認められた関係、幸せな未来
「リンデお姉様……!」
「イリス……」
イリスは戻って来たリンデを見て、ホッと胸を撫で下ろした。
リンデは申し訳なさそうに肩をすくめている。
そんなリンデを優しく見守るニールス。
(リンデお姉様は、ずっと私を守ってくれていたのよね)
イリスはゆっくりとリンデの元へ向かい、そっと抱きしめた。
「イリス……!?」
イリスから抱きしめられたリンデは、戸惑いの声を上げる。
「リンデお姉様、いつも私を守ってくれて、本当にありがとうございます。リンデお姉様の存在は、私にとってとても心強いです」
イリスは真っ直ぐ自分の気持ちを伝えることにしたのだ。
「でも、いつまでもリンデお姉様に守ってもらってばかりでは、何だか申し訳なく思います。もうドレンダレン王国は平和を取り戻しつつありますし、私、多少は社交界でも自分の身は自分で守れますよ。リンデお姉様にとってはまだ未熟に見えるかもしれませんが」
イリスはほんの少し眉を八の字にして口角を上げている。
「イリス……私は……貴女を守ることが生き甲斐だった。イリスが私の元から離れてしまうと思ったら……私、寂しくて……」
リンデはアメジストの目に涙を溜めていた。
それは初めて聞くリンデの本心だった。
「リンデお姉様、どんな状況になっても、私にはずっと変わらない気持ちがあります。それは、どんな時でもリンデお姉様が大好きだということです」
イリスはリンデを抱きしめる手を緩め、とびきりの笑みを浮かべる。
その笑みを見たリンデは、ついに涙を零す。
「イリス……私も、貴女のことが大好きよ。イリスはずっと、私の大切な妹だもの」
「リンデお姉様、ありがとうございます。私、リンデお姉様の妹に生まれて幸せですよ」
イリスはそっとリンデの涙を拭った。
ヤンとニールスはその様子を黙って見守っており、ホッと安心したような表情であった。
「ルーヴェン公爵閣下」
しばらくして落ち着いた頃、リンデは意を決した表情でヤンと向き合う。
「色々と失礼な言動、お詫びいたします。申し訳ございませんでした」
リンデ自身、ヤンに対する態度に問題があったことを自覚していた。
「リンデお姉様……!」
リンデのヤンに対する言葉と対応に、イリスは驚きの声をあげた。
「リンデ嬢……!」
ヤンもまさか謝罪されるとは思っていなかったので、エメラルドの目を大きく見開いている。
「俺に対する君の態度は、別に咎めるつもりはないよ。君はイリス嬢を心配していただけだからね」
ヤンは苦笑しながらリンデにそう答えた。
「寛大なお心、感謝いたします。……正直なところ、まだ私は貴方のことを完全に信じることは出来ません。ですが……イリスが選んだ相手ですから、イリスの選択を……信じてみたいと思います」
リンデはやや悔しそうな表情をヤンに向けている。
まるで大好きな妹を取られたかのような表情である。
ヤンは困ったように苦笑する。
「また確かに、俺の振る舞いにも問題があったからね。でも、俺のイリス嬢への気持ちは確かなものだし、イリス嬢の姉君であるリンデ嬢にも信じてもらえるようこれから頑張るよ」
ヤンは真っ直ぐリンデを見ていた。
その表情からは、いつもの軽薄さが全くない。
そんなヤンを見て、イリスは思わず笑みが零れた。
(やっぱりヤン様は、真面目なお方だわ)
一方リンデは初めて見るヤンの軽薄ではない態度に、アメジストの目を丸くする。
「貴方は本当にルーヴェン公爵閣下ですか?」
思わずそんな質問をしてしまうので、イリス、ヤン、ニールスの三人は思わず声を上げて笑ってしまうのであった。
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その日の夜。
夕食を終えたイリスは、ルーヴェン公爵城のバルコニーから星空を眺めていた。
(綺麗だわ……)
月は出ていない夜だが、星々が輝いているので空は明るい。
星月夜である。
イリスのアメジストの目は、夜空に輝く星々を映していた。
「イリス嬢、体を冷やすよ」
背後からヤンが現れて、イリスの肩に自身が着ていた上着をそっとかける。
「ありがとうございます、ヤン様」
上着を通してヤンの体温が伝わり、イリスは柔らかな表情を浮かべた。
「イリス嬢と君の姉君を見ているとさ、少し羨ましくなる」
星空を見上げるヤン。そのエメラルドの目には、夜空の星々が映る。
「両親とティルザを殺されて以降、俺の世界は地獄だったよ。女王陛下が革命を起こして、平和を取り戻した後でもね」
ヤンは「だけど」とイリスの方を見る。
エメラルドの目は、真っ直ぐイリスを見つめていた。
「イリス嬢と出会ってから、俺の世界は天国に変わりつつある。君が俺の心に入ってくれたお陰で、俺はようやく前を向けるようになった。ありがとう、イリス嬢」
優しく、甘い笑みのヤンである。
イリスは表情を綻ばせる。
「私は、ヤン様にもう寂しい思いをさせませんから」
イリスはそっとヤンの頬にキスをした。
「イリス嬢……!」
ヤンは頬を赤く染める。
そしてイリスを強く抱きしめた。
小柄なイリスは、ヤンの大きな体にすっぽりと包まれる。
そしてヤンの顔がイリスに近付いたと思いきや、イリスの唇にヤンの唇が触れる。
そしてイリスはそのまま捕食されるかのようなキスをヤンから何度もされる。
いきなりのことに、驚いてしまうがヤンの深く甘い口付けに力が抜けるイリス。
そんなイリスをヤンは離さないと言うかのように強く抱きしめている。
「ヤン様……!」
ようやくヤンの唇が離れ、イリスは乱れた呼吸を整えていた。
「ごめん、イリス嬢。可愛過ぎてつい。俺は君を大切にしたい、守りたいって思っているのに、あんな風にキスされたらさ、こうなっちゃうよ」
ヤンのエメラルドの目は、どこまでも甘くとろけるようだった。
「もう、ヤン様ったら」
イリスは赤くなりながら軽くヤンの胸を叩く。
「イリス嬢、君が俺の妻になってくれることを、とても楽しみにしているよ」
甘く優しく真っ直ぐで、真剣な表情のヤン。
そんなヤンに、イリスはふわりと柔らかな笑みを浮かべる。
「はい。私も、ヤン様の元へ嫁ぐことを、楽しみにしております」
アメジストの目は、ヤンを信じて真っ直ぐだった。
軽薄公爵と噂されているヤン。しかしイリスはヤンが噂通りの人物ではなく、本当は優しくて誠実に気付き彼に惹かれた。
そして今、結ばれた二人は幸せそうに笑っている。
夜空の星々は、イリスとヤンの幸せをいつまでも見守るかのようだった。
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