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今後のロボ生カンガエタイ

 紆余曲折を経て人口知能型の新魔導コアは完成した。

 元人間である俺の魂を注入した物に比べれば幾分性能は下がるが、余計な感情を持ち合わせていない分取り扱いやすく、量産しやすくなっているという。

 エディナ様は帝国に送る報告書をまとめ上げると、今回の研究が終了した胸を告げたのだった。


 その夜、 エディナ様もエリサも眠りについて静まり返った格納庫で今後のことを考える。


 ぐぎッぎっぎぎぎぎぎ


 歯ぎしりがうるさい奴がいるので、あまり静かじゃなかった。

 エディナ様と技術士官達は帝都で新魔導コア採用の作業に送らる。

 エリサはそのままテストパイロットを続けるか、前線送りになるかまだ正式には決定していない。

 そして困ったことに俺の取り扱いが白紙なのだ。

 すでに今後の開発に役立つでもなく、うっかり魂注入型のコアだと知られるのもまずい。

 戦場に送ろうにも、エリサ以外の者が乗ってもひどく取り扱い辛く性能を発揮できない。

 何という持て余されている感。


 などと感慨にふけっていると格納庫に侵入者が。

 技術士官の一人、カーター大尉だ。ビシっとした七三分けの髪型に、常に背筋を伸ばした姿勢が印象的な真面目な男だったはずだが、エディナさまの色気に当てられて夜這いにでも来やがったのか?

 いや、その後ろから見慣れない武装した男たちが続いている。

 俺は危険を感じ、エリサ達に危険を知らせるため大声を出す。


「カーター大尉、止まりなさい!深夜に無粋な連中を引き連れて淑女の寝室に踏み入るとは、どういう了見ですか?」

「ルイン・リミテッド、まだ起動していたのか」

「ぐぎぎぃ、うるさいッスよ、なんの騒ぎッスか?」

「うるさいわね、起こすのは朝ごはんできてからにして……」


 三者三様の反応を。

 カーター達は足を止め、こちらに向き直る。


「簡単な話ですよ、魔導コアの開発データをいただきたい、それだけです」

「うわ、何なんッスか!?カーター大尉、その人たち誰ッス?」

「コーヒーはミルクたっぷり入れなさい……」


 まだ寝てるやつ、さっさと起きろ。

 カーター達は俺を警戒して、一定の距離を保ちながら表情を変えず話し出す。


「新魔導コアの性能は素晴らしい、ずっと潜入監視していた甲斐がありましたよ。だがそれ故帝国軍に渡す訳にはいかないのです。わが組織に送り届け有効活用させていただきます。できればもっと早く穏便に済ませたかったのですが、あなた方が毎日格納庫で寝泊まりしているおかげでデータを持ち出すことができず、このような実力行使をするハメになってしまいましたがね」

「カーター大尉、真面目な人だと思ってたんッスけど、ずっと騙していたんッスか!」

「ククク、これは貴様らを信用させるための仮の姿だ。オレサマの本当の姿はぁ」


 そういうとカーターは七三分けのヅラを脱ぎ捨て、そそり立つモヒカンの頭を露にする。

 そして帝国の軍服を脱ぎ捨て、トゲ付き肩パッドという世紀末スタイルになると高らかに宣言する。


「オレサマはぁ、帝国貴族院復権委員会の一番星カキータ様だぁぁ!」

「何その組織」

「聞いたことがあるッス。帝国に昔の血統主義の貴族政治を復活させようとしている、ちょっとおかしなテロリスト集団ッスよ」

「他の技術士官達はどうした?まさか全員グルだったということはあるまい?」

「潜入しているのはオレサマだけだぁ。他の連中は既に拘束済みよ、さすがに長期間共に過ごした連中なので殺すのは忍びないんでねぇ。俺たちに就くなら使ってやってもいいし。オマエラもおとなしくしていれば危害は加えねぇでやんよ」

「そ、そんな無法がまかり通ると思ってるんッスか!?すぐ帝国軍にバレて組織ごと潰されるッスよ!」

「心配すんなぁ。博士が完成した研究データを持って試作機とともに皇国に亡命、証拠隠滅のため研究所は爆破され、データの回収は不可能、てっことになる予定だぁ。」

「一つ質問があるッス。自分たちが投降したとして、せんぱい、ルイン・リミテッドはどうするんッスか?」

「そんな運用しにくいモンいらねぇよ、研究所と一緒に木っ端微塵よ!」

「ベーコンはカリカリでお願い……」


 その言葉を聞いてエリサは顔色を変える。


「おとなしく捕まるわけにはいかないッスね。せんぱいを破壊させるわけにはいかないッス」

「クハハハハッ、魔導兵器で抵抗しても無駄無駄無駄、研究所周囲は1個中隊相当の魔導兵器で包囲してんだぜ。最悪技術士官全員と試験機全機で歯向かわれた時に備えての戦力だ、小娘一人でどうにかできるとかイカれたこと考えんじゃねーぞ」


 帝国魔導兵器部隊は、だいたい4~5機で1個小隊とされる。4個小隊で1個中隊とされるので20機前後、それも試験機ではなく武装したテロリストが。

 精細な地図は軍事機密ということで俺には知らされていないのだが、研究所はかなり辺境にある。

 こんな場所にそれだけの戦力を動員し、軍内部に潜入して研究データを狙っていたとか、この組織意外に大規模なんじゃないか。

 と考えている内に、エリサは毅然と宣言してしまう。


「絶対にそんなことはさせないッス。自分たちは研究所もデータもせんぱいも渡しませんッス」

「目玉焼きは半熟よ……」

「交渉決裂ぅぅ。ならば武力行使、と言いてぇところだが最高決定権をもつ奴の返事を聞いてねぇからな。ここは一旦引き下がって正午まで待ってやる。それまでにもう一度相談してどうするか賢明な決断を下しやがっれい!」

「目玉焼きにソースは邪道……塩、塩さえあれば他に何もいらない……」

「分かりましたッス、博士が起きたら伝えておくッス」


 カキータ達が出ていくと、エリサがへなへなとしゃがみこむ。


 「ま、まさか、カーター大尉のヅラは皆気付いてたんッス。けど、髪はデリケートな問題だからってみんな黙っていたのに、まさかモヒカンだったなんて信じられないッス」


  まずはエディナ様を叩き起こそう、話はそれからだ。



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