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いきなりの結婚発言

 このたびわたくし桜子さくらこは、結婚いたします。

 

 

 …

 

 

 知らない人と、一か月後に。

 

 

 そんなことをいきなり婚約者から言われたんです。

 

 

 それも、白衣を着たお医者さんに病室で。

 

 そのお医者さんは、わたしが目を覚ますと涙ながらに喜んだ。

 

 隣にいた母も涙を拭っていたの。

 

 そして…お医者はさんは、

 

「骨折もしていないし、明日退院できるよ。でも、体調よくないなら結婚式延期しようか?」

 って言ってきたの。

 

「え?結婚式?」

 

「うん、そうだよ。ボクたちの結婚式まさか、忘れたなんて言わせないよ?」

 と笑った。

 

 わたしは、とっさに

「忘れるわけないよー」

 と返してしまった。

 

 母の表情もにっこりだった。

 

 これは…なにかのドッキリでしょうか?

 

 それとも…転生した?

 

 そもそも、わたしがなぜ病院のベッドに寝かせられているのでしょう。

 

 

 わたしは…たしか仕事帰りに…

 

 

 …

 

 

「いったぁ…」

 

 あの時のことを思い出そうとすると、頭がとても重くなってズキズキした…。なに?わたしどうしてここに…

 

「大丈夫?桜子。」

 

 

 お医者さんからの名前を呼び捨てって…

 

 お医者さんがわたしを…患者を呼び捨てって…、やっぱりこれはガチの婚約者?

 

 

 ?

 

 もう、違和感でしかありません‼︎

 

 そもそもわたし、こんな男性知らないんです‼︎

 

 

 それが、一か月後に結婚?

 

 はぁ?ふざけるんじゃないわよ。

 

 

 絶対あやしい。

 

 

 だって、わたし自分の名前だって言えるし、病室にいるお母さんの顔だっておぼえてるのに…。

 

 お母さん…疎遠だったけどね。

 

 でも、疎遠でもおぼえているんだから、婚約者なんてなおさら忘れるわけないような…

 

 

 そもそも、自分の生年月日だっておぼえている。

 

 なのに…

 

 なのに、このお医者さんだけ思い出さないってあります?

 

 おかしいですよね?

 

 

 携帯で、履歴みたらいいじゃないって閃いたわたし。

 

 

 しかし…携帯は、事故でバキバキになってしまったとか。

 

 

 どうしよう…

 

 

 

 あと一カ月後に、わたし…わたしこの人と結婚するの⁉︎

 

 

 わからない…やっぱりなんにも思い出せない…。

 

 

 わたしって…彼氏いたんだっけ?

 

 …いたたた。

 

 

 なぜ…なぜだろう。

 

 

 思い出そうとすると頭が痛くて…

 

 

 …

 

 困ったな…

 

 

 …

 とりあえず、白衣のネームを確認すると、村野むらの祥太(しょうた)とあった。

 

 

 

「しょうちゃん…」

 

 わたしは、いちかばちかで名前を呼んでみた。

 

 

 すると村野さんは、血相を変えて

「え?もしかして…やっぱり記憶喪失⁈なんか表情とか微妙にいつもと違うって思ってたんだ。頭を打ってたのかも知れないね。困ったな…とりあえず検査しようか」

 と、驚き困っていた。

 

 バレないようにしていたけど、一撃でバレました。

 

 そもそも…バレたのかな?

 

 ほんとに記憶喪失なのかな?

 

 

 …

 

 

 ?

 

 

 それからわたしは、入院が伸びた。

 

 

 明日退院だったけど…検査で入院延長になりました。

 

 

 それにしても、やっぱりってことは記憶喪失を怪しんでいたってことよね?

 

 

 さすがお医者さんね。

 

 それにしてもこの医者…休み時間になるごとに、わたしの部屋にやってきては大丈夫?なにか欲しいものある?とか、痛いところない?なんて細かに聞いてくるの。

 

 それに、お見舞いは毎日欠かさずくるから安心してねって。

 

 優しい…

 

 

 医者ってだけでハイスペックなのに…イケメンだし…さらに優しい?

 

 そんなの絶対に怪しすぎ!

 

 

 今のうちだけよね。

 

 きっと、そのうち化けの皮が剥がれるのよ。

 

 

 今に暴いて見せるわ。

 

 

 てなわけで、少々わがままを言ってみたの。

 

 

 ヨーグルト食べたいとか、プリン食べたいとかね。

 

 

 そしたら、あの医者ったら休み時間になると、すぐさま買ってくるのよ。

 

 

 だから、絶対に無理なことを言ってみたの。

 

 

 毎日お見舞いに来てくれるんだよね?ありがとう。じゃあ今度は、他県にしか売っていない有名シュークリームが食べたいなって言ってやったの。

 

 

 毎日お見舞いに来てたら、絶対買いに行けないわよね。

 

 

 するとあの医者ったら、少し眉をひそめたあとに、笑顔で…うん、わかったよってこたえたの。

 

 

 どうする気かしらね?なんて思っていたら、あの医者ったら、シュークリームをお見舞いに持ってきたじゃない。

 

 

「えっ…他県のシュークリーム…をどうやって…」

 

 驚くわたしに医者は…にっこり笑って

 

「お取り寄せだよ」

 

 って言いながら、箱からシュークリームを出してきたわ。

 

 

 お取り寄せか…。

 

 

 作戦失敗。

 

 

 それにしても、ほんとにこの人のこと思い出せないのよね。

 

 

 仕事のこととかも記憶とんでいないのに…

 

 

 なぜこの人だけ…

 

 

 でも…

 

 この人…なんだか目が離せないのよね。

 

 

 時折みせる笑顔が、なんとも言えない…なんていうか…

 

 あの笑顔をみると…心がキュッてなるのよね。

 

 

 どうしてかしら?

 

 

 …

 

 入院して数日が過ぎると、なぜか医者の婚約者がわたしの病室でソワソワしていた。

 

 

 なんだろう?ってみていると、婚約者はドアをキッチリしめなおして、

 

「もうさ…限界。ハグという名の検査をします。」

 って言って、いきなりわたしを優しく抱きしめたの。

 

 わたしは、抱きしめられてびっくりすると同時に、彼から香る洗濯物のいい匂いで癒された。

 

 

 でもね、たぶん…わたし今顔が真っ赤だと思うわ。

 

 

 ここで顔を見られるわけにはいかない。

 

 

 お医者さんは、ハグをしながら

「どう?痛いところはありませんか?」

 って言いながら、わたしを優しく抱きしめた。

 

 

 ないですっていったら、彼がわたしから離れてしまうかもしれない…。

 

 

 だから、わたしは…

 

「わからない…、だから、だから…もう少しこうしていてください。」

 

 ってこたえたの。

 

 

 そしたら彼も、

「うん。ボクもそうしたいと思ってたんだ」

 

 っていい、また優しくギュ〜っとしてくれた。

 

 

 わたしは、やっぱりこの人が婚約者で間違いないと思ったの。

 

 すごく安心するし、心地が良かったから。

 

 

 

 

 でも…

 

 でも…とある訪問者たちによって彼に対する不信感が戻りつつあったのです。

 

 

 

 

 続く。

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