科学者の説明はどうにもクドイ
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文体変更
一部セリフと用語修正
二人の女神が作り上げた水と砂の大地の世界、エルベイル。
心優しき女神の作り上げた世界は豊潤で美しく、そして異界からの侵略に脆弱であった。
人々は戦力的にあまりアテにならない女神を頼らず、自らを鍛え、武器を作り、侵略者たちに対抗した。
そして最新最強の兵器といわれるのが、鋼鉄の巨人像を魔法の力で動かす、魔導兵器である。
「そのまんまやん」
「黙って聞け!」
べしっ
叩かれた。
だが魔導兵器単純な破壊能力こそ高いが、精密な操作、素早い動きは苦手であった。
そこで内部に人が乗り込み大まかな操作を行い、高度な計算能力を組み込まれた魔導兵器のコアが細かい調整とアシストをするというアイデアが生まれる。
「そして、より高度で精密な動きを実現するために、通常の魔導プログラムで上手くいかないから、人の魂を注入しその思考能力を利用しようというのが今回の計画だったのだけど…よもや人の意識と自我が残っていようとは…失敗ね」
わざわざ異世界から呼び出して生贄にしておいて、あげく失敗作扱いするとは、なんと失敬な!
「訂正を要求する!俺の鋼の意志と崇高な魂が邪悪な魔導に打ち勝ったのだと言ってもらおう!」
「うるさい!こんなんじゃ帝国の要望に応えられないじゃないの!」
何でも今俺のいるカザック大陸は南方の有力国家ベルザック帝国と北方の雄カザード皇国の間で戦争が勃発、自称偉大なる魔導科学の権威エディナ様はベルザック帝国からの依頼で革命的な新兵器の開発を依頼されたらしい。
そして帝国からせしめた金の大半をカジノで豪遊に費やしてしまい、その帳尻を合わせるため元手のかからない非道な人体実験に手を染める決意をしたということだ。
しかもアシがつかないように異世界人を使うという念の入りよう、意外と小心者じゃないのかこの人。
「口答えするんじゃないよ。失敗作の生贄の分際でさ!」
べしべし、また叩かれた。
今俺は最小限の燃料しか入っておらず、大きく身動きすることができないので口答えするしかない。
魔導兵器の動力源は魔導水という特殊な魔法込め精製した水で、二人の女神を祭った神殿にしか精製法が伝わっておらず、そこと取引しないと手に入らないらしい。
この研究所で使われる分は帝国が確保し、必要分を回してもらっているとのことだ。
俺の体と状況の説明が終わったらしいので、左右を見渡すと格納庫には俺の同型機が並んでいる。
そいつらはまだ実験をされていない、量産機らしい。
当初はもっとずんぐりむっくりの形態を想像していたのだが、意外とスマートですらっとした体形をしている。新車のように磨き上げられたピカピカの表面塗装も見事な仕上がりで、眺めているうちにこれはこれで悪くないという気分になってくる。
「なぁ、エディナ様よ。俺の機体、というか俺のセクシーボディに名前はあるのかい?」
俺の問いにエディナ様は、何言ってんだこいつはみたいな表情をした。
「あるわけないだろ、量産型ルインの限定改造機だよ、お前は!」
吐き捨てるように言う。
「量産機のカスタム仕様、そういうのもアリだな。さしずめ魔導巨兵ルイン・リミテッドというところか」
俺は一人で納得したように頷く。
「ああ、あと俺仕様の特別機なんだから、ツノつけてくれよツノ。特別感が欲しいんだよ」
「ああん?」
睨まれた。
しかしエディナ様は後日、他の機体と区別をつけるためという名目で額に小さなツノをつけてくれた。
なんだかんだ言いつつ、自作兵器への愛着はあるらしい、ツンデレさんめ。
「成功作品と間違わないためだよ、このドアホウ!」