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とあるイベントNPCの見る世界  作者: 鷹野メツ
第一章【始まりの町レクサスとポーション騒動】
19/27

これにて解決?

次の日。


目が覚めたら、王都へ行くのに協力してくれた異邦人さん達数人と(フレイアさんはもちろんいました)、メイおばさんと、お父さんが道具屋の入り口に集まっていた。

いったい何事?と様子を見ていたら、私に気づいたお父さんが手招きをしてきた。

私にも関係してることなのかな?





私が降りてくると、話し合っていたのか、こちらに背を向けていた皆がいっせいにこちらを振り返る。

その中からメイおばさんが一歩進み出て、言った。



「薬草を盗んだ犯人、捕まえたよ」



はい?

えっと、メイおばさん、どうだって顔してますけど、よく意味がわかんないです。

え、昨日の今日で捕まえたんですか?

お父さん達もうんうんって頷いてるし……え、本当ですか?


協力してくれた異邦人さん達は、その中で三人の異邦人さんを囲んで、逃がさないようにしていた。

打ち合わせでもしてたのか、フレイアさんだけ出てきて、取り囲まれてる異邦人さん達を指差して笑顔で言った。あ、この前の金髪の人もいる。


「ナツちゃん、この人達が犯人だよ」

「さて、てめえらわかってんな……?(ぼそっ)」

「「「ひっ!す、すみませんでした!!」」」


フレイアさんが笑顔で衝撃発言。

犯人だと言われた人達は、金髪の人の般若みたいな顔を見て怯えている。……え、この人たちが犯人さんなんですか?

お父さん達も心なしか冷たい目をしてるし、どうやら本当みたい。

その三人の中には、洞穴の中で昼食を作ってくれた人もいて。

手伝ってくれたのにどうしてって、納得できなかった。





「どうして、薬草を盗んだりしたんですか?」


私は謝ってもらったし、凄く怯えて反省しているみたいだから、許してもいいと思うけど。

これは私だけじゃなくて、町の人とか、冒険者の人たちとか、異邦人さん達とか、たくさんの人に迷惑をかけているから、そんなに簡単に許せない問題だ。

きっともうお父さん達は理由を聞いて、どうするか町の人たちで相談してるんだと思うけど、私は私でちゃんと理由を聞いて、私なりの意見を持ちたかった。

まあ、なんでこんなことしたのか、本人から知りたいっていうのが一番の理由なんだけどね。


三人で顔を見合わせて、しばらくして覚悟を決めたみたいに頷いて、こっちを見た。







この三人は初心者で、ベテランの知り合いもいない。

だから、パーティーを組むのも常にこの三人で組んでいるのだけど、回復魔法を誰も持っていないことから、結果的に回復アイテムであるポーションを大量に使ってしまう。

依頼を受けたりして稼いではいるのだけど、必要な量のポーションを買うことで、そのお金もなくなってしまう。

そしてどんどん買えるポーションの数が減って、それと同時にこなせる依頼の数も減っていって。このままじゃまずい!と三人は焦った。

三人は調合スキルを持っていたので、買えないなら作ればいいと思ったのだけど、薬草はこの近くには生えてないし、お店にも売ってない。

どうしようかと考えて、『町のなかにあるし、盗んで後で返せばいい』という意見が出て。

それで、一回目は盗み、二回目も帰ってきたらそれを盗もうということになったらしい。



以上が、異邦人さん達から聞いたのをまとめたことになるんだけど……。

なんか、極端っていうか。

ため息がでても仕方ないと思いません?



「「「本当にすみませんでした!!」」」



そんな思いは、ズザザッという綺麗な土下座の前に吹き飛んだ。綺麗すぎてなんか怖いよ。

でも、こんなに必死に、素直に謝れるんだから、悪い人達じゃないんだよね。一時の気の迷いってやつだったのかも。

盗みは町から追放。今回のは規模が大きかったから、普通に考えたら、持ち物も剥奪されると思う。


……罰、軽くしてあげられないかな?



「お父さん、メイおばさん、」

「どうした?」

「なんだい?」

「あのね、この人達、困らせたいとかじゃなくて、欲しかっただけだと思うんだ。私も悪い部分あったと思うし……だから、罰軽くならないかな?」


薬草よりポーションの方が回復に優れてるからって、薬草を売ってなかった私も悪いと思う。そもそも、もうちょっとポーションの値段を下げれば、三人ももっと買えていたかもしれない。

うちの道具屋は、品数は町一番って思ってたけど。買ってくれる人の欲しい物がないのは、お店失格だ。


「ああ、もう話し合って、ナツリムが言うように、罰を軽くするという話も出てきたところなんだ。だから、町から追放とか、持ち物の剥奪とかはしないから、大丈夫だよ」

「ま、それでもペナルティで、薬草は当然没収。ついでに冒険者ギルドでしばらく無償の指名依頼。あとは、薬草が育つまでの一週間、毎日畑仕事を手伝うこと。これぐらいは当然やってもらうけどね」

「やっぱり、もう話し合ってたんだね。軽くなってよかったね!」


異邦人さん達はポカーンとしてた。多分、罰とかいろいろ聞こえてたからだろう。

まだ聞いてなかったんだと思いつつ、罰が軽くなったことに喜ぶ。

悪さをしようとしたわけじゃないし、昼食づくりとか、手伝ってくれた恩があるから、町から追放されずにすんで嬉しいと思った。








話し終わったので、さっそくお父さんが三人を連れて畑の方に歩いて行った。

三人は、なんだかほっとしたような表情になってた。

安心するのはまだ早いと思うよ?畑仕事って意外と大変だし……。

お父さん達が世話をしているところを見たことあるけど、あんなの私にはできない。あれは人が出せるいろいろな力の限界を超えないと無理だと思う。

畑に向かっていく三人に、心の中で合掌した。



今ここには、私とメイおばさんだけしかいない。

異邦人さん達は、これで役目は終わりとばかりに、お父さん達が畑に行くのにあわせてそれぞれどこかに行ってしまったからだ。

メイおばさんは、せっかくだからと道具屋の店頭に置いてある品物を眺めている。

道具屋の前でメイおばさんと二人きりなんて、昨日と似ているけれど、ちょっと違っていて面白い。

多分、問題が解決したから、心構えみたいなものが違うからだろう。




……そういえば、聞きたいことがあったんだった。

昨日の今日で犯人が見つかったのは何でか、まだ聞いてなかった。

メイおばさん知ってるかな?と思いつつ、聞いてみる。


「メイおばさん」

「ん?なんだい?」

「なんで、こんなに早く犯人が見つかったんですか?」

「ああ、そのことかい。それはこっちでも聞き込みとかしてたんだけどねえ。一番は、異邦人さん達が手伝ってくれたからだね」

「異邦人さん達が?」


今までにも協力してもらったことはあったし、たぶんそうだとは思っていたけど。

それで一日もかからずに犯人を特定してしまえるなんて、いったい何をしたんだろう?


「どうやって探したのか、知ってますか?」

「ああ、たしか掲示板とやらで呼びかけたとか言ってたねえ。ほぼ全ての異邦人がそれを見ているから、情報がすごい勢いで集まったらしいよ。だから、こんなに早く見つけられたんだねえ」


そっか。今度はもっと大勢の人が、犯人を見つけるために協力してくれたんだ。

その中には多分、私が知らない人もたくさんいたんだと思う。

そんな人まで協力してくれるなんて、異邦人さん達はどこまで優しい人なんだろうと嬉しくなった。





今度、町を歩いて、異邦人さん達に自分から会いにいくのもいいかもしれない。


もっと関わってみたい、いろんな異邦人さんと話してみたい。そう思った。

これにより、主人公のプレイヤーに対する好感度が上がり、関わる機会が増えイベント発生頻度が上昇……露骨過ぎたでしょうか?

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