俺がなりたかったのはコレジャナイ
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男なら誰しも一度は憧れる、巨大ロボットパイロット。
だが現代日本に生れ落ちては、それはかなわぬ夢。
俺はコクピットを模した体感アーケードゲームや、自動車、バイクでその欲求を満たしていた。
そんな佐々木大次郎、32歳独身、さえないサラリーマンであった。
そして今、俺は四肢を拘束されベッドに大の字で縛り付けられていた。
どういうことだ、何が起こった!?
「やめろ、ジョッカー!俺に何をする気だ!俺は改造人間にはなりたくない、俺はロボ派なんだ、、改造人間はやめてくれ!!…提供スズキなら少しは考えてもいいぞ」
さりげなく条件付きで要求を通そうとするがそれは、冷たい女性の声により却下される。
「騒がしい男ね、、いい加減黙りなさい!」
声の方を見ると、そこにいたのは金髪の美人だ。
乳感あふれるナスバディに露出度抜群の黒光りするレザースーツ、それになぜか白衣を羽織っているのがセクスィー。
輝くプラチナブロンドに切れ長のクール瞳、俺を汚らしい豚のように見下す視線がたまんねぇ!
「貴様はこのエディナの偉大なる魔術の生贄にすべく呼び出されたのよ!おとなしくしてれば、せめて最後の願いくらいは聞いてあげようって、口は塞がないであげたんだけど、気が変わったわ、すぐに生贄にしてあげる」
なんという高慢ちきな態度!思わず様付で呼んでしまいたくなるじゃないか!
「な、魔術…だと!?ならば俺は飲み会で無理やりつき合わされた酒で潰れ公園で居眠りしている間に異世界に召喚されたというのか!」
「アンタの事情なんか知るか!私は私の開発した偉大なる魔術の生贄にふさわしい魂を持つものを異世界より呼び出したはずなの!まさかここまでイキのいいアホウが釣れるとは思ってもいなかったわよ!」
「異世界召喚だと!しかも魔術ってファンタジーかよ、やり直せ!SFを!未来世界を要求する!俺はロボットに乗りたいんだ!」
「だからアンタの要求なんか知らん!儀式が終わるまでおとなしくしてなさい!」
そう叫ぶとエディナ様は俺の口にタオルのようなものを突っ込んで喋れなくした。
「もがもごもがーーー!」
ファンタジー世界ならせめて勇者能力とかチート能力とか、赤髪炎使いのプリンセスヒロインとか、出すもんがあるだろ!
俺は、このままなんかよく分からん儀式の生贄にされただけで終わるのか!?
嫌ぁぁぁーーーー
……そしておれはそのまま意識を失った。
サヨウナラ俺の短い人生サン、母ちゃん、孫の顔を見せてやれなくてごめんよ…
目を開く。
俺は生きているのか?
なんだか妙な女にどやされていたような…あれは夢だったのか?
「フフフ、ようやく目覚めたわね」
あ、聞き覚えのある声、やっぱり夢じゃなかったんだ。
「演算能力の低い旧型人工知能に代わり、人の魂を注入し演算能力を向上させ高度な思考能力と判断力持たせ激的に性能を引き上げる、この実験は成功したのだ、ククク、ハハハ、ハーッハッハッハ!!」
そこは悪の女幹部らしく、オーッホッホッホって笑ってほしかったところ。
俺はようやく、はっきりしてきた視界で前方を確認する。
大きな天井、周囲に張り巡らされた鉄製の足場のようなもの。
そして、見下ろした先にエディナ様。
何となく既視感…これは巨大ロボットの格納庫ではないのか?
ならば俺は今巨大ロボットに乗っているのか?
俺は足元のエディナ様を見る、そして右手が動くことを確認する
グーパーグーパー。
がっちょんがっちょんきりきりきり。
……俺の手から駆動音が!?
もう一度足元で高笑いを続けるエディナ様を確認する。
これが俺の手だと仮定し、今の目線がそのまま頭の位置だとすると、推定14~15メートル程度の高さということになる。
そしてこの巨大な鋼鉄の手!
皮膚の感触はないが動かした感覚は間違いなく俺の手だ。
そして導き出される結論……俺は魔法世界で魔導で動く巨大ロボットにされてしまったのか!
惜しい、ニアピン。
俺はロボットそのものじゃなくパイロットが良かったんだよぉぉぉ!!
俺は俯き両手で頭を抱え込む。
エディナ様はこれを服従のポーズと捉えたのか、より一層高笑いを続けるのだった。
なにげに肺活量スゲーな、この人。