無限図書館・第4話 森林学者と少女館長
珍しい葉を見つけた森林学者は、正体を探そうと図鑑を求めて無限図書館に迷い込む。だがそこで出会ったのは、あどけない少女の姿をした館長だった。幼い頃の自分と再会した学者は、自然の中で遊んだ日々の記憶を取り戻していく――。
森林学者は、深い森で針葉樹と広葉樹の調査をしていた。ふと足元に、見たことのない珍しい葉っぱを見つける。
「新種かもしれない…」
胸の高鳴りを抑えきれず、彼はその正体を突き止めようと図鑑を求めて歩き出す――気づけば、彼は無限図書館に迷い込んでいた。
館内で分厚い植物図鑑を開く彼の前に現れたのは、あどけない少女の姿をした館長だった。
「ねぇ、難しい本ばかり見てないで、少し遊ぼうよ」
次の瞬間、学者の隣には幼い頃の自分の姿が現れ、少女館長に手を引かれて駆け出す。
小川のせせらぎ。小魚をすくったり、虫を追いかけたり。木漏れ日の下で葉っぱを拾い集め、太陽に透かしてはしゃぐ。
大人の学者は本の前で佇んでいるが、心はすっかり幼い自分に重なり、久しく忘れていた自然への純粋な憧れを思い出していた。
やがて子どもの自分は、微笑んで少女館長に告げる。
「もう満足したから、帰るね」
その姿は光の粒となって消えた。
学者は珍しい葉の正体を見つけることはできなかった。
けれど、胸の奥には幼い日の感動があふれていた。
静かに図鑑を閉じると、彼は深い森へと帰っていった。