どうしてこうなった
今回は、この世界に生息している植物の説明回になります。
物語的には全くと言っていいほど進まないですが、想像して楽しんでもらえたらと思います。
次の日
「ふいーっ、復活!」
はい、ナツリム復活です。
ちょっと、いや、かなり部屋の中が大変なことになっているけど、元気です。
起きたのは夜の一時ごろ。
気分は爽快。今朝のだるさなんて目じゃないくらい、スッキリと起きられた。
私はいつも、夜の二時ぐらいに寝て、夜の六時過ぎには起きているから、そこからさらに寝て……十一時間も寝ていたらしい。寝すぎだ。
あ、でもここ最近は忙しくて、一時間程しか寝れてなかった気が……。
……熱出たの、そのせいかも。
まあ、それは置いといて。
……何故、私の部屋が樹海になっているのだろう……。
私の部屋は、大体五メートル四方の正方形の形をしている。
町の宿屋の一室と比べたら、少しっていうかまあ、かなり小さいとは思う。けど、部屋にはベッドと、簡易な机、クローゼットは壁と一体型で、それに本棚があるだけなので、私一人の空間としては十分。
で、その空間を埋め尽くしている植物達なのだが。
※『ここからは、ナツリム流バスガイド風アナウンスをBGMに想像しながらお楽しみください』
まずは皆様右側をご覧ください。ちなみに、今私は南向きの窓を背にしているので、右と言うのは東側でございます。
で、東に見えますのは、高さ二メートルの、かなり小さめな樹木達です。幹の太さは、大人が抱きついて向こう側で手が繋げるぐらいとなっております。
それが部屋の東側に、でんと一本。
これらは地図上で東の方にある森、通称【迷いの森】に群生している、孝老樹でございます。
孝老樹とは、根を地面に張らない珍しいタイプの樹木です。根を張って水分などを吸収しない分、光合成や葉の呼吸による栄養摂取に優れています。
また、空気を浄化する作用も、他の樹木と比べると圧倒的に優れていると言われており、根が生えておらず持ち運びしやすいということで、一家に一本必ずあると言われています。……まあもちろん、庭に、ですが。
しかし、迷いの森はその名のとおり、来たものを無差別に迷いこませる、脱出困難な森。
生き物は生息しておらず、一度入れば、もう帰っては来ないと言われている、魔の森なのです。
それなのに何故、皆が家に所持できているのかと言うと、単純な話、電車ごっこみたいに人が繋がっていれば、迷うことはありません。(ちなみに、縄だといつの間にか切れていて機能しないので、人同士が繋がっていることが必要です。)なので、年に一回、レクサスの町の人全員が集まって、迷いの森に入るという大きなイベントがあるのです。
ちなみに、孝老樹は、何故か分かりませんが人が触れてからは一度地面に置くと、次持ち上げたときには浄化作用が無くなり、みるみるうちに枯れてしまうという、不思議な性質も持っています。
……ええ、なんで、その樹木があるんでしょうね?異邦人さん達以外が誰もいない町を想像してしまいましたよ。まさかね……?
……では次です。皆様、左側をご覧ください。西側です。
西側には、真っ赤な花が花瓶一杯に飾られており、窓から入り込む日差しを浴びて、美しく咲き誇っております。花は、まるで双子のように、一本の茎に二つついており、お互いが寄り添うように、左右別の方向を向いています。
その美しい花の名前は、癒双花。地図上で西の方にある、巨大な湖の中、通称【沈黙の湖】に生息しています。
癒双花は、名前にあるとおり、主に病気の人を癒すために使うと言われています。実際にそう使っているところは見たことが無いですが、その性質上、そう使うのが一般的とされています。
そしてその性質なのですが、癒し双花の一方の花の花粉は、人々をリラックスさせ、どんなに激高している人でも、大人しくなると言われています。
そして、もう一方の花の花粉は、自然治癒力を高め、怪我や病気が治りやすくなると言われています。
一度摘んでしまえば、その寿命は僅か一日と儚い花ですが、多くの人の希望の象徴でもあります。
さて、そんな花ですが、実はとても採取が難しいのです。
沈黙の湖には、その昔、恋人に裏切られ、湖に身を投げて自殺した女の人がいるそうです。
そして、そんな女の人を慰めるため、女の人を密かに慕っていた双子の男の子と女の子が、花となって湖の底で咲いているという話なのですが。
…そんな感動的な話があるため、まず採取しようという気持ちになれないのが一つ目。そして、とても深いところにあるため、泳ぎの才能でもない限り、絶対に取りに行けないというのが二つ目。(ちなみに、泳ぎの才能は、我が家ではミツ姉が持っていると言っていました。)
この二つの理由があるため、滅多なことでは使用されないのです。されないの、ですが……。
ええ。なんで、こんなところにあるんでしょうね……。
気を取り直しまして、最後は目の前、北側をご覧ください。
目の前には、巨大な狸が……………何故、最後だけ植物でもなく狸なのか。…まあ、なんとなくわかりますが。
しかしよく見ると、それはただの狸では無いことが分かります。その全身は金色で、窓から入り込む日光によって、まるで狸自体が光輝いているかのよう。そこにはムラなどが一切なく、とても丁寧に塗装されていることが分かります。
大きさもかなりのもので、一メートルはゆうに越えています。多分、一メートル五十センチってところでしょうか。
それだけのものを作るのに、いったいどれだけ苦労したのか。その職人の魂まで込められているような錯覚を覚えます。
この狸は良し。家宝にします。
とまあいろいろ言ってみたものの。これだけ様々なものが集まった理由は、まあ、なんとなくわかる気がする。
私の部屋に入るのは、私の家族のみだ。
その中の一人が、変な知識を持っていて、部屋の中をこのような状態にしたのかもしれない。
もしくは、町の人に相談して、その意見を参考にして、こんなに沢山のものを集めたのかもしれない。
部屋がごちゃごちゃになっちゃったのは、ちょっと嫌だけど……皆私のことを心配してくれてたんだと思うと、ちょっと嬉しいし、ありがとうって言いたくなった。
でも、それとこれとは別だ。
部屋はちゃんと綺麗にしてもらうからね!
グウゥゥ……(腹の音)
……その前に、レイ兄にご飯つくってもらおう……。