それでいいのかギルド名……
「ごめんなさい」
結局、フレイアさんの黒いもやもやなオーラ、略して黒もやには勝てるはずもなく(本当はただの錯覚だと思うけど)。素直に謝ることにした。
まあ、理由は他にもあるんだけどね。たとえば、フレイアさん、異邦人なのに町の人と仲が良かったりするから、協力とかされると怖いんだよね。実は、怒らせたくない人のかなり上位にいたりする。
まあ、それはおいといて。
私の言葉を聞いたフレイアさんの言葉はこれだった。
「ちゃんと謝ったのはいいことだと思う。けど、何に対してか、理解してるかな?」
何に対して。そんなの決まってる。昨日からずっと考えてたんだから。
「えっと、たくさんの人に心配させたこと……です」
もちろん、ポーション作りを休んでしまったこと、お父さんやロイ兄の畑での作業を中断させてしまったこと、町の人や異邦人さん達に、迷惑をかけてしまったこと。謝る対象ならいっぱいある。
でも、一番心に残っていること。昨日、皆私の心配をたくさんしてくれてた。それは凄く嬉しかったけど、同時に凄く申し訳なく思った。
だから、まずは皆に心配させてしまったことを謝りたかった。
きっと、これが答えだと思う。
でも、それは正解ではなかったみたい。フレイアさんはため息をついた。
私を見てる目は多分、呆れてるんだろう。でも笑ってるようにも見える。どういう表情なんだろう?
「それもそうだけど……まあ、しかたないか。ナツちゃんらしいし」
私らしい。
そう言った後、いつものお父さんみたいなオーラを出して、レイ兄みたいな微笑を浮かべていた。
そこでフレイアさんは納得したような感じで、話も終わりみたいだった。
でも、私は納得できない。だって正解、まだ教えてもらってない。
まさか、さっきの反応で正解じゃないよね?と思いつつ、聞いてみた。
「フレイアさん。さっきの、正解じゃないんですか?なら、私は何に対して謝るべきなんですか?」
フレイアさんは、ちょっと困ったような表情をしてた。言おうか言うまいか、みたいな。なんで悩んでるんだろう。間違ってることは間違ってるって言ってほしいんだけど……。
結局、困ったような表情にも見えるような微笑みを浮かべて、
「さっきの答えでいいと思うよ。さっきも言ったけど、それがナツちゃんらしいから。ただ、もうちょっと自分のことも考えていいってことだよ」
それはどういうこと、と聞こうとしたけど、
「ほら、ギルドに着いたよ。会議室に案内してくれるかな?」
ギルドに着いてしまったので、聞くタイミングを逃してしまった。
しかたないので、疑問はとりあえず置いておいて、案内役に徹することにした。
ギルドの中はかなり騒がしかった。ギルドボードの前で異邦人さん達が騒いでいるので、薬草のことが原因なのだろう。
ただ、聞こえてくるのは、『セイオン行くのでパーティー組みませんかー?!』とか『誰かポーション譲ってくれないか?!レギオン行きたいんだ!』といったようなことばかり。どうやら薬草関連のことは、何もしてくれないっぽい。
ちなみに、セイオンはレクサスの西にある【水の町セイオン】のことで、うちの道具屋と比べると高いけど、ポーションを沢山売ってる町だ。ポーション作りに必要な綺麗な水が沢山あるから、道具屋が多く集まった町ってことで有名だからね。
セイオンのポーション市場はピンからキリまで様々だけど、薬草は欲しがる人が多いので高値だ。また、道の形が特徴的で、レクサスからセイオンへの一方通行しか出来ないので、セイオンからレクサスへは王都を経由することになる。
そしてレギオンは、レクサスの東にある【迷宮都市レギオン】のことだ。その名の通り、迷宮によって栄えた都市だ。迷宮は天然のもので、魔力の濃い場所だから強い魔物が多い。でも、その魔物からとれる素材は丈夫なものが多く、まれに強力な武器なども落とすらしい。
レギオンのポーションは高品質で高値。街の近くで薬草を育てる場所がないので薬草そのものは売っておらず、ポーションは全部王都経由の輸入品だ。
きっと大体の人は、セイオンでポーションを蓄えたり、レギオンでお金を稼ぐっていう考えなんだろう。でも、レギオンの迷宮に出る魔物は本当に強いんだけど……大丈夫かな?
なんてことを考えていると、あっという間にギルドの二階にある会議室に着いていた。
あれ?私階段いつの間に上がってたんだろう。危ないなあ、今度から気をつけないと。
コンコン、ガチャッ
「失礼します」
「ナツリム!」
「おお、ナツリムか。熱はもう下がったのか?」
「はい、もう大丈夫です。その説は心配や迷惑をおかけしてしまい、すみませんでした」
部屋の中には、お父さん、冒険者ギルドのギルドマスターさん、町長さんの、計三人が席に座り話し合いをしていた。
この三人の中では、まずお父さんが声をあげた。
私は今回、協力してくれる異邦人さんを集める係りだから、こんな短時間で異邦人さんが集まってくれたのに驚いたのだろう。ギルド一階の混雑を見てきたから、私もわかる。フレイアさん達は数少ない例外なのだ。
そして次に声をかけてきた人は、この冒険者ギルドのギルドマスターさんで、この町最強の冒険者であるアンバーさん。年はお父さんと同じぐらいで、ギルドマスターとしての仕事をしつつ、今回王都に行く第一パーティーのリーダーでもある。
正直なところ、アンバーさんは一人で王都まで行けるらしいんだけど、商人の護衛をしながらだと流石に厳しいらしい。……そもそも一人で王都に行くなんて、並みの冒険者からしても異常なことなんだけど……恐ろしい人なのです。
「よいよい。町の者も、久方ぶりの病人に少しばかり混乱してしまっただけのようだしの。しかし、ナツリムよ。そなた一人が熱をだしただけで、これだけ町は混乱してしまうのだ。今回のこと、ちゃんと反省するのだぞ」
「はい」
そしてこのおじいさんが、ここレクサスの町長であるガンフさんだ。お父さんのお父さん、つまり私のお爺ちゃんとは旧知の仲だったらしく、その息子であるお父さんとも昔はよく会って話をしていたりしたのだとか。まあ、私の場合は町長さんの仕事が忙しいらしいので、あまり会ったことはないのだけど。
「して、後ろにいるのが、今回協力してくれる異邦人達か。……すまぬが、一つ聞きたいことがある」
町長さんは、私の後ろにいる異邦人さん達を、厳しい目で見ている。睨んだり、敵意をぶつけたりはしていないのだけれど……。こう、目をそらしたくなるような、でも見なければっていうような、不思議な気分になる。
「誰か、代表者はおらぬか。聞くのは、一人で十分じゃからの」
そんな声をきいて、あらかじめ決まっていたのか、一人の異邦人さんに視線が注がれる。フレイアさんだ。
自然な動作で、フレイアさんが一歩前に進み出た。
「お初にお目にかかります。ギルド『ナツリムちゃんを見守り隊』のギルドマスター、フレイアと申します」
……え、ちょっと。
ギルド『ナツリムちゃんを見守り隊』って、なんなんですか。
それ、もしかしなくても、私のことじゃないですよね?
ていうかフレイアさん、既にギルドがあるんですか。ギルドって、少なくとも家を買えるぐらいのお金がないとつくれないって聞いてたんですけど……。ギルドメンバー全員(制限があって、最大で20人らしい)で集めるにしても、一週間じゃ集まるわけない大金なんですけど。
ここにいる異邦人さんの人数は20人を超えているので、全員がフレイアさんのギルドメンバーでは無いはずだけど。先程の様子から、フレイアさんがこの集団の代表だって認識は一致しているようだ。
これには町長さん達も驚いたらしく、感嘆の声をあげている。
「ほう、こちらにやってきたのは一週間前だと聞いていたが……よもや一週間で、そのような大金を集めてしまうとは……」
「ふむ、お前がギルドマスターか。……なるほど、確かにここにいる者の中では、頭一つ抜けているな」
「いいギルド名だ。ナツリムを見守る権利をやろう。……ただし、やらんぞ」
町長さん、アンバーさん。
確かにそうだけど、ギルド名に対して何かつっこもうよ。絶対おかしいって。
そしてお父さん、聞いてる方が恥ずかしいっていうか、そもそも論点が違う気がするからやめて。
「まあ、そのへんは企業秘密ということで。それより町長さん、聞きたいこととはなんでしょうか?」
「おお、そのことだが……。なに、簡単なことじゃ。お前さん達はなぜ、我等に協力するのか。これだけじゃ」
この言葉に、フレイアさんはこう即答していた。
「ナツリムちゃんの笑顔を守るためです!」
……完全に、私の予想の斜め上の回答です。いや、私のためにって言うと理解出来る……かな……?
やっとレクサス、王都以外の町が登場(ただし名前のみ)
出したかったネタの一つ、ギルド『ナツリムちゃんを見守り隊』も出せたのでよかったです。
…さて、用語集に追加しにいかねば…




