命の終わりと。
快晴、文句なし。
寝覚めも良かった。
道具の準備も抜かりなし。
何かが引っ掛かる。
ヨシュアの昨日の言葉。その時の目。
街はいつものように活気がある。人々のざわめき、春めいた空気。見慣れた景色も少しずつ新陳代謝が行われているのを感じさせるのは、昔馴染みのあの古書店が小洒落たカフェに変わったこと。
ヨシュアとの待ち合わせ場所へ向かいながら、空を見上げる。
胡桃の木の下には、すでにヨシュアが待っていた。
俺の息子も生きていれば…。
軽く首を振りそんな思いを振り払う。
「おはよう。待たせたな。」
「おはよう、ジョニーさん。僕も今来たばかりだよ。」
二人肩を並べて歩き始める。
以前、河川敷にめぼしいウサギの巣穴を見つけていた。
そこまでは歩いて小一時間ほどである。
「昨日、ヨシュアが言ったことだけど。」
ヨシュアは軽く頷く。
「命の終わり、なんて言葉が出てくるとは思わなかったよ。」
「…最近、夢でうなされるんだ。」
無言のまま歩き続ける。
ウサギは夜行性。この時間は大抵、岩陰か草むらで休んでいる。
ウサギの足跡を頼りに、居場所を突き止める。
狩りは、一瞬で終わった。俺のボウガンが空気を切る音、倒れたウサギ。それを見つめるヨシュア。
ウサギを苦しめないように、とどめを刺す。
ヨシュアは少し離れて、一部始終を無言で見ていた。
ヨシュアの目には何も表情が浮かばない。事実をただ受け止める、それだけだ。
「夢の中で、僕はたくさんの羊を殺してしまうんだ。他に選べる方法がなかったんだ。」
俺は頷く。
「その時の僕は、ただ見つめているだけなんだ。心を動かすこともなく。だから実際に狩りで獲物の命を奪うことで、何かを感じるかを知りたかったんだ。」
「そうか…。」
「実際に見てみたけど、何も感じなかった。僕の心には何かが欠けているのかもしれない。」
「ヨシュアがどう感じているのか、俺にはわからない。俺は生きるために命を奪い、感謝しながらその命を頂く。ただそれだけだ。」
言いながら、仕留めたばかりのウサギを捌く
ただ、焚き火で炙っただけのウサギに塩を振って食べる。ヨシュアも俺の隣に座り、黙ってウサギを食べる。
「俺達にできることは、限られている。だから出来ることをするだけだ。」
息子が生きていれば、同じように狩りに連れてきていたのだろうか?同じように話していたのだろうか?
ヨシュアは頷き、空を見上げる。
無言の時間が流れる。
ただ、止まることのない川のせせらぎだけが聞こえる。




