お見舞い
わたしが入院していると、数日後にとんでもない人がお見舞いに来たの。
わたしは、とってもびっくりしたわ。
夢なんじゃないの?ってね。
誰が来たかって?
それはもう一人のわたしだったの。
どういうことかって?
わたしもはじめは困惑してて、ただただ目の前の自分にびっくりするばかりだったわ。
そして、目の前のわたしも驚いていたの。
「え…もしかしてわたしのこともおぼえていない?ってか、わたし一番乗り?」
とか言っててさ…?
一番乗り…?
どういうことだろう?
詳しく聞きたかったんだけど、その人は
「わたし、真実乃だよ?」
と心配そうに顔を覗き込んできたわ。
そして、こっちも記憶抜けてるなら祥太に連絡しなきゃダメねって言ったの。
え?
いま、祥太って言わなかった?
それって…わたしの婚約者の名前よね?
なんで…呼び捨て?
それに…なぜそんなにわたしそっくりなのよ⁉︎ってことよ。
それを聞こうと思ったら、真実乃って人の電話がなってね…
「とりあえず元気でよかった。それじゃあ、また来るわ」
と、あっという間に帰ってしまったの。
…だれよ?
あの、わたしのコピーみたいな人…
しばらく考えたけど…やっぱり知らない人…なのよね。
あの医者の婚約者と知り合いみたいだし、わたしのそっくりさんの正体を知りたくて、早く祥太って人がお見舞いに来ないかなって待っていたのに、こういう時に仕事が忙しくて、来ないのよね…。
そうこうしてると、またあのわたしそっくりな人がやってきたの。
「あ、さっきの人…」
と、わたしが言うと
「え?さっき誰来たのー?」
と、先程とはだいぶ印象が違う感じで言われたのよね。
てか、なんで…着替えてるのかしら?
髪型も違うし…
なんなら、髪色まで…
「もしかして、真実乃ねぇ?」
その女の人は、さっきの人とは少し話し方が違って、ワントーン明るい気がした。
「あー、そう。…あなた真実乃さんよね?」
って恐る恐る聞くと、その人はクスッと笑って、
「ほんとだ。真実乃が言ったとおりだわー」
って言いながらわたしの顔をマジマジと見入ったわ。
…
「な、なんなの?」
わたしの質問に、
「え、ほんとにうちのことわかんない?」
って、こちらを凝視してくるわたしのそっくりさん。
「わたし、美耶だよ?」
って言ったの。
「えっ⁉︎真実乃さんよね?」
美耶さんと名乗る人は、クスッと笑って
「ほんとに記憶ないんだ?」
と言いながら、自分の持ってきたバッグからなにやらゴソゴソ漁りだしたの。
「ほらこれ、思い出した?」
⁉︎
わたしは、キョトンとしたわ。
だって…
いきなりシュークリームをバッグから出してきたのよ?
無造作に押し込まれたシュークリーム…
思い出すって、なによ…?
「わからない…」
キョトン顔のわたしに美耶さんという人は、
「よく五人でシュークリーム食べたじゃないの」
って言ってきたの。
「ご…五人⁉︎」
五人ってだれ?と、思い出そうとしていたら、またドアがひらいたの。
そして…
また来たの。
わたしのそっくりさんがね。
もう驚かないわ。
だって、これは夢よ。
そうよ。夢に決まってる‼︎って頬をつねったの。
「いたっ」
「なにしてるのよ?桜子」
⁉︎
しゃべった。
そしてわたしの名前も知ってる…。
その人は、芽依咲さんと名乗ったの。
そして、一枚の写真を見せてくれたわ。
⁉︎
その写真をみて、わたしはびっくりよ。
だって…同じ顔の人が五人揃ってベンチに座り、アイスを食べていたんですもの。
これって…
ガラッ
「桜ねぇ〜、記憶装置ってほんとなの⁉︎」
と、いきなり現れたもう一人のわたし。
「記憶装置じゃなくて、記憶喪失ね」
と、呆れ顔の美耶さんが言うと三人一斉にクスッと笑った。
あー、なんかこの感じ…懐かしいような…。
「ところで、あのこもおぼえてないの?」
あのこ…?
わたしがキョトンとしていると、なぜか三人は、慌て出した。
「ちょっ…萌」
「あっ…ごめん」
なんだかコソコソしている三人…。
てか、三人目はもえさんって言うんだ。
「え、あのこって…?」
わたしの質問を慌てて誤魔化そうとする萌さん。
「あー、えっとー…それより真実乃ねぇに会いたかったなー」
と、無理矢理の誤魔化し。
「「「ほんと〜」」」
と、声をそろえる二人。
「あのー…もしかしてわたし達って…」
「5つ子だよ?なんでうちらも忘れちゃうかなー」
ってかなしそうな顔の美耶さん。
「ごめん…でもなるべく思い出すよ。」
「でもさ、思い出さなくていいことまで思い出すんなら、そのまま思い出さないほうがよくない?」
って萌さんが言ったの。
思い出さない方がいい?
それは…どういうこと…?
続く。