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赤龍亭と天井桟敷の人々  作者: now here man


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6/19

中年狩人、エルフの店主に占ってもらう。

「マスター、なんか仕事ないかなぁ。」

落ち着いた表情の短い暗い茶色の短髪。無精髭が生えた精悍な顔立ちの中年男の健康的な肌が、店内のランプの柔らかな陰影で照らされる。中肉中背で引き締まった体と滑らかな身のこなしは、身体を常に動かす活発な生活を想起させる。

「ジョニー、狩りの方はどうなんだ?」

「この前のドラゴンの時に商売道具が全部無くなっちまったよ。」

先日のアルバ山での一件で、クロスボウから荷車に積んでいた荷物まで丸々置いてきてしまった。数日後に探しに行った時には、野生動物たちにボロボロに破壊されるか持ち去られるか、見るも無惨な状態でジョニーはからかんになってしまったのだった。

「今すぐ困るほどじゃないが、俺のクロスボウは特別製だから金貨で50枚はするんだ。アイツがなけりゃ狩りはできないさ。」

「ギルドで何か仕事を探せばいいじゃないか。」

酒場の店主は言う。

「ギルドとは名ばかりの職安か?今は魔物も出ないから、大したミッションもなかったはずだ。どっかに上手い話でも転がってないもんかね。」

「世の中そんなに甘いもんじゃないからな。何か良い話があったら教えるよ。」


酒場の入り口のドアが、軋みながら開く。

ジョニーは何気なく振り向いた。


一人の少女が入ってくる。

店内のランプの灯りに照らされた、艶やかな絹糸のような金色の髪。透き通るような白い肌に、憂いを帯びたサファイアの輝きの瞳。キレイに通った鼻筋に、微かな笑みを浮かべた薔薇色の唇。ゴシック調のドレスに包まれた小柄だが、しなやかな肢体が優雅に歩を進める様は、白鳥の優雅な舞のようだ。

ジョニーは思わず見惚れる。

「なんじゃ。こいつは阿呆か?口をぽかんと開けて。」

少女が口を開く。

「おいおい、あんまりな言い方だな。」

ジョニーは、あまりのギャップに現実に戻される。

「マスター、いつからここは子供が来る店になったんだ?」

マスターは少女にカウンターに座るように促しながら答える。

「コイツは、こう見えても100歳は越えてるらしいぜ。滅多にお目にかかれないエルフだ。」

ジョニーは軽く咳払いをして話しかける。

「えーと、レディ。お名前をお伺いしても?」

「名前を尋ねるなら、先に名乗ったらどうじゃ。」

「これは失礼。俺はジョニー・ウォーカーだ。」

「ふむ。わしはカティ。カティ・サークじゃ。」

「サークさん?珍しい名前だな。」

「呼びにくければ、カティで良い。好きなように呼んでくれ。」

「カティさん、よろしければ一杯お付き合い頂けますか?」

「ふむ。」


しばらく他愛のない話を続ける。最近の天気の話から話題の大道芸人の話。酒ではじめの緊張がほぐれてきてからは、お互いの生業の話へ。

酒と美味い料理があれば、誰とでも仲良くなれる。独り身のジョニーがこの酒場に来る理由の一つだ。


「わしは趣味で占いをするんだが、試しにジョニーのことを占っても良いか?」

「おお、いいよ。」

気軽に答え、ジョニーは占いに必要な事を答える。カティは懐からカードを取り出し、独特な手つきでテーブルに広げていく。

「お主は最近大変な目にあっとるようじゃな。」

ジョニーは狩りでドラゴンに出交わした話をした。

「災難じゃったな。」

「ああ、おかげで大事な商売道具も無くしちまったよ。」

「お主の天職は狩人か。」

「親父が狩人で、子供の頃から狩りの事を教わってきたんだ。」

「そうか。ところでちょうど今、お主の人生の転機のようじゃな。色々な人との出会いがあり、その中にお主の人生に影響を与える者がいるようじゃ。」

「そうか。良い方に変われば良いけどな。」

そのまま他愛のない話しを続ける。


気がつけば、周りの客は誰もいなくなっている。

「そろそろ、店を閉めたいんだが。」

マスターが遠慮がちに言う。

「おう、もうそんな時間か?」

カティは顔色ひとつ変えずに、三本目の葡萄酒のボトルをカウンターに転がす。

ジョニーは、彼女のペースに合わせかなりのハイペースで飲んだ為、少し前からカウンターのテーブルと親交を深めている。

「じゃあわしは帰るよ。つけといてくれ。」

「ああ。ジョニーの奴は置いといてくれ。店の片付けが終わってまだ寝てたら叩き起こしてやる。」

「うむ。よろしくな。」

カティは、軋む店の扉を開け、夜の闇の中へ歩き始める。

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