表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/39

必殺のトッコウ

 女王ワームのブレスを浴びた隊長の重装型ディガスは動けない。

 空中で尾の直撃を受けた副隊長の高機動型ディガスは、地面に叩きつけられ手足があらぬ方向に曲がり、全身から魔導水を吹き出し動きを止めた。


「せんぱいっ、助けにっス!」

「跳ぶ、届かせる、行くぞエリサ!」


 俺は抱えていた魔族の両機を地面に降ろすと、両手に剣を持ち、ワームへ大きくジャンプする。

 

「ほぅ、骨占いの結果見るまでもなく、動かさないだね」


 マシュロはフジャ機を降ろすと、ルインの両手に魔導砲に持ち、ワームの顔の部分を撃ち抜き動きを止めた。


「くふ、手癖の悪い尾はこうですよ」

 

 チセの支援型ディガスが、肩の魔導砲と両手に持った魔導砲を連射して、尾を撃ち抜き攻撃を封じる。

 俺はワームの頭を跳び越える。狙いは胴体中央、両手の剣を交差させ落下の勢いのままワームの体にめり込ませる。


「名付けてクロス斬りッス!」

「名付けて必殺エックスシザーズ!」


 そのまま両手を広げ、ワームの太い胴体を真っ二つに斬り裂いた。

 二つに分かれたワームは大量の緑色の体液をまき散らしながら暴れまわる。

 尻尾の側はすぐに動かなくなるが、頭側はますます激しくのたうち回る。

 身動き取れない僚機に当たるとまずい。


「せんぱいっ止まるまで斬ります!あとネーミングセンスッ」

「水残排熱問題無し、このまま連撃だ!お前もネーミングセンスッ」


 技名については後々話し合いの必要があるな。

 俺はそのまま両手の剣を交互に繰り出し斬り刻んでいく。

 砲撃組の射撃が正面からワームの体を削り、その動きを鈍らせる。

 俺が最後の一撃を加え、ワームの動きが止まった。


 俺たちは手を止めることなく、負傷者の救助を開始する。

 チセは魔族3人を機体から降ろし、所持していた医療キットで応急処置を取り行う。

 マシュロはカリナを降ろし介抱している。

 毒を食らった4人は早めに処置をしたおかげで、命に別状は無い。


 俺は倒れ地面にめり込んだままの高機動型ディガスに近寄ると、ひしゃげた操縦席のカバーをひっぺがし、アンを救出した。


「引っ張り出すぞ」

「アン副長、怪我は無いッスか?」

「っと、不覚。おおよそ全身が痛いです」


 倒れた時の衝撃だな、幸い骨折などの重傷ではなさそうだが。


「おでこが赤いぞ、かわいい顔してるんだから痣にならないよう治療しとけ」

「っと、君は機械なのに恥ずかしいことを口にする」

「せんぱいっ、上官をナンパしないでくださいッス」


 二人同時に怒られた、なにこの理不尽。


「くふふ、魔族のお三方は問題無しね。あと小一時間も休めば普通に動けるようになるよ」

「ほぅ、隊長も問題無しね。鼻と口塞いで毒吸わないようしてただね。骨占いでは休養よーそろーだね」

「然り、ご迷惑をおかけした」

「あは、ごめん、手間かけさせたね。あの毒ブレス、思った以上にきつかったやね」


 俺達は穴を掘ってワームの死体埋めると、離れた所で休息を取りながら今後について話し合う。


 沼の氏族の巡視隊はすぐに体が動くようになったし、機体はほとんど損傷していない。

 報告の為そのまま帰参するようだ。

 

「然り、世話になった。カリナ中佐、この恩は忘れない」

「あは、それはお互い様やね」


 隊長は握手を交わし、別れの挨拶をする。


「然り、この機体ルイン・リミテッドは凄いな。我らの機体を2機抱えての跳躍とワームを屠る驚異的戦闘能力、人間同然の思考と感情、敬意を表するに値する高度なる技術」

「そうなんッスよ、せんぱい凄いんッスよ。自分が育てたッスから!」

「いや、お前は中で座ってただけで、育てられた覚えは無いんだが」

「何でそんな意地悪言うんッスか!愛情の裏返しッスか!」


 あえて育てられたというなら、今は帝都にいる研究所の皆様のおかげです。


「あは、我が部隊ながら凄いやね、いろいろと」

「然り、揃って素晴らしい部隊だ。共に戦えたことを誇りとする。ラジャ、フジャ、帰参するぞ」

「りょかいりょかい。第五小隊の皆さん、ありがとございました!」

「ぽふ、ありがとうございました、帰還いーよ」


 同世代の女性部隊同士という事で、随分仲良くなっていたので名残惜しみながら、別れを口にする。

 こうして沼の氏族巡視隊は去って行った。


 俺達も帰還準備をしなければならない。

 まず高起動型ディガスを回収し状態を確認する。


「くふ、これは自走は無理そうですよ」

「あは、やっぱそうだね。一番パワーのあるダイジロに運ばせよう。アンもダイジロの中に同乗して」


 俺の操縦席の裏側には例のトライクを搭載するためのスペースがあり、小柄なアン少佐ならばそこに乗せていくことも可能だ。


「了解ッス、副長、載ってくださいッス」

「っと、同乗です、おじゃまします」

「いらっしゃい、くつろいでってくれ。エリサ、お茶」

「っと気遣い無用。ダイジロは本当に人間臭いです」

「え、臭い?もしかしてどこか臭ってるッス!?」

「っと、エリサ少尉の腋の事じゃないです。そこはまだ酸っぱいレベル、にがいレベルじゃないなら許容範囲です」

「うわぁぁぁぁぁんッス」


 こいつ、腋臭かったのか。

 俺、嗅覚無いから今まで気づかなかったよ。

 ってか知りたく無かったよ、そんな話。


「くふふ、あちらは何やら賑やかですよ」

「あは、チセ。高起動型ディガスの修理はどれくらいかかりそうやね?」

「動かすだけなら3日。元通りにするには部品の手持ちが足りないですよ」

「あは、やっぱりそうか。アレ、カスタムパーツ山盛りだからやね」

「くふ、大隊本陣に持ち込むか、部品取り寄せで2週間って所ですよ」


「っと、エリサ少尉。戦場で汗を流す軍人であれば致し方ないです。あなたの腋が部隊一過剰であったとしても責める者は居ないです」

「おぅふ、部隊一ッスか……」

「もうやめてあげて!」」


 エリサのライフはとっくにゼロよ!

 副長、フォローになってないよ!


「副長は、なんというか、爽やかでかわいいッスから。汗臭いのとは無縁そうで、イイッスよね」


 確かに、この小柄で無口な銀髪少女は無味無臭感がある

 むしろ泥臭い戦場において爽やかさすら感じさせる。


「っと、そんなことは無いです。私は足がちょっと」


 そういって軍用のブーツを脱ぎ、小さな足を露にする。


「ぐほぅぇぇぇぇ、にがっッスめちゃにがッス!」


 エリサが大変なことになってる。

 ってか知りたく無かったよ、こんな情報。嗅覚無くて良かった!


「あは、では帰るやね」

「ほぅ、任務完了。骨占いの結果は順風あんぱん、今日のおやつは特盛万歳、だね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ