昼休憩
そのあとも、そんな感じで順調に進んで行った。
あの後聞いたけど、フレイアさんは異邦人さん達の中でもトップクラスの実力者らしい。うん、納得だ。
それよりももっと驚いたことがあった。
アンバーさん強すぎです。背中に背負った大剣がぶぉんってなると、魔物がバタバタと倒れていくんだから。ううう、なんかちょっと、合掌。
お父さんもまけじと弓で頑張っている。引退したって言ってたけど、そんなのわからないくらい強かったです。
まあ、そんなオーバーキルな集団で、レイジ山脈を越えようと思うのですが。今回はレイジ洞穴を通っていくみたい。
レイジ洞穴は、レイジ山脈にぽっかりと開いた、王都へ一直線の洞穴だ。他に、洞穴を通らない道もある。
暗いし狭いし魔物は強いしで、今回も通らないつもりだったんだけど……この集団の実力が予想以上で、これならレイジ洞穴を通ってもいいだろう、ということらしい。
急に変更しちゃって大丈夫なのかな?
まあ、何はともあれ、レイジ洞穴の入り口に到着したわけですが。ここで一旦お昼にするようだ。
料理の才能を持つ異邦人さん達や、料理の心得ぐらいはあるという冒険者たちが、調理器具を取り出して、せっせと料理を作っていく。
私もレイ兄の手伝いで、簡単な料理なら作れるけど……今回は邪魔になりそうなので、他の人たちと一緒に周囲の警戒でもしていよう。
やがていい匂いが辺りに、ジュージューという効果音とともに広がって行った。どうやらバーベキューらしい。ううう、お腹すいたなあ。
でもまだ出来上がってないみたい。つまみ食いしそうになるのを押さえ込んで、キリッと表情を引き締める。私は食べ物に釣られるような子供ではないのだ!
って、思ってたんだけど。所詮は強がり。私は子供だ。
もちろん、バーベーキューができたら、一目散に突っ込んでいきましたよ。
お肉の刺さった串を受け取って、周りを見渡してみる。
まだもらってない人がたくさんいるみたいだ。
でも、周りの人に迷惑をかけないようにって、皆で列をつくってちゃんと待っている。真っ先に突撃した私なんかとは、大違いだ。……なんかちょっと、罪悪感。
特に、一番後ろの人。ぐううってお腹鳴ってそうな表情なのに、文句も言わないでちゃんと並んでる。
こんなに美味しいのに、早く食べられないなんて……。
気がついたら私は、食べ終えていた串を置き、両手に金網の上にあった串達を装備し、大行列の中に飛び込んでいっていた。
ようやく最後の人に串を渡し終えて、一息。
夢中だったからあんまり覚えてないけど、私が参加したことによって、少しでも早く、皆が食べられていたらいいな。
「ナツリム、お疲れ様」
そう言って、お父さんが串を一本、差し出してきた。
でも、私はもう自分のを食べたので、いらないことを伝える。
そしたらお父さんは、にっこりと笑って言った。
「これはナツリムが働いてくれた分だよ。ナツリムのおかげで、皆早く食べられたんだ。だから、食べていいんだよ」
はい、あーん、と、口元に近づけてきたので、ぱくっと食べた。
そうしたら、お父さんがゴロゴロ転がりだしたんだけど……。なんか怖いな、どうしたんだろう?
今回お父さんは、普段料理をしていないのにバーベキューの手伝いに参加していた。料理の上手さじゃなくて、肉を切るときの正確さとか手際の良さは、私よりも上だから。
悔しいし、こういうとき皆の役に立てるように、帰ったらレイ兄に料理を教えてもらおうと思った。