配属先のジジョウ
大陸南方の国家ベルザック帝国は、北方に隣接するカザード皇国と交戦中である。
とは言っても国境付近で小競り合いが続いている状態で、全面的な衝突には至っていない。
両国の戦力が拮抗しているため、両国とも大きく動けないでいるのだ。
主な戦場は、国境線の東部、中央、西部の3か所だ。
その中で最も衝突の少ない地域、それが俺が派遣される西部戦線である。
かつて研究所にいた頃に起きた戦いで、俺のボディはガタガタになっていたのだが、エディナ様が徹底的に補修・改良してくれたおかげですこぶる調子が良い。
俺の現在の立場は、新型魔導コア仕様の試作機の一体、人間並みの知能と感情と思考を持ち、驚異的な性能を発揮するが、それ故相性の良いパイロットがいなければ性能が発揮できない、やや扱いの難しい機体、ということになっている。
配属先は西部戦線マーカス大隊旗下第五独立小隊。
新たなるパイロットは俺を乗りこなせるだろうか。
テストパイロットとして俺と共に過ごした彼女は元気でやっているだろうか?
「おっはよッス!せーんぱいっ、あっさでっすよー」
搬送が終わり機能をONにしたら、良く知ってる奴がすでに搭乗していた。
俺の主電源入れたのはコイツか。
「んー、どうしたんッスか?反応無いですぞな?寝ぼけてますか?乗り物酔いッスか?お目覚めのちゅーがご入用ならお金次第で考えなくもないッスよー」
覚醒早々、なんでコイツテンション爆上げなんだよ。
てか、なんでここにいる?
「よ、エリサ、おひさ。お前戦地送りになったんじゃなかったっけ?」
「そーなんッスよー、聞いてくださいせんぱい。もうね、あの事件から今日まで聞くも涙語るも涙の物語がありましてーッス」
「いや、長くなるならいいわ」
「はわ!?扱いが雑ッス、しかも何で素で返すんッスか?長きにわたって離れ離れになっていた愛しいパートナーと感動の再開の場面ッスよ!!」
「いや、俺ずっと意識落としてたから、あんまり期間経った気がしてないから、そもそも二ヶ月くらいしかたってないから」
「そーなんッスけど、もっとこう色々無いんッスかね、離れててお互いの大切さを改めて思い知ったとか」
だから、ねーって。
「いや、そもそもお前、東部か中央の前線送りになったんじゃないの?何でここにいるの?」
「はいはいはい、よくぞ聞いてくれました!中央戦線に放り込まれましてね、あの日から今日まで聞くも涙語るも涙の物語がありましてーッス」
「それはさっきやった」
と言った所で外部から声がかかる。
「おーいって、エリサ!!ルイン・リミテッドの起動はうまくいったよね?早く降りてくるやね」
外部モニターで周囲を確認する。
場所は帝国駐屯地、魔導兵器収納庫内。
忙しく動き回る整備兵たちと、俺を取り囲む帝国の軍服を着た少女が4人。
これはまさか、噂に聞く美少女部隊というやつか!?
「なにこれ俺ハーレム!?美少女パイロット選び放題!?」
「はぁぁぁ!?何言ってんッスかぁ!?せんぱいに乗り込む美少女は自分一人で十分っスよ!」
心底心外だとばかりに抗議するエリサ。
お前黙ってればかわいいけど、三下っぽい言動とオッサン臭い行動でそういう対象に見えない。
「ゴラっ!早く降りてこいっやね」
「はいっ!サーセンッス!!」
少女隊の隊長らしき人物が怒鳴ると、ヤバイとおもったのか素直に降りる。
エリサが隊列に加わると、隊長らしき黒髪の少女が俺に挨拶してくる。
「あは、質実剛健!強化された各部に加え大出力機関に大型タンク装備か。中々使い出のある機体やね。私は第五独立小隊隊長カリナ・トーアラ中佐。よろしくやね」
「よろしくお願いします、トーアラ中佐。ルイン・リミテッド、サポートAIダイジロー・ササキです」
初対面なので猫被ってみる。
「あは、ホントに人間みたいな反応、おもしろい。ウチの部隊は全員ファーストネーム呼び捨てでいいやね」
「OK、よろしく、カリナ」
即タメ口になった。カリナ中佐からの好感度は最初から高めである。
イカした罵声を浴びせながら、新兵訓練するような人だったらどうしようか、とビビっていたが杞憂に終わった。
後で、戦場で鬼カリナと呼ばれ、僅か17歳で小隊長を任されている西部戦線きってのエースパイロットであると聞かされた。
そして彼女のもう一つの異名は、機体潰しのカリナ。
俺的にはこの異名の不吉さが気になるが、詳細は教えてもらえなかった。
現在の乗機は装甲を強化した重装型ディガス。
「っと、よろしく。副隊長アン・セカン少佐です」
一番小柄な銀髪の少女が副隊長だった。なんとエリサよりも若い14歳の少女で、士官学校を飛び級で卒業し、天才的な戦闘技術と冷静な判断力で帝国軍最年少の佐官に上り詰めたそうだ。乗機は高機動型にカスタマイズされたディガス。高価なカスタムパーツで固め、ピーキーにチューンされた機体は最新型にも劣らない戦力を発揮する。
「くふふっ、支援兵のチセ・ルデア大尉です。整備士も兼任していますので何かと縁があると思いますのでよろしくね」
分厚い眼鏡をかけ不気味な笑みを浮かべる彼女は、18歳にして上級技術士の資格を持ち、この部隊においては機体の整備も受け持つ多芸な人物。乗機は後方支援型ディガス、右肩に魔導砲を固定兵装として搭載した機体で、機動力は低いが厚い装甲と高い射撃能力を持つ。
「ほぅ、マシュロ・マシャロ中尉だね、骨占いでこの出会い吉と出たよ、よろしく」
若い女性上官を支える一番年長のベテラン兵20歳、南方の部族出身で鋭い眼つきをした訛りの強い人物。乗機は量産型ルイン。ノーマルの汎用性を尊重し、状況に応じて武装を取り換えどんな局面にも器用に対応する。趣味は骨占い……って何?
第五独立小隊は、皇国軍と対峙している本体とは別に、ある程度自由に動ける部隊で遊撃的な任務をこなしている。
最近は西部の魔族領の森林から湧き出る魔物狩りがメインだそうだ。
帝国西端は北側を皇国、北西を中立国家連合、西側を魔族領域と接していて、独立小隊の主な任務は魔族領域側への哨戒と魔物討伐。この大陸の魔物は大型のものが非常に多く、魔導兵器で対抗するのが主流である。
「あは、やろー共集合!新兵の乗機が到着した、明日からさっそくフルメンバーで哨戒任務に出る、以上解散!」
「「「「了解!」」」」
「あは、新しい機体だけに期待してるよん、さーて今回はどれだけ持ってくれるやねぇ」
隊長、不吉なこと呟くきながら宿舎に戻る。
そして夜、毛布を抱えたエリサが来た。
どうやら操縦席の中で眠るつもりらしい。
「せんぱい、せんぱい。聞いてくださいよー、新兵訓練マジきつかったッス」
中央戦線でたっぷりと新兵訓練という名のしごきを受けたとか、西部に転属されたが乗機が足りないので、料理洗濯ばかりやらされていたとか。
「あー、もう女子力上がりまくりッスよ。料理スキルカンストしてますよ、自分の手料理食べたいッスか?どうしよっかな~。あ、せんぱいご飯食べられないんでしたっけ?いやーごめんごめんッス」
訓練がよほどきつかったのか、それとも寂しかったのかいつも以上にお喋りだ。
正直うざい。
ぐっぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
気のすむまで一方的にお喋りしたら、歯ぎしりしながら寝落ちしやがった。
しかもお腹丸出しで、よくこれで女子力上がったとか言えるもんだ。
俺の手じゃ毛布を掛けなおしてやることはできないんだぞ。もどかしいが、どうしようもない。
「おやすみ」
一声かけてから意識を落とした。




