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魔王が可愛くて仕方ない勇者の話。  作者: 新村 蒼
俺が【魔王】と剣に出会う迄。
5/9

違うものを見て大人になる。

冒険者になってから10年がっ経った。

俺は19歳になった。

とはいえ19になったばかりなんだが。

俺が教会の簡単な飾り付け、折り紙の巻くやつやら、の後片付けなんかをしていると奥からパタパタとシスター長がやってきた。

「本当助かったよオーウェン、毎年年越しの時期に教会の手伝いしてくれてありがとうねえ」

俺より何倍も仕事をこなしながら俺にも挨拶とは本当にこの人はよく働くな。

「流石にシスター達と子供達しかいないこの教会の近くで働いておいて何もなしってわけにはいかないって」

俺は今、育った教会に来ていた。

今日は年越し兼みんなの誕生日、この大事な日に街にいる俺がこないわけがなかった。

教会は相も変わらず質素な作りで少しボロい床、並べられただけの長机、この教会の大きさには足りない暖炉、外の風のとおる台所、シスター達の寝床。

2階には子供達が寝るための大きな部屋があるはずだった。もう日付も変わったことだしほとんどの子は寝ているだろう。

俺が孤児院にいた時の同級生とでもいえばいいのだろうか。

その子達はもういない。この孤児院では13歳をもって卒業する習いになっている。

最初は近くで働いてる子もいて手助けしてくれたんだけど俺の同級生はみんな結構アグレッシブだったらしくて。

もちろんこの教会を卒業したばかりの14,5歳の子達は結構きていてくれて、今年もに賑やかに誕生日を迎えられそうだった。

そうそうあの事件の時の二人、エルとアルバートは一昨年までこの街にいたんだが、この街を後にしてしまった。

てっきりあの二人はあの事件があったために外の世界とかがあんまり得意じゃなくなってしまったのではないかと考えていた。俺は特に悩むとかはないけどシスター達は悩んでいた。

しかし俺らの心配はよそにあいつらは一昨年の年越し会の時にある発表をした。

俺とシスター長に話があると言って彼らは俺らを教会の端っこに呼んだ。

「シスター、オーウェン聞いて欲しいことがあるんだ。俺ら魔道学校に通うことにしたんだ。」

魔導学校この世界で唯一の学術機関。

魔導学校というと魔法だけを教える学校のようみ考えてしまうがここはそうではない。

一般教養から資格の勉強、そして武器の扱いまで教えてくれるという。

その学校をどの学科であれ卒業できれば未来は約束される。そんな夢のような学校だった。

「まじか!?」

「すごいけど…お金はどうするんだい?うちから支援は…」

「いやまさか教会から支援してもらうために言ったわけじゃねえよ!」

慌ててアルバートが横から入ってきた。

「そうそう俺たちここ四年間めっちゃ真面目に働いたわけよ」

「もうそれは本当奴隷のようにね。」

彼らはなんと入学試験を抜けるための勉強をしながら四六時中働いたらしい。

「それでなんとか入学金分と受験費用、後諸々に関しても十分に稼いだんだ」

「まあ足りない分はあっちで稼ぐし、そういう生徒も割と多いって聞くから大丈夫だよ」

「そう……大きくなったのねえ」

立派になった彼らを見て嬉しいのだろう。

シスター長が、すこし、ほんの少し涙ぐむ。いやこの街から出ていってしまうのが寂しいのかな。

この教会を回してるシスター長は俺たち三人を拾ってくれた人らしかった。

卒業するときにそう言われた。

そしてそこから十年近く面倒を見てきたんだ。それは思いも一入だろう。

しんみりする前に俺が横槍を入れる。申し訳ないが、しんみりはあんまり好きではないのだ。特に仲のいい子の四人でなんて俺まで泣いたら絶対こいつらからかってきやがる。

「で、どの学科?選考に行くんだ?」

二人にそれを聴いた瞬間二人はきょとんとした顔をする。

なんだろうと思っていると…。

「あれ、オーウェンにには言ってなかったんだっけ?」

「あーそうかもな」

「いや俺を差し置いて仲良くしてんじゃねえよ。」

そう茶化すと二人からは予想だにしない言葉が返ってきた。

「いやだって…あんまり、ねえ」

「ま、最後だしいいだろ。正式名称はわからんが、あの学校には戦闘の学科がある。俺らはそこに入ろうとしている。」

「?戦闘学科ってギルドとかの冒険者をサポートする人を育てるってことか?」

二人は孤児院にいる頃一切冒険者に興味は示さなかった。だからてっきりそうだと思ったんだが…。

「違うよ、戦うんだ」

「…え?、だってお前ら戦うとかあんま興味なさそうにしてたじゃねえか。そもそもあの事件の時も…。」

「いやその事件の時二人で話してたんだ。いつかなんとかして戦う術を身につけられるようにしようなって。」

てっきりこいつらもあの時、俺がひどく冒険者に憧れた時のような心を持っていたのかと思って…

「なんだよお前ら冒険者に憧れたんなら言えーー」

「いや冒険者には興味はあんまりないよ。」

「?じゃあ、自衛か?」

「いいや、原因はオーウェンですよ。ねえ二人とも?」

そこに口を挟んだのはシスター長だった。

どういうことかと俺だけが首を傾げる。しかし二人からは返答が返ってこない。

一体どういうことかわからず二人の方をじっと見つめると二人はお前いけよ、とかいやアルバードそれはずるいですよとかヒソヒソやってる一体なんだってんだ?

「二人とも恥ずかしがるところはまだ治っていないんですね。」

そう笑いながら説明してくれたのシスターだった。

「二人はあなたに憧れて、戦う術を身につけようとしているのですよ」

「?いや、それでもよくわかんないんだけど?」

いまいちピンとこない俺が疑問符を浮かべていると諦めたようにエドが話し始めた。

「あの日君は、なんであの冒険者に憧れたんですか?」

「なんでって言われても…単純にかっこよかったからかなあ?」

「僕らも同じ理由ですよ、君がカッコよく見えたんです。

あの日僕たちの目には君があんまり鮮烈に映った。そんな君に少しでも近づきたかったから。」

俺は冒険者に九歳でなって教会を出て一人で生活していた。

実はその後にあのジジイは性懲りも無く、この教会にきていたらしい。

この二人に冒険者がどんなものかを説明しにきたらしい。

でジジイの判断はというと…

「まあまあこっぴどいこと言われたぜ。お前らに冒険者は向いてないだとか。努力してもなれないとかな。」

「うん、本当に酷かった。」

でそこで癇癪をあげたのがエルだった。

いつもは大人しかった分、暴れたらアルバードもドン引きの様子だったらしい。

そこで色々ゲロったのだとか。

俺がカッコよくて強くなりたいとかな。

だからシスター長は知っていたわけで…。

そこで言われたのだとか冒険者が向いてないだけで強くなる分にはお前らでもできると。

冒険者に向いてるかどうかと強くなれるかどうかは違うと言われたらしい。

そこで勧められたのが魔導学校というわけだった。

「でもお金なんて…」

「稼げばよかろう。それともなんだお前らのその衝動は金が足らん、何が足らんと騒ぎ立てて止める程度のものなのか?言っちゃ悪いがあのバカはきっと何を言っても自分の衝動だけを優先するぞ?」

「…うう」

そうして彼らは11歳になった頃から働き出したらしい。

この頃は要領も分からず怒られてばっかりだったらしいが。

「13歳からは生活もあるから本腰入れて働き始めたんだ。四年でここまで集まるとは思わなかったけどね」

「こいつ弱音は吐くのに、割と粘り強いんだぜ?寝ずに一ヶ月間も働き続けるとは思わなかったな」

「えへへ」


そう言って彼らはこの街を出ていってしまったのだ。


「あいつらが出てって二年だもんなあ、元気にしてるといいけど」

「まあ大丈夫なんじゃない?あの子達悪運強そうだし」

「それ褒めてるのかよ」

シスターと二人で笑い合ってると…来客のベルがなった。

相手は焦っているのか少し雑に鳴らされ、とがノックされる。

今の時間は日付が変わってすぐ。

今日は俺ら働いてる教会卒業生達がくるから差し入れを腹一杯食べられる日だからだろう、もうこの時間はほとんどの子が寝ていた。残っているのは今日手伝いに来た子達でも歳の上の子達だった。

少しそのノックが怪しいものだったから俺はシスターに子供達と二階に、というとシスターはそそくさと子供達、他のシスター達二人を連れて二階にいった。

二階に行ったの確認した後俺はノックした相手に尋ねる。

「…誰だ?こんな時間に?」

「ブランディです。オーウェン。」

その慣れ親しんだ鬼受付嬢の声に俺はドアを開ける。

開けたドアから入ってきたブランディはこんなに寒いのに上着の一つも羽織っていないし、息も上がっていた。

俺の様子から大丈夫と判断して上からシスターが降りてきた。

「よければ中でお茶でも…」

「いえ…、それよりもオーウェン話があります。」

礼儀もへったくれもいつもの威厳もないブランディは息も絶え絶えに口を開いた。

「支部長が倒れました…!」

「…え?」

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