ余裕ッス!」
右側の頭部が破壊されたディガスはまだ動けない。
先に左側のディガスを始末する。
俺は脳内のデータを検索する。
ディガスはルインが開発される前の機種だ。
汎用性の高さと扱いやすさ、製造コストの安さで大量に使われていたベストセラー機。
後継機であるルインが生産されてからは、取って代わられつつある。
近年、生産数は減っているが、大量に普及している機体なのでまだ数多く使われている。
旧型とはいえ、使い慣れた機体を乗り換えたくない熟練パイロットの搭乗機や、大量にあるカスタムパーツで強化された機体は、現役の機体に引けを取らない性能を発揮する。
そして目の前の機体は、動きの鈍さからパイロットの技量は低い、装備もほぼノーマル状態、単に金がないから使われているだけの雑魚だ。
ダッシュ、左側のディガスを串刺しにすると、ディガスは動きを停める。
そして頭部を破壊され、動きもままならない右側のディガスにトドメを刺す。
「せーんっぱい!やりましたね、初陣で大勝利ッス!」
「ようし、このまま行くぜ!」
1個小隊殲滅まで数十秒、俺の戦力、いや実戦でのエリサの戦闘力は予想をはるかに上回っていた。
俺は方角を確認する。魔導水は最低限しか無い、そして敵の全容がわからない以上安全圏の都市まで最短距離で行ける道を走るしかない。
格納庫の扉が閉じたのを確認し、駆け出し研究所を離れるが、目前に5機の魔導兵器が立ちはだかる。
剣と巨大な盾を持つディガスが2機、先ほどの機体と違い装甲を強化された機体だ。
魔導砲、両手持ちの大型の銃を構えたルインが2機。
そして魔導銃と剣を持った隊長機とおぼしきルインが1機。
旧型で機関出力の小さいディガスを近接用重装機の壁にして、新型で出力の大きいルインに消耗の大きな魔導砲を打たせる陣形を取る。
ジャンプして跳び越せない距離ではないが、空中で撃ち落とされる危険性がある。
どう突破すべきか。
「せんぱい、ここは、こうッスよ!」
俺はエリサの操作に身を任せ、態勢を変える。前にかがみこみ、両手を地面につけクラウチングスタートのような態勢をとる。
「おい、まさか!」
「このまま正面から、行けますッス!」
そのまま低い姿勢のまま、ダッシュで近づく。
その速度もさることながら、通常の機体ではありえない低い姿勢だ、砲撃ルインは前方の重装ディガスが邪魔になり撃てないでいる。間合いは一瞬で詰まり、そのままスピードを載せた一撃で左側重装ディガスの両足を切断、無力化する。そのまま背後にいた左側砲撃ルインの頭部を左手の盾で叩き潰す。
右側砲撃ルインは武器の持ち替えが間に合わないと判断して、魔導砲で殴りかかってくる。背後にいた隊長機も剣を構え斬りかかってくるが、エリサは余裕で回避する。
態勢を立て直し、剣を構えて向き直ると、一瞬で2機を失った敵部隊は動揺して動きが散漫になっている。
「せーんぱいっ!予定変更ッス。こいつらはここで潰しておきまッス!」
「OKだ、後顧の憂いを立てるし、そのほうが速い!」
「行きますッス!」




