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夢との遭遇

竜門村から約3kmキロメートン進んだ森の中、少女は悩んでいた。


彼女がこの旅を始めた目的は主に2つ

1.失踪した妹を探す

2.教団ザルアの計画を止める

である。


妹を探すといっても、この広い世界で何の当てもなくただぶらぶらと歩いて見つかるものではないだろう。


それはザルアの件にも同じ事が言える。奴らに関する情報が何もない今は、こちらから下手に動くこともできない。


「まったく、何事においても計画を立てずに行動するのは私の悪い癖ね」

リアは自分を情けなく思い、大きな溜息をつく。


「まずは、情報を集めないとね。この森を抜けてしばらく歩けば、コロンの街があるはず。そこで情報収集だー!....それと、ご飯も食べないとね」


コロンの街とは、

 港町であり、いろいろな地域からパン、調味料、酒などその他多くの食材がその街へ集まる。竜門村の食糧も、そこから調達される物が多いのだとか。


「向こうに着いたら何食べようかなぁ」

鼻歌を歌いながら道を進んでいく。


その時、近くの茂みがカサカサと動いた。

「ひっ!!」

驚いたリアは素早くそこから距離をとった。

「おーい、そこの人間さん。ちょっと助けてくれないかなぁ、茂みから抜けられなくなっちゃってさ」

幼い子のような声である


ほっとしたリアは

「ごめんね、お姉ちゃんびっくりしちゃった。今助けてあげるからね」

と優しく言い、その子の足?を掴んで引っ張り上げた


茂みから姿を現したのは子供...ではなく


枕のような物を抱いて宙に浮いている宝石のような鱗をした謎の生き物であった。


しかしリアにはそれが何なのかすぐに分かった。


「本物の...竜だ」


その生き物はリアの事をじっと見つめた後、ぱっと笑顔になり。

「君!竜紋村の子だね!こんなところにも居たんだ!」


リアは目の前に浮かぶ小さな竜に、驚きのあまり何も言うことができなかった。


竜は変わらず笑顔で

「僕の名前はマリネル!君らが言う四大竜の中の一頭さ!」

リアはもう状況の整理ができず口を開けたままである。


「罰の竜」「鎖の竜」「夢の竜」「鎧の竜」の四体の竜から構成される四大竜は、かつて国どうしがお互いの魔力を巡って戦争を起こした際、天より戦場へ舞い降り、その圧倒的な力で両軍を撤退させ戦争を鎮めたとされる。それが真実かどうかを確かめる術はもうなく、今となっては伝説となっていた。


そんな竜が今、リアの目の前にいるのである。

リアは少しずつ落ち着きを取り戻し始め、ようやくマリネルに問いかけた。

「もし本当に四大竜の中の一頭なら、あなたは何の竜なの?」


マリネルは一度大きなあくびをしたあと

「僕は夢の竜だね、本当の名前は言い始めると最低3日かかるから割愛させていただくゼ☆」


リアはようやく落ち着き立ち上がると、マリネルの頭を軽く撫で、

「最初はびっくりしたけど、会えて良かったよマリネル!じゃ、私行かなきゃいけないから。またね!」


マリネルも手を振り

「気をつけてね〜.......じゃなあぁぁぁぁぁぁぁあい」

「え?まだ何か?」

「あるでしょ!僕に会ったら普通ショックで気絶しちゃうとかするとかサイン求めるとかあるでしょ?!」

「あ〜、うん」

「うんって何?!何がうんなの?!」



 〜10分後〜



「君はなんで旅に出たの?」

不思議そうにマリネルが問う。

「妹がいたんだ。名前はルインって言ってね、このミサンガもルインが私のために作ってくれたの。けど、ある日突然姿を消した。私は、どうしてもルインにもう一度会いたい。だから旅に出る事を決めた」

マリネルは納得した様子で

「へぇ〜君の妹だから、その子もさぞ美人なんだろうね!」

リアは呆れた様子で

「まったく、どこで覚えたのよ...そういえば、あなたの目的は何なの?」

と問うと、マリネルはきょとんとして

「え?だから戦争を止めに...」

「違うわよ、戦争はとっくに終わってるじゃない。なのにこの世界に残り続けるのは、何か理由があるんでしょ?」

マリネルは腹を抱えて笑いながら言った。

「君って冒険者より探偵が向いてると思うよ。

まあそうだね、僕の願いは人間になる事なんだ!人間になって、友達を沢山作るんだ!」

それを聞いたリアは

「残りの三頭の竜はどうしてるの?」

マリネルは急に笑顔を無くして言った。

「死んだんだ...あの戦争の時にね」

「え?でも伝説では四大竜は戦争を鎮めた後に天へと帰ったって...」

「それは嘘だね。あの時、僕らは確かに戦争を止めた。けどいくら四大竜でも命は無限じゃ無い。この世界に、無敵の存在なんてありはしないし、あってはいけないんだ」

「ごめん、私...嫌な事思い出させたね」

「気にしないで!この長い年月を経て新たに知れたこともあるんだよ!」

「それって?」


「四大竜は死んでも、その能力は竜紋をもつ者の誰かへと受け継がれる。だから君らの村の人達をこっそり調べて回ってたのさ!まあ、能力を受け継いだ人間は村にはいなかったみたいだけど...」

「私は?」


マリネルははっとした様子で

「そうか!まだ君が残ってる!待っててね!今調べるから!」

そうするとリアのマントを捲り上げて竜紋を観察し始めた。


リアは顔を赤くして

「ひゃっ?!何すんのよ!」

と怒鳴りつける。


マリネルは真剣な顔つきで、リアの声は全く聞こえていない様子である。

「じっとしててよ今調べてるんだからさぁ」

「じ...じっとできるわけないでしょ?!どこ触ってんのよ!」


観察を終え左頬に赤く手形が残ったマリネルは少しガッカリした様子で

「う〜ん、君の能力は炎だから、受け継いだ人間じゃないみたい...」

マリネルは3回宙を回り深く考えた後リアにある提案をした。

「ねえねえ!よかったら僕も君の旅について行っていい?この世界には昔からずっといるしルインちゃんの行方についても何かしら手助けできるかも!何より僕は強い!四大竜にかかりゃどんな敵でもイチコロさ!」


リアは確かにそうだと思い、マリネルの提案を快く受け入れた。


しばらくすると森の向こうに少しずつコロンの街が見えてきた。

「見て!コロンの街だよ!あっ、そういえばマリネルは人に見られて大丈夫なの?」

「この世界は獣人やらエルフやら巨人とかが普通に歩いてるんだよ?僕みたいなのが1匹いたって誰も不思議がらないって」

「え?獣人やらエルフやら巨人って...本当にいるの?」

「君...本当に村の外に出た事ないんだね。こっちがびっくりだよ」


その直後笑っていた2人は急に真剣な顔になり、歩みを続ける。

「ねえマリネル」

「ああ、右の茂みに2人、左の茂みに3人」

「気配の消し方が雑ね、山賊かしら」

「どちらにせよ僕らの邪魔には変わりないよ、ここで始末しよう」

「殺すのはなしよ?動けなくするだけ。四大竜の実力見せてくれる?」

「もちのろん♪」


しばらくすると山賊は一斉に茂みから飛び出して、リア達に襲いかかった。


マリネルは落ち着いた様子で

「ムーンミスト、おやすみの時間だよ♪」

するとマリネルを中心として紫色の霧が発生し、山賊らを包み込んだ。


「なんだぁ?!どうなってやがる!」

「何も見えねえ!」

「そこか!」


どうやら何も見えない者もいれば、錯覚を起こしている者もいるらしい。


リアはマリネルに対し

「あなたの魔法って、なんか...恐ろしいね」

「えーそう?なんならもっと凄いのあるよ!

ナイトメア!」


すると先ほどまで威勢が良かった山賊達は急に地面にうずくまり震え始めた。

「嫌だあ!来るなぁぁぁ!」

「許してくれ許してくれッッ」

「やめろ!助けてくれぇぇ!」


しばらくその様子を見ていたリアは次第に耐えきれなくなり

「ストーップ!」

するとマリネルから溢れ出ていた唯ならぬ魔力は消え、次第に周囲の不穏な雰囲気も消えていった。


リアはマリネルに対し

「あ...あの魔法は何なの?」

「あ〜あれ?あれは僕が作った魔法さ。対象の記憶からその人が最も恐れている物や過去を呼び起こして一斉に思い出させる魔法だよ♪僕はナイトメアって呼んでる」

「流石は四大竜だけど、ちょっとこの人達が可哀想になってきたからこの辺にしといてあげてくれない?」

「りょーかい!確かにちょっとやり過ぎたかも...ちょこーっとだけね」


ちょっとしたハプニングを解決した後、リアとマリネルは再びコロンの街へと進み始めた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] リアがマリネルに顔を見られ恥ずかしがる場面が自分の心にグッときました。それと、マリネルがお調子者みたいな雰囲気を出しているけどしっかり強いのがとても頼りになりそうですね。マリネルの魔法にか…
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