異邦人登場
異邦人さん達がやって来たらしい。
私も街の皆も話せるようになっていたから、すぐ分かった。
異邦人って、どんな人たちなんだろう。今すぐ見に行きたかったけど、我慢我慢。
私には店番という、立派なお仕事があるのだ!
……まあでも、店番は店の奥にいなきゃいけない、なーんて決まりは無いし?
ちょっと外を覗くぐらいは、いいよね?
うっぷ、気持ち悪い。
どうやら、人酔いというものを体験してしまったらしい。
目の前を通り過ぎる人の波。
まさに人、人、人ってなもんで、思わず「うわあああ!!」って叫んじゃったよ!!
しかも、異邦人さん達が来て話せるようになっていたから、何事かと近くにいた人がこっちを見てきた。ものすっごく恥ずかしかったね。
「こんにちは!下級HPポーション十個下さいな!」
「あ、はい!十個で1000リグになります!どうぞ!」
さて、店の奥に引っ込んで、数分後。
さっそく、異邦人さんが私のお店に来た。私のお店は、所謂道具屋だ。ポーションからいろいろな素材、各種作業セットだってあるんだから!在庫数なら多分町一番さ!
……でも、何でか知らないけど、異邦人さん達には下級しか売っちゃいけないんだって。町の人にはそれ以上のもの、例えば上級とかだって売ってるのに、何でなんだろう。けちってるのかな?
ボーッとしてると、不意に目の前に影が。大きい人だなあ。
……あれ?なーんか店内が煩いぞ?
大きな人の影から店内を覗いて見る。
…えええええええええ。嘘でしょ?
お客さん、いーっぱい。
……どうやら、休憩の時間は終わりのようです。
在庫足りるかな……。
ちょっと心配になってきた。
多分最後のお客さん(異邦人)を笑顔で見送って、一息。
……異邦人さん達が来てから、なんだかのびのびできている気がする。話すこと以外にも、いろいろ何かが変わっているみたいだ。
前は、こんなにいろいろ考えられなかったし……。異邦人さん達が来たことと、何か関係があるのかな?
暇になったので、少し、私の家族のことについて考えてみる。
…パッと思い浮かんだのが家族のことって、私、人との交流少ない……?
まずは、お父さんのレオナルド。元冒険者で、現在は畑仕事でお金を稼いでたり、ポーション素材を畑で育ててくれている。
元ってつくのは、別に冒険者を辞めたわけじゃなくて、それ以外のことでお金を稼いだりして生活してるからなんだって。 だから、たまに指名依頼を受けてたりするんだ。
お父さん、これでも昔は二つ名がついたくらい強かったんだって!詳しいことは、なぜか教えてくれないけど。
次に、長女のミツラム。現役の冒険者で、家族の中じゃ最強で最凶。魔物の素材とか、いろいろと取ってきてくれている。あとは換金してお金稼ぎとかも。
二つ名は『爆水神』。由来は、水の属性の魔法剣士だからって言ってたんだけど……。こんな二つ名をつけられるなんて、ミツ姉、どんな戦い方してるんだろう……。
その次は、長男のレイモンド。料理が上手で、家事はなんでもできる主夫さん。ご近所付き合いが豊富で、いろいろなことを知っている。
冒険者にはミツ姉がなるからって言って、冒険者ギルドとか、そういうところには滅多に行かないんだけど……正直、レイ兄は実は冒険者なんじゃないかと密かに思っている。沢山の冒険者を見た私のカンが、そう囁いてくるのだ。
そのまた次は次男のロイナード。お父さんの畑を継ごうと日々勉強中。あ、あとミツ姉から剣術も習っていたり。
でもまだ全然ダメダメらしくて、冒険者はまだ名乗っていない。素質はあるって、ミツ姉は言っていたから、いずれは冒険者になるんだろう。
最後に、弟のルーベンス。一番下だからか妙に不器用で、家でゴロゴロしてる。……今後に期待したいところだけど、大丈夫かなあ?
姉心としては、冒険者になって活躍して欲しいなーとか思うけど(もちろん、死なないぐらい強くなってからね)、私と一緒に店番もいいなあ。だって、ルーベンスまで冒険者になっちゃったら、私だけ仲間はずれだし(私の中ではレイ兄は冒険者確定だ)。……そうなったら、私も冒険者、目指してみようかな?
……こうして整理すると、今やっていることとかの見て分かることは知っているけど、誕生日とか、好きなものとか、実は全然知らないことに気がついた。
やっぱり、会話とかしないと、ダメダメなんだなあって、思ったり。うん、コミュニケーションは偉大だ。今度いろいろ聞いてみようっと。
ちなみに、私はナツリム。ここ【始まりの町 レクサス】の道具屋の看板娘。特技は器用さを生かしたポーション作りで、戦闘もそこそこかな。しっかりもので、笑顔が眩しいぴっちぴちの美少女だよ!……なーんて、全部自称なんだけどね。
「すいませーん」
「はーい!今行きます!」
おっと、お客さんだ。考えるのは一旦おしまい!お仕事頑張らなきゃね!