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壁に耳あり

作者: デョ

別作品が書き進まない鬱憤を込めて書いた。


後悔はしてないがローファンタジーというジャンルで本当に合ってるのだろうか?

私の朝はそこそこ早い。


目を覚まして目覚ましで時間を確認すれば時間は朝5時00分。


今日もいつも通りの時間に起きる。


一緒の布団に寝てる愛しい夫を起こさないように気を付け寝顔を見ながら体を起こせば昨夜の甘い疼きの残滓(ざんし)が少しだけ溢れた。


布団から出て部屋に有る私の本体(からだ)を見やれば、昨夜の激しさを表すかのように彼方此方に穴が空いていた。


胎内に残る夫の残滓を消化しないように気をつけながら妖術で本体の修復と着替えを一瞬で済ませる。


以前、寝坊して夫より後に起きた時などはズタボロになった本体を見られ、本気泣きの土下座で謝られて思わず狼狽えてしまった物だ。


更には仕事日(平日)であるにも関わらず、仕事を休んで私の看病と家事をやろうとし出したので、ついつい叱り飛ばして出社させたのは良い思い出だ。


AM5時12分、手を洗いコンロに火をかけ味噌汁の準備をしたら昨夜セットした炊飯器の米が確り炊き上がってるのを確認、冷蔵庫の中のここ数日の残り物から今朝のオカズと弁当のオカズをピックアップ。


それだけだと足らないので手早く追加のオカズを準備しながらご飯を弁当に詰めて扇風機の風に当て水分を飛ばす。


そういえば、あの日は帰りに様々な柄の修復部材を買ってきてくれたっけ。


結局、修復部材での模様替え(ファッションショー)で夫が興奮して遅々として進まなくて更に謝られてしまったのは良い思い出だ。


「お早う」

「お早う〜」


AM6時00分。


義妹達が起きてきた。


「お早う、顔洗ってらっしゃい」


二人が風呂場へ行く。


弁当の水気が十分に飛んだら蓋を閉める。


AM6時15分。

夫が起きてきた。


「お早う」


「お早う、ほら支度して」

夫が風呂場へ行くと入れ替わりで義妹達が戻ってくる。


三人揃った所で一足先に朝食を頂く。


「「「頂きます」」」


うん、今日も良い出来。

「あ、義姉ちゃん、帰ってきたら攻略手伝ってよ?」


と下の義妹。


「あら、帰ってきたら先ず宿題、でしょ?」


「「学校で友達と済ませるから大丈夫!!」」


「家でやらないの?」


「「ゲームする時間が減るからやだ!!」」


夫と義妹は世に言うゲーマーだ。


「遅くなったら駄目だぞ」


ある程度の身仕度を済ませた夫が食卓につきながら言う。


「は〜い」

「はい」


朝食を食べ終わるのはいつもほぼ同時。


「「「ごちそうさまでした。」」」


「おそまつさまでした」


朝7時00分、義妹達が小学校へ行く時間だ。


「行ってきます」

「行ってきま〜す」

「行ってらっしゃい」



元気に登校する二人を見送る。


あと数年すれば私の見た目年齢を越えるであろう二人。


いつかは義姉と呼ばれなくなる日も来るのだろうか。


そう思うと今がとても眩しく思える。


「俺もだよ」


優しく抱きついてくる夫。


「まだ何も言っていない」


妖怪は私なのに夫はさながら心を読む妖怪『覚』(さとり)のように此方の心を読んでくる。


「表情で分かる」


二人を見て眩しさと寂しさの入り交じった表情をしてたと夫は言う。


それほどまでに分かりやすいのだろうか?


知り合いの『千年蟲』(せんねんちゅう・ミレニアムワーム)からは表情が薄くて読みずらいと言われたのだが。


そしてお互いこのまま朝のスキンシップと洒落込みたい所だが今は差し迫った問題がある。


「…時間」


現在、朝の7時30分、夫が出勤の為に家を出る時間である。


夫はチラリと時計を見るとフムと頷き、


「ちょっとこっち向いて?」


「…?

…!」


視線が絡んだ瞬間、夫の舌が口内を蹂躙した。


驚きで固まる私を他所に蹂躙は20秒、30秒と続き互いの顔が離れた時には2分を過ぎていた。


「ごちそうさま、行ってきます」


「…!

〜!」


結局、夫の暴挙に為す術無く蹂躙された私は声無き悲鳴を挙げて抗議する事しか出来なかった。


…、毎回、同じ手でしてやられる辺り、隙だらけなのだろうか?


身体能力なら圧倒的に勝ってる筈なのだが…。


AM11時00分。

掃除と洗濯と食器洗い、それと各種妊娠検査キットによる自己診断が終わると一気に暇になる。


西洋妖怪用、日本妖怪用、都市伝説用の三種のキットの反応はいずれも陰性。


今回も駄目だったようだ。


こういった事は人間以上に授かり物なので落胆は無い、気儘に待つしか無いのだ。


ただ、検査キットを三種も使うのは何気に生活費を圧迫する。


人間用の検査キットでは調べられず、妖怪用の検査キットなど市販されてる筈も無いので、これ等は全て妖怪にも対応してくれる奇矯な産婦人科で購入した物だ。


普通の妖魅怪物の類いなら一種類で十分なのだが、私のように特殊な生まれの者は対応する検査キットの種類を調べきれないのでどうしても複数必用となるのだ。


私は西洋生まれ、西洋育ちの日本妖怪で、生い立ち(来歴)を話すと『お前は都市伝説(笑)か!?』と突っ込まれるような生まれなのでこれは仕方の無い事なのだと流しているのが現状だ。


さて、これで休日なら夫や義妹が居るので昼食を準備する所だが、私は妖術を濫用さえしなければ1日2食で十分なので夕食の下拵えが済めば洗濯物を取り入れる時間までは暇が出来るのだ。


これで本の類いやバラエティ番組が好物であれば暇が潰せるのだがあいにくそれらは私の趣味ではない。


私のような暇をもて余した女性を日本では勇敢マダムとか言うそうだ。


字面から推測するに恐らく戦闘なり狩猟なりで欲求を充たす事で暇を潰す女性の事だろう。


父が生前言っていた『祖国(日本)は修羅の国』発言もなるほどと頷ける話だ。


そして私も夫に相応しい勇敢マダムたるべく、行動に移す。


とはいえ、私達の住む家はそこそこ街中に有るので、近所に山林の類いは無い。


比較的近い場所でも車の往復で半日はかかってしまう。


移動系妖術が使えない私では遠出をすると夕飯の支度や洗濯物の取り込みに間に合わなくなってしまう。


だが、そんな私にも心強い味方がいる。


それがこの『妖怪用VR(ヴァーチャルリアリティ)マシーン』だ。


これは今出回っている民間の人間用VRマシーンの雛型とも言える機体だ。


元々は先述の千年蟲が人間の恋人とイチャコラしたいという理由で研究、更には夫の勤め先と共同開発した機体だ。


他にもおおまかな理屈は夫と千年蟲から聞いたのだが私にはほとんど分からなかった。


これが年齢一桁差分の年代格差(ジェネレーションギャップ)という物かと素直に感嘆したものだ。


まあ、そういう事で妖怪の私でもVRが楽しめるという訳だ。


勇敢マダムとしての努めを存分に果たそうではないか!


PM2時00分、干していた洗濯物を取り込む。


取り込んだ洗濯物は下着衣類、各人の私物と家族の共有物等、項目毎に仕分ける。


我が家では洗濯物の内、私物は各人で畳む事となっている。


これは家庭内教育の一環で日頃からの整理整頓を癖付ける為のだ。


共有物は少量なら私が、大量なら早目に帰ってくる義妹達と手分けして、休日なら全員で畳む。


さて、再び暇が出来たのだし勇敢マダムの努めを続けるとしよう!


「ただいま」

「ただいま〜」


PM4時00分。

義妹達が帰ってくる。


小学生としては遅い帰りだが、朝の言葉を有言実行したのだろう。


全く、困ったものだ。


「と言いつつも確りニヤけてんぞ、義姉ちゃん」

「説得力が有りませんわ、義姉様」


そんなに顔に出てるのか?と動揺しつつも各々の洗濯物を畳むように言うと歓声を挙げながら自分達の服を持って蜘蛛の子を散らすように散っていった。


PM4時30分。

畳終わったであろう頃合いを見計らって下の義妹のゲーム攻略を手伝う。


下の義妹は男性向け恋愛SLGのゲーマーだ。


そして今、義妹が攻略に難航してるのは確率の怪物、『物欲センサー』。


ネット全盛の時代からその存在を囁かれた都市伝説だ。


その内容は色々有るが、一説には『物欲が刺激されると欲するモノが更に遠ざかる』等と言われている。


現に今、義妹が攻略してる攻略対象は『条件を満たせば80%の確立で出現するヒロイン』とされている。


にも関わらず、義妹が攻略する事、条件を満たしてから一週間、いまだにそのヒロインは出現していない。


最新のゲームなら更なる隠し条件を疑う所だが、義妹の遊ぶゲームは販売から数年、世間では既に完全攻略が成されたゲームだ。


よって秘匿された出現条件等無く、純粋に義妹が不運というだけの話である。


義妹曰く、


「たとえ相手が当選確立エンドレスナインに達してようが欠片でも確立が有るならあたしゃ100%スカを引く自信が有るよ…」


との話だ。


物欲センサーとやらの支配力は凄まじいものなのだろう。


だが、私には関係の無い話だ。


本の少しプレイすればヒロインはあっさり出現。


始まったミニゲームで義妹がこれまたあっさりと好感度を稼ぐ。


コントローラーが往復する事数回。


攻略は順調に進むのであった。


PM5時00分。

義妹達に留守番を頼み、近所のスーパーに出かける。


タイムセールが始まり、見切り品を何品か購入。


そういえば味噌があと数日で切れそうだった。


チラシのセール品目にも載ってたしついでに買っていくとしよう。


味噌のコーナーに行くと本日の特売品の味噌が二種類有った。


片方は『LOVE米味噌』。

この味噌のメーカーは恋愛アニメのスポンサーを何件かしている。


その為、どのパッケージにも美少女キャラのイラストがついてるのが外見上の特徴だ。


味の方は様々な米に合う味わいが特徴で、この味噌で作った味噌汁があると、とかくご飯が進む、義妹達が好む味噌だ。


もう一つは『最強味噌』。

此方はバトルアニメのスポンサーとして有名なメーカーで、パッケージにはバトルアニメのキャラが描かれている。


どんな味噌料理にも使える最強の味噌を標榜している。


最強を名乗るだけ有り、濃厚な味が特徴だ。


夫の好みは此方の味噌だ。


どっちだ!

私はどっちを選べば良い!


値引き対象は二種類合わせてお一人様二パックまでだ!!



「ただいま」

「おかえり」

「「おかえりなさ〜い」」


PM6時00分。

悩んで時間を食ってる間に夫が帰ってきてた。


結局一パックずつ買ってしまった。


意思薄弱とはこの事か。


嘲笑いたければ嘲笑うが良い!


今の私はさながらAVに出てくる勢いに流されて事に及ぶ女のようだ。


…と、自虐的な気分でいたら夫や義妹達からは「気にしすぎ」と突っ込まれた。


だからお前等は覚かと(以下略)。


PM7時00分。

皆で食卓に付く。

今夜のオカズは肉野菜炒めとホッケの焼き魚だ。


それらを摘まみながら今日の出来事で話題に花を咲かせる。


そのほとんどがゲーム関連なのはご愛敬だ。


PM7時30分。

夫婦で食器を洗う間に義妹達が入浴を済ませる。


「なあ、早く姪っ子か甥っ子が欲しいとは思わんか?」


夫が風呂上がりの義妹達になにやら怪しげな事を吹き込んでいる。


「「欲しい」」


しかも義妹達は肯定的だ。


「なら部屋で大人しくしてるんだぞ?」

「応ともさ、兄ちゃん!」

「シューティング・パズルの最終日だから今日は部屋から出ませんよ、兄様」


味方は…、

味方は居ないのか!


その願いもむなしく、風呂で確りと磨き解された私は今宵も(とこ)で勝ち目の無い迎撃戦に挑み、あっさり蹂躙されるのであった。


こうして今日も一日を閉じる。


いずれは夫も義妹達も、私を残して先に逝くのだろう。


だが…、否、だからこそ毎日が愛おしいのだ。


私の名はメアリー。

障子の付喪神だ!

登場人物


・夫

名前:(ぬくし)

変更点:特に無し

二十代半ばの日本人男性。

父母は既に他界している。

欧州の片田舎の古道具屋で売られていたメアリーに一目惚れして口説きおとした青年。


・妻

名前:メアリー

変更点:口調をゆるふわ系から硬めに変更

明治維新の時代に『西洋の文化や技術は全てに於て日本を凌駕している』という誤解を鵜呑みにして、ありもしない『日本よりも遥かに優れた障子職人の技』を学ぶ為に渡欧した日本の障子職人によって作られた障子の付喪神。


・上の義妹

名前:ミホ

小六の廃ゲーマー。

好きなジャンルはパズル系。

格闘ゲームの大会にも参戦していて毎回上位入賞している。

ハンドルネーム(HN)は『鋼の妖精』


・下の義妹

名前:千織

小四の男性向け恋愛SLG(ギャルゲー)ゲーマー。

但し、物欲センサーにほぼ100%引っ掛かる為、家族の迷惑を避ける為にも確立が絡むゲームにはあまり手を出さない。


・千年蟲

名前:犬畜生

千年蟲だが日本生まれの日本育ち。

恋人からイチャコラしたいと拝み倒されてVR開発の針を一気に推し進めたネット界の怪人としても有名。

本業(電子情報)以外の様々な知識にも精通している。

犬人のアバターを多用する間に犬畜生と名乗るようになった。


・没ネタ

埼京味噌:埼玉〜東京間の沿線のスーパーで売られているという設定の架空の味噌。


最強味噌との二択で迷った。



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― 新着の感想 ―
[一言] 限界はありますから、すぐに勝てるようになりますよ? なにとは言いませんが………
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